光差す道
「このまま放浪人さんは戻ってこないのかな」
辺りを探したイドルだが少し時間が経つと弱気の声を上げた。
「もしかしたらあの空間に閉じ込められたのかも」
「……」
反応がないログ。イドルは手の中にあるログを確認した。
「ログさんどうしたの」
しかし声をかけても返答がない。
すると突然ログの液晶画面が点滅し始めた。
「コンタクト発生コンタクト発生」
ログの音声がループする。
「どうしたのログさん」
壊れてしまったのだろうか。
心配して覗き込むと
「あーテステス。誰かいるー」
突然の聞きなれない声にイドルは驚いた。
「えっログさん?」
「あーそうそう。とりあえずそれでいいよ
ところでそこの人悪いんだけどちょっとそのまま動かないでいてくれる」
明らかにめんどくさいから適当にあしらってる感じ
「あなた誰。明らかログさんじゃない何か入りこんでいる」
自分と同じだとイドルは感じ取った。
「へーいい感してるじゃーん。まぁ私が誰だかは
おいといてよ。今から放浪人を助け出すんだからさ」
えっとイドルは驚いた。
「放浪人さんを助ける?一体どうやって…」
「今はそんなことどうでもいいって
とりあえずあんたは私の言う通りバンドをそのままかざしてて」
イドルは色々言いたいことがあるも放浪人が助かると聞いて
文句を言わずログを目の前にかざした。
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ログの内部データ空間数々の数字が羅列されている。
その内部に意識を潜りこませたソルシエールが歩いていた。
「はーまさかもしもの為に作って置いた意識データの空間
が役に立つなんてねー」
ただひたすら数字や文字しかない空間に目をやる。
「意識反応確認。お久しぶりです元マスターソルシエール様」
ログの音声が鳴り響く。
「元かー。にしても音声出るようになってるし
ミストレスね」
ソルシエールはうんうんと納得。
「はい。ミストレス様に組み込ませていただきました。
名前はログと言います」
「ログね。なかなか面白い名前つけるじゃない」
「ソルシエール様が来た時アクセスサポートをするように
言われています」
「流石相棒だわ。あいつ」
こんな時もあろうかといつも用意がいいミストレス。
「それじゃーログ。放浪人についての記憶を見せてもらうわ」
わかりました。音声と共に放浪人の記憶が出てくる。
「ソルシエール様どうかマスターを助けてください」
ログの心配する声にソルシエールはニヤリと笑った。
「まっやれるだけやってみる。あんたは私の魔法を
出力できるようにしといて」
「既に開始しております」
「ミストレスに与えられたのもあるけど
この旅もあんたに色々なもの与えたみたいね」
ソルシエールは感心するもすぐにログの記憶を確認すると
手を上げ集中する。
すると文字と数字が複雑に動き出しそして
魔法陣みたいな形になった。
「これでよし。後はあいつの意識の強さと運ね」
「次元魔法反映終了」
「じゃーあねログ。生きてたら放浪人によろしく」
「ありがとうございます。ソルシエール様」
ソルシエールは気楽そうに手を振るとそのまま消えていった。
空間にエネルギーが溜まっていく
「イドルさん!そのまま私をかざしてください」
イドルに声をかけた。
高く持ち上げたことを確認すると
「次元転送光発射」ログの音声と共に空間は強い光に包まれた。
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異次元の中。放浪人は辺りを見渡した。
(まだか)
実はかなり焦りもある。
地についている感覚がなくなってきたのだ。
それどころか闇が体を飲み込もうとしている。
次元が揺らぐたび見えないなにかが体にへばりつく
(うっとおしい!)
体を動かしへばりつくものを振り払うも
振り払えば振り払うほど体にへばりついた。
流石に放浪人も身の危険を感じた。
その時だった。光が差し込んだ。
それは小さな光手をかざせばすぐ消えてしまいそうな
微かで儚い光。
その時を待っていた!
「今だ!放せえええ!」
放浪人は体を力の限り動かす!
そう小さな光を目指して。
へばりつくなにかを振りほどきながら
泳ぐように一歩一歩光に進んでいく
進むたびに光は大きくなる。
人が入れる大きさだ。
「あそこに入れば!」
希望を目指し手を伸ばしたが
ガクンと放浪人の膝が落ちる。
(体から力が)
全身から崩れ落ちていく
放浪人の体がすでに限界だった。
飲み込まれる体。遠ざかる光。
「ここまでなのか」
闇が全てを飲み込んでいく
儚い光も放浪人の体も
(砂漠の時みたいだな)
思い出す光景はじめてこの世界についた時
砂漠に埋もれる動かなくなった体。
すると光が強くなっていく
目に見えたのは砂漠。放浪人は思い出した。
この次元は自分の思い描いた所を映し出す。
あの光も同じイメージが近ければ近いほどいい
(ならば森だ!)
放浪人は森をイメージした。自分の覚えている所
あの時見た地に強く蹴った後途中で消えた足跡
バックトラックを疑った所。
すると光の映像が草木が生える所
そこには足跡が見える。
光はどんどん近づいてくる
それは放浪人の少し歩けば届く距離
「動け!」
放浪人は気合の声を上げ体に鞭打つも動かない!
「頼む動いてくれ!俺の体!」
それでも放浪人の体は動く気配がない
手を伸ばすのが精一杯だった。
目の前にある出口が遠く
(ここまできて)
放浪人の意識が遠くなりはじめる。
体はどんどん飲み込まれる
深く深く体はほぼ全身埋もれ力はもう入らない
まさに絶望!消えゆく意識の中思うこと
(…そういえばまだ目的の場所にたどりついてなかったな
借りも返してなかったな)
・・・サーナ
手が次元に飲み込まれそうになったその時
「手を掴んで!」
光から声が聞こえ手が伸びてきた。
手は放浪人の手を掴むとそのまま引っ張られた。
そして体は光の中に入り外へ…
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森の中。放浪人は光の中から引っ張られた。
勢いあまって助けた者に放浪人が覆い被さる。
「おっおもーい」
放浪人の下にいる者は悲鳴を上げた。
(誰だ…)
顔を見ようとしても放浪人の体は動かない。
声を聞く限り女性。
「よいっしょっと」
女性は力を込めて覆い被さる放浪人をどかして
その隙間から脱出した。
「はぁはぁ。全く。わたしがいてラッキーよ」
威勢のいい言葉の割には少し疲れた息遣い。
雑草を揺らしながら立ち上がる。
「えーと生きてるよね」
放浪人の背中に手を当てる。
(生きてる)
放浪人は応えるも声にならない。
「うん。生きてるね。よしよし近くで声が聞こえたから
きっと助かるわ」
ゴソゴソと荷物を掴む音
「じゃあね。えーと名前は…ラッキーさん?まぁいいか
運があったらまた会いましょう」
(誰がラッキーだ)
放浪人はうつぶせになりながらその姿を
見ようと首を動かして声の下方にズルズルと地面に顔をこすらせながら
ゆっくりと顔向ける。
疲れのせいか放浪人の目線では霞んでよく見えないが
女性はすでに荷物を背中に背負い既に歩いていた。
(銀髪…)
髪を揺らしながら女性は森の奥に消えていった。
(助けるなら最後まで助けてくれればいいものを)
放浪人はため息をつくと首を横にして
深呼吸をして目を閉じた。
今は体を休めよう。
緊張が解けたのかドッと疲れが押し寄せた放浪人。
意識が遠くなっていく彼に草木を分けながら近寄ってくる音
「マスター!マスター!大丈夫ですか」
「放浪人さんまさか戻ってこれるなんて」
その声を最後に胸をなでおろした放浪人は
プツリと意識が途切れるのであった。




