熱を冷ます水
放浪人とスティッカ。
お互い向かい合い気を研ぎ澄ましていた。
「いくぞ!スティッカ!」
「倒してやるぞ!放浪人!」
暑苦しい。
それを冷ますかのような風が吹く
その風に押され放浪人は構えてまま地面を蹴る。
「きたな!向かいうぅぅぅぅぅつ!!
放浪人を真正面から迎撃しようと
燃えさかる岩を纏った拳を振りぬく。
放浪人は構えた腕を少し上げ上半身が
限界まで曲がるくらい体をねじった。
「必殺!」
そして体を戻る勢いを利用して
風を切る勢いで剣を振るった!
---タイフン一閃!---
まさに一瞬!
お互い交差する!
放浪人は服に火を纏わせながら
スティッカを横切り体を半回転して着地し。
キンっと剣を鞘にしまった。
スティッカも腕を振りぬいたまま止まっている。
「見事だ!放浪人!ぐうう」
火を纏っていた岩は真っ二つに割れ
スティッカはガクリと膝を着いた。
「お前もな」
放浪人の手の震えていた。
スティッカの振るった攻撃の衝撃、
火がまだ服に残っている
もしディアやプルランに出会ったなかったら
どうなっていたかわからない
放浪人は拳を握り立ち上がった。
するとスティッカもよろよろと全身燃えるような
火を纏いながら立ち上がった!
「おい。無理するな。いくら体が切れていないからって
痛みは本物だぞ」
放浪人もその痛みを体験している
あの時はまだ痛みを押さえていたらしいが
今が実際切られたかのような激痛。
すぐに立てるのは困難だ。
「あの人今立てる状態ではないはずなのに」
ログも驚愕する。
しかしスティッカはなんその苦痛の表情を
浮かべながら立ち上がった!
「俺の正義の心が力をくれる!」
「ようは根性か!」
放浪人は再び構える
「なら!拳で決着つけるまで!」
「うおおおおお!いくぞホウ!ロウ!ジン!」
「こい!」
放浪人とスティッカは拳を振り上げ突っ込んだ!
手が顔に届く範囲に近づいた同時に
お互い拳を放つ!腕がクロスし顔面へ…
その時だった突如空から二人めがけて
大量の水が落ちてきた。
ザバーン。
でかいバケツを空からひっくり返したみたいに
二人の頭上に大量の水が降り注ぐ。
急なことに二人は時が止まったようにびしょ濡れで
拳を顔面近くに止めながらキョトンとした表情。
「熱血馬鹿共の沈下完了」
やる気のない女性の声。
「まさか!この声はネムニ君か!」
スティッカは声のする方向に首を向けた。
放浪人もなんだとばかりに首を向ける。
そこにいたのはダルそうな顔をした
水色に緑片耳を出した長い髪のネムニと呼ばれた女
スティッカが着用している服に酷似した服装
唯一違うのは膝より少し上ぐらいの
スカートをはいているぐらいだろうか。
つかつかと手に持っている杖で草木をかき分けてきた。
「なに暑苦しいことやってるんですか」
かったるそうにスティッカに話しかけるネムニ。
「暑苦しいだと!いやそれより聞いてくれ今怪しい人物を…」
スティッカは放浪人を指さした。
ネムニは放浪人を見るとため息をついた。
「あの。この人多分関係ないと思いますよ」
「なぜわかる」
「彼の顔。知ってますし」
スティッカが問い詰めるとネムニは
腕につけたバンドを操作した。
『がああああああ』
聞き覚えのある音声と映像が流れた。
そう警備員にアームロ……
「おっと少し間違えた」
ネムニが再び操作すると映像が消え。
今度はいくつか細かく記述された文章が表示された。
「スティッカさん放浪人ですよこの人」
「知っている!彼から聞いたからな!それがどうしたと」
「いやだから。本部で話題になった人ですよ」
「本部?…放浪人……ああ!そうだ」
なにか思い出したようにポンと手を叩いた。
「テレポート使用禁止になった放浪人」
「やめろ」
指さすスティッカを放浪人は威圧した。
「あー同期の熱血野郎がご迷惑かけてすいません」
ネムニは放浪人に謝罪した。
「この人の脳みそ組織に入って燃え尽きてるので
どうしようもないんですよ」
「そうか。それは大変なんだな」
放浪人はよくわからないが適当に相槌。
「ネムニ君!どういうことだい」
「どうもこうも。彼はセインエイツに
向かっていただけで特に悪いことしてませんよ」
「セインエイツに!?本当かネムニ君」
「だから組織の更新情報みてくださいよ
組織の依頼クエストもいくつかこなしてくれて
クライアバル王国からも彼に対しての
情報とクエスト依頼を申請しています。
正直今回異変を起こした犯人だという確率は限りなく低いです」
「そっそう言えば…聞いたような…うおお!放浪人!すまん!」
スティッカは放浪人に向かって頭を下げた。
「わかればいい」
特に気にする様子もない放浪人。
ネムニはジッと放浪人顔を見つめる。
「なんだ?」
「あーすいません。さっきの暑苦しさはどこにいったんだろと思いまして」
「つい熱くなるんだよ」
放浪人はため息。
「バカにはしてませんよ。映像が出回った時とキャラが変わっていたので」
「そうか?ところで映像って」
「ええ!ところでスティッカさんボスから命令が入りまして
先にンーガル村に行ってくれと言うことです」
ネムニは杖を上げ村の方をさした。
「ンーガル村?なぜだい?森の異変はどうするんだ」
「交代で変わりに調査してくれる人が来るみたいです。
出来るだけ早くいって欲しいそうなので近くにいた
新人の私たちが選ばれたようです」
「うっうむ。そうか。正義の命令なら仕方ない」
肩を落とすスティッカ。しかし放浪人は気がかりなことかあった。
「何しに行くか教えてくれないか」
もしかしたらエナルのことかも知れない。
そう考えた放浪人はネムニに問う。
「えーと、そうですね。本来は機密事項で黙ってないと
いけないんですが…」
難しそうな表情をうかるネムニだったが少し考え
「まぁあなたは関係者ですからいいでしょう」
と口を開く。
「エナルインという獣人に話を聞きに行けと言う命令です」
「やはりか」
放浪人は身構えるもネムニは手をはためかせる。
「安心してくださーい。別に連行しろとか
物騒な命令ではないので」
「だったらなにをしにいく」
「話をきくだけです。話の内容については
さすがに割愛させていただきますが
悪いようにはしません」
「本当か」
ネムニは首を縦に振る。
「約束しますよ。それにプルランさんとカラトさん
二人共は元はわたしたちの組織の人間です。
その方達からの報告の確認のため向かうわけですから」
「二人が組織の?」
「はい。そうです。だからあなたの事も喋る
ジャーバンド、ログのことも事前に聞いてますし」
ログが点滅する。
「わたしのこともですか」
「はい。きいていますよ。それにしてもいいですね
楽そうでわたしもこの機能欲しいです」
「お褒めして頂きありがとうございます」
二人のやり取りに放浪人は胸をなでおろした。
「放浪人さん少しいいですか」
ネムニの問いに眉を上げる。
「なんだ」
「一緒に写真とってもいいですか?」
ネムニの言葉にスティッカは驚いた!
「ネムニ君!君は仕事中に何をいっているんだ!」
「あーいや。彼、一部の男女にカルト的人気があるので
実際うちの直属部署の映像が出回った時からの先輩がファンですし」
「映像の時って確か彼を捕まえるかどうか議論していた
時ではないか!思い出したぞ!結局被害は出ていないから
出入り禁止程度ですんだが」
放浪人は冷や汗をかく
まさかそんな大事になっていたのかと。
「けしからん。けしからんぞ!」
正義に騒ぐスティッカを放っておいて
ネムニは放浪人に向きなおす。
「それでいいですか」
「断る」
「うーん残念」
だるそうに肩を落とすネムニ。
「じゃあ握手だけ…」
「ネムニ君!君も不純だぞ!それより
聞かなければいけないことあるだろう!」
スティッカの声がこだまする。
「この世界の治安維持の奴は変なのばっかりだな」
放浪人はため息も出なかった。




