寒雷の氷
放浪人は部屋のドアを開けるとホテルの一室のような部屋で
綺麗に整理されていた。
「へーわたしの寮ほどじゃないけど綺麗なところね」
サーナはつぶやき辺りを見渡した。
「飲み物を冷やす魔道具もあるし情報の電波は入る
魔術道具や本、軽いトレーニング機材もあるのね」
放浪人よりもサーナの方が部屋に興奮している感じだ。
「というかお前はどこまでついてくるんだ」
「むーいいじゃない。受験所の中ってどうなってるか
気になってたんだからこんな時ぐらいした入れないし」
「友達少ないのか」
「年下の友達が少ないの!」
頬を膨らますサーナを横目に放浪人は先ほど
手にしていた本をベッドに放り投げた。
「当分はここでゆっくりできそうだな」
「落ちたら借金抱えるので注意してください」
「落ちなければいいだけだ」
サーナはベランダに腰掛け感心した様子で放浪人を
見ていた。
「何をみてる?」
「いや。あんたっていつも思うけど謎に自信満々なのよね
どうしてよ」
「お前も一回死んだらわかるさ」
「死んだらここにいないじゃない。馬鹿ね」
「フッ普通はそうだよな」
放浪人がニヤリと笑う
「なにさ、笑って、わけわかんない。ホントあんたってどこから
来たのよ」
「近くて遠い世界からかな」
「もしかして海の向こう側?」
「そういう解釈で構わん」
サーナの頭に?が三つ浮かぶのが分かる。
「ログこいつの保証住所どこになってる?」
「クライアバル王国のクライアバル宮殿です」
「エルフの国じゃない!ほんとわけわかない」
サーナは頭を押させ悩む。
「それよりこの後予定あるか?」
「えっなによ。かしこまっちゃって
まぁ後はこのまま帰るだけだけど」
「なら。ちょっと付き合ってくれないか?」
「つっつつ。付き合う」
サーナの顔がみるみる赤くなる。
「なんだ?ダメか」
「ええーとそのーまぁ…うんいいかな」
モジモジしてるサーナを尻目に放浪人は
玄関のドアを開けた。
「ならいくぞ」
親指で後ろに指さした。
---
「いやーうん知ってたよ。こいつこんな
奴だって」
サーナはガクリと肩を落とした。
「何をぶつぶつ言ってるんだ。準備できたのか」
「うるさいわね。脳筋馬鹿!」
サーナの怒鳴り声が室内に響く
演習場で二人は向かい合っていた。
「たく。一緒に出掛けるとか思ってたのに…
何がトップクラスの実力がみたいよ」
サーナはぶつぶつ言いながらも腕のバンドを
確認し指輪をつけた。
「それにしても本当に演習場では怪我しないのか」
「はい。大丈夫です。演習場では特殊な魔法で守られています
体の痛みレベルを設定できますし」
するとログがパラメータを表示した。そこには
HPと表示されていた。
「軽いゲームみたいなもんだな」
「入室時マスターとサーナさんに魔法がかけられましたのを確認しました」
「そうか。だが念のためこの剣を使うか」
放浪人は背に背負った剣を掴む
「ちょっとーまだうだうだやってるのこっちはもういいわよ」
「ああ。いつでも構わん」
放浪人は腕を上げて返事を返した。
「本当かしら」
サーナが手首をスナップさせピタッと手の動きを止めると
「スワード」と言葉と共に左手に徐々に氷が集まっていき
そして透明で透き通った氷の剣が出来上がった。
「くるか」放浪人は剣を鞘から抜き身構える。
「いくわよ」
サーナは剣を地面にこつんとつける
---グラウンドアイスバーグ---
その瞬間まるで地面から氷が生えてくるように
地面から隆起した氷がドンドン放浪人めがけて
一直線に襲い掛かってくる。
放浪人は左に飛びさっきいたところを移動した。
するとさっきほどまでいた場所の地面が隆起し
氷が集まってくると氷山のように高く盛り上がった。
「やるな。あれに当たってたら俺もああなってた」
放浪人が白い息を漏らす。
「残念まだ攻撃範囲よ」
サーナは地面につけたままの剣を鍵を開けるかのように
グイっとねじりこんだ。
すると剣の先の氷に亀裂が入る。亀裂は徐々に広がっていき
先ほど出来た氷山に近づいてくる。それはまるで雷のような形で
「寒雷の魔女…そういうことか」
放浪人は氷山に剣を構えた。
やがて亀裂は氷山の頂上に達した。
「続けていくわよ」
---リオートグローム---
氷山は割れると同時に激烈な勢いで辺りに弾け飛んだ
すぐ近くにいた氷の凶器がランダムに放浪人に襲い掛かる。
「この!」
放浪人が剣を振り飛び交う氷を必死に止めようとするも
流石に全て防げるわけもなく何発か足や手、頬をかすめて
ぶつかっていく。
「当たった感覚はあるが、やはり痛みはないな」
服が微かに破れるも気にすることではない
当たった氷は体にあたるとその場消えていく。
「マスター。今のでこの空間内のHPは減りました」
「これは…ジュゼスと決闘した時と同じか」
「そうですね。近いものだと考えてよろしいです」
不意に放浪人が少し昔の事を思い出しログに目を離した隙に
数えきれない氷の破片が徐々に大粒となって襲いかかってくる。
「ちっ。このぉぉぉ!」
放浪人は体をねじり一気に体を回して辛うじて氷を弾く
攻撃は少しずつ勢い衰えたのも束の間。
放浪人が襲い掛かる氷に集中している隙をつきサーナに
背後を取られてしまった。
右手を前に出し氷の障壁を作り飛び交う氷を弾いていた。
「後ろ。いただき」
すかさずサーナが左手を障壁に置くと触ったところが突起し
放浪人の背中をめがけ槍のように鋭く近づいてくる。
放浪人は体を屈めひらりと回避し槍に剣を当て後ろにとんだ。
「サーナお前結構強いな」
「やるからには負けたくないもの」
サーナは放浪人がとんだ方向にすかさず走り再び作った
氷の剣を振りかざす。
キンっと剣身がぶつかり音が冷え切った室内に響き渡る。
ギリギリと力と力がぶつかるも
放浪人は地を蹴り後ろに下がり距離をとった。
そして再び二人は向かいあった。
「やるな。これがトップクラスの実力か」
「……」放浪人が言葉をかけるもサーナは
言葉を返さなかった。
それどころか不機嫌そうに睨みつける。
「サーナさん、黙っていますね」
「戦いに集中してるんだろ」
氷で冷え切った地面を足で確認するように
放浪人は何度か足で地面を叩いた。
「あんたさ……もしかして」
サーナが何か言葉をつぶやいた。
「なんだ。何かいったか」
放浪人が言葉を返すもサーナは首を横に振り
剣を構え再び地面を強く蹴り走った。
「突っ込んできただと」
放浪人はサーナの斬撃を剣で受け止め防御した。
「やっぱりあんたどういうつもり」
ギリギリと力の張り合いで剣身が震える。
「…なんのことだ」
「しらばっくれないで」
サーナは剣から手を放すと手を伸ばし
氷の槍を至近距離で放浪人に向けて突き出した。
首を曲げギリギリの所でかわすと再びサーナと距離をとる
「逃がさない!」クイっとサーナが指を上げると
放浪人の握っている剣が剣身から急速に氷漬けになっていく
「あいつ触れた物なら何でも凍らせられるのか」
放浪人は剣から手を放す。剣が地面に落ちるとそこから
氷が集まり壁のようにそそり立つ
その壁にサーナが手を置くと大きな魔法陣が
描かれた。
すると氷の壁から氷の塊がいくつも突起し始めた。
放浪人に狙いを定めるように鋭い先が光る。
「これでわたしの勝ちね。食らいなさい」
----リオートストリェーラー!----
氷の塊が今度は集中して放浪人を襲う
「不味い!」その場から移動するため走るも
氷の塊はすかさず放浪人を追う。
地面に氷が当たると氷が地面に広がり
そして放浪人を逃がさないかのようにガッシリと氷が
足首にまとわりつく
「グッ」放浪人はその場から動けなくなった。
そして動けない彼を氷の塊が襲いかかる
放浪人が腕を顔の前に構え防御態勢をとった。
「はぁもういい終わり」サーナは指を弾くと
氷が嘘のように姿を消した。
放浪人が腕を下げサーナを見ると
ズンズンと苛立っている様子で歩いてくる。
そして目の前に立つ
「あんた。わたしを舐めてんの!」
そういい指を差し睨みつけた。




