入試待機
施設内の受付を横切り歩いた奥には
3つ部屋がそれぞれ左手側には理科の事件室のような
様々な実験道具がおかれている部屋。
右手側には魔導書やこの世界の歴史が記された図書室、
正面には広い演習場があった。
「やっぱり受ける人数が少ないから図書室はガラガラなのね」
本棚と机が綺麗に並んでいる図書室だが誰もいない状態に
サーナは少し羨ましいそうに部屋を覗き込む。
「 わたしの時、本入試テスト期間なんてすごかったのよ
多くの試験受験生がごった返してどこの部屋も満室状態だったんだから 」
図書室の中に入るとキョロキョロと眺めるサーナ。
「 ということはお前もここに申し込んで試験受けたんだな 」
「 といってものわたしは年齢による繰り上げ入学だから実際ここに来たのは
一回だけなのよね。 受付終わらせて数日後にテスト受けて はいさよなら 」
「 繰り上げ? 」
「 中等部からの生徒は書類提出して簡単な試験だけなのよ 」
「 羨ましいな 」
「 中等部も入るの厳しいけどね。 なんたって海の向こう側で遠いいし 」
放浪人は室内の壁に貼られていた学園の地図らしき物に気づいた
そこにはセインエイツらしき街と海その先には同じくらい大きな島があった。
「 あれか? 」
放浪人が腕を上げログに訪ねる。
「 そうです。 あれがセインエイツが所有している島です。
小、 中等部の学園があり他にも魔道具の精製所や歴史的文化財が多く存在します 」
「 さっすがログ、そうなのよ。セインエイツほどじゃないけど
いいところよ。 見晴らしのいい丘もあるし 」
数年間通った生徒にとっては故郷といってもいいだろう
サーナは懐かしそうに笑顔で語る。
「 飛び級ができるんだろ。 お前なら飛び級狙うと思ったんだが 」
「 興味はあったけど…そのころわたし、成績かなり悪かったから 」
サーナが肩を落とし少し暗い顔をすると放浪人は頭をかいた。
「 お前も苦労したんだな 」
「 そりゃー学園トップクラスになるまで血が滲む努力を…
ってそうじゃないわよ! ただ勉強に手がつかなかっただけ!
だからその可哀そうな目でわたしを見ないで 」
涙目になるサーナに放浪人はクスリと笑い部屋に入っていく
「 それでテストはどのように行われるんだ 」
「 テストは魔法、 魔術の適性テスト 武術や体力テスト
他にも筆記もあります 」
「 あるのか筆記… 」
筆記と聞いてげんなりした放浪人が試しとばかりに適当に本を掴み広げ
「 なるほどな 」頭を縦に振りつぶやいた。
「 へぇーあんたわかるの。 以外ね 」
その様子に少し感心したサーナであったが…
「 まったくわからん 」
放浪人は助けを求めるような顔でサーナを見た。
「 まぁだろうと思ったけど 」
サーナは深くため息をつくと本を取り上げペラペラページをめくった。
「 ええと…これが理解できないとなると筆記は絶望的ね
書いてある内容試験の魔術の基礎よ。 というかそもそもどこがわからないのよ。
言葉を理解できてれば問題ないはずよ」
「 一つや二つではない全部だ。 というか随分ひどい事をいうな 」
「 それだけ今の学力が低いってこと 」
最後に勉強をしたのが遥か昔の放浪人他にもこの世界に来てそんなに日がない
からしかたないといえよう。
「 安心してくださいマスターこれから睡眠学習のように音声流しますから 」
「 お願いね。 ログ 」
ログとサーナのやり取りに放浪人は頭に手を当てた。
「 勉強か… 」 今までにない絶望が放浪人を襲う!
「 安心しなさいよ。 筆記はそこまで難しい問題じゃないわ。
問題は毎回恒例の実力テストの方 」
「 実力テスト? 」
「 そう。 正直ここさえ突破すれば合格率はかなり上がるの 」
そう言うとサーナは自分のバンドを操作して試験項目を表示した。
「 魔法や魔術は適性があればまず問題はないからそのかわり
学力と武術と体力テスト総合的の成績で見た後、最後に実力テストっていうのがあるわ
まぁ、 わたし受けたことないからよくわからいけど」
サーナがいくらバンドを操作しても実力テストの内容は出てこない。
「 わたしの方でも検索しましたが出てきませんでした。
毎回変わる試験の責任者によってどうやら内容が変わるようです 」
「 ふっどんな内容だろうと気にする必要はない 」
「マスターそう粋がるのはいいのですが…」
放浪人の肩をサーナが叩く
「筆記中心だったらどうするのよ」
「確実に落ちます」
放浪人は舌打ちをすると踵を返しそたくさと図書室を出ようとした。
がある本が放浪人の目に止まる
それは紫色で回りの金の装飾が施さている分厚い本。
放浪人は手でその本を掴みまわりを確認した。
「 その本がどうかしたの? 」
「 金の装飾がな 」
「 内容じゃなくてそっちかい 」
サーナは先ほどの本を机に置くと放浪人の持っている
本を受け取った。
「 ふーん随分と変わった本ね。わたしも初めて見た
タイトル書いてないし変なの 」
サーナが本を確認し開こうとした時。 本はびくりとも開かない
「 ダメね。 これ魔法がかかってるわ 」
「魔法が?」
「 うん。それが原因で開けなくなってるみたい。
なんでだろ普通はそんなことしないのに受付の人に言ってこよっか? 」
「 いや。 別に読みたいわけじゃない 」
放浪人はヒョイとサーナから本を取り上げるとそのままもっていく。
「 ちょっとそれどこに持っていく気? 」
「 ちょいとばかし借りる 」
「 中読めないじゃない 」
「 いいんだよ。 飾るぐらいできるだろ 」
「 変な奴 」
サーナは首をかしげ放浪人と共に図書室を後にした。
二階に向かうと受験生らしき男二人がベンチに座り話している
一人は目つきが悪いバンダナを巻いている男と
もう一人は髪をオールバックに整えスラっとした
さわやかな男だ。
「でさー」
「それは大変だな」
するとその横を放浪人とサーナが横切った。
「っち。女連れとはいいご身分だねー」
「おい。やめろよ」
一人の男が注意した。
「なんだあいつら」
「教師の推薦組でしょ。何回か学園の推薦枠で候補として
上げられたの見たことある」
「ということは実力者か?」
「学園の受験期間討伐クエストに参加してたみたいで
テストが間に合わなかったみたいらしいわ」
するとバンダナの男が二人に近寄ってきた。
「俺の噂か?いやーてれるな俺もしかして期待されてる」
バンダナ男は照れくさそうに頭をかいた
「君、俺達と同じ受験生だろ?俺はリクトリってんだ仲良くしようぜ」
リクトリと名乗る男はサーナに手を伸ばした。
その手を放浪人ががっしり握った。
「ああ。よろしく」
「げーおめえじゃね!」
リクトリが慌てた手を放し距離をとった。
「いってもわたしもう生徒だし受けるのはこっち」
「なんだと!」
リクトリは放浪人の上から下を眺め見た。
「やっぱり女連れじゃねーか。気に食わねえ」
「おい落ち着けってみっともない」
隣の男はリクトリの肩を掴み止めた。
「すまないな。俺はミツザワ。君サーナだろ」
「えっわたしのこと知ってるの」
驚くサーナにミツザワはニコリと笑った。
「当たり前だ。いずれ学園でライバルになる人間の情報は
知ってて当たり前だよ」
「ライバル?」
「そうさ。俺達は必ず受験に合格するからね。その時はよろしく
頼むよ」
ミツザワは放浪人を指さしながら文句を言うリクトリを掴み
ズルズルと引きずっていく。
「ほら行くぞ。部屋で勉強会だ」
「そこの隣の男!無事に合格できると思うんじゃねえぞ!」
放浪人はふいっと後ろを向いて歩いて行った。
その後ろを追いかけるサーナ
「無視すんじゃね!」
「やめとけよ」
「ってな!なんだよ。おまえあの女知っているみたいだったが!」
「知らないのかあの女の子は盗賊達から恐れられている
寒雷の魔女。学園ではトップクラスの子だ」
その言葉にリクトリは驚いた。
「なんだと。そういえばどっかで見たことあるなと思ったら
ということは隣の男は…彼氏か?」
「そうは見えないが。あの男どっかで見たことがあるし
寒雷の魔女と隣に歩いているってことはもしかしたら
学園内での特別推薦枠の可能性がある」
「特別推薦枠だって!でもあれは噂じゃ」
「わからん。だがいずれも注意した方がいい」
男二人は放浪人を怪訝の表情で睨みつけるのであった。




