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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
18/262

第17話 天使?いえ爬虫類です…。

 ムジカは壁時計に目を向ける。

 時刻は十八時五十分、夜と朝が無い地下世界アストラルの時間では夕方であり、夜を意味する。

 ムジカは慌てる様子で声を上げる…。


「あっ、もうこんな時間だっ!!。そろそろ開店準備しなければっ!!」


 店内の左奥の中通路に足を運び、ムジカは左側の部屋のドアノブに手を掴む。


「開店準備って?」と、ゼブラは尋ねる。


「お前達も来いっ!!」


 ムジカはゼブラとユリアに、部屋に来るように呼びつける。何が始まるんだろうと、不安が募る。

 まだ、聞きたい事を聞いていない。わからない状況の中、二人は恐る恐る部屋に入る…。


ーーーー〈控え室〉ーーーー


 連れて来られたのは店の控え室。鏡台が5台、部屋の奥にはカーテンが掛かる試着室。並ぶ服干し台には衣装が掛けられ、変な予感。


「これに着替えてろっ!!」


 ムジカは二人に衣装を渡し、控え室から急ぎ足で去った。

 何をするつもりだろう、二人は目を合わせ、沈黙。理解が出来ない心境だ…。

 

「いきなり着替えてろって言われても…」


 衣装を広げ、困惑するゼブラ。衣装は全て女性モノ、男モノの衣装は無い。ますます、嫌な予感。

 女装しろと言うのか…。ムジカさん二人に何をさせたいのだろか…。


「私、着替えて来るわね…」と、ユリアはカーテンを開かせ、試着室に入る。


 部屋の中、着替えるのに躊躇する衣装と睨み合うゼブラ。どうしようと、悩む。すると。


「あーら、まだ着替えてなかったのっ!!」


「ムジカさんっ、何だその格好?」


 控え室のドアを開き、入ってきたムジカに驚き、ゼブラは声をあげる。ムジカは異形と化している。頭髪はワックスでテカテカに固めたオールバック。顔は白の厚化粧、瞳はパッチリの付け睫毛、ふっくらした口紅。上半身は素肌のピンクベスト、下はホットパンツ。足にはレディースブーツ。

 姿は、オネェである…。


「これは夜の仕事の姿よ。昼間は食堂、そして夜は、この町を照らす天使クアドラスなのよっ」


 両人差し指でキュートに頬を差し、強烈な面でゼブラに詰め寄るムジカ。


「まさか、俺もそれに着替えろって言うのか?」


 ムジカの姿に畏怖し、ゼブラは尋ねる。

 ムジカの店は昼間は食堂、夜は酒場。普段の彼は厳格な戦士、夜はでかいオネェである。戦地が忙しくない時間だけ、店を経営しているのだ。

 店を経営する目的は、長い戦争で落ち込む町人を明るくしたいからだ。


「勿論よっ。お願いゼブラちゃん…」


「嫌だねっ。俺にはそんな趣味は無いっ!!」


 ムジカの頼みをゼブラは両腕を交差させ、拒否。


「あら、断るって言うの?。なら、仕方ない…」


 ムジカは高圧な様子で拳をゴキゴキと鳴らす。

 嫌な予感に、ゼブラは不穏な表情で後退。

 ムジカは両腕を広げ、瞳を光らせる…。


「実力行使よっ!!」


 ムジカは雄叫びを響かせ、太い腕を伸ばす。


「誰が捕まるかよっ!!」


 左側に跳び、ゼブラは避ける。捕まった時の危険の度合いは鼻に吹き付ける香水が物語る。


「大丈夫。フェイトちゃんも昔、やっていたわよ。そうね、あの子が地上の魔導術学校を首席で卒業して、地下世界アストラルに帰郷した頃よ。物足りなさで私の元で修行し、この仕事を手伝ったものよ。恥ずかしいのは最初だけ、フェイトちゃんもそうして慣れていったわウフフフフ…」


 ムジカは悪企みな笑みで歩み寄る。

 フェイトが帰りたくないのも、無理もない…。

 あの、フェイトさんが…。と、思い浮かべ、ゼブラは吹き出しそうになる。


「スキありっ!!」


 ムジカは恐い目で飛びかかる。


「なんのっ!!」


 ゼブラは右側に跳び、避ける。

 オネェのムジカは「いい加減、捕まりなさい」と、ゼブラを追い回す。

 絶対に捕まってたまるかと、ゼブラは必死に逃げる。二人は部屋中、グルグル回り、鬼ごっこ。

 すると、試着室のカーテンが開く。


「どうかしら。この衣装…?」


 試着室から出て来たのはユリアは一変。黒のバニースーツ。頭には白の猫耳、尻部には綿の白いシッポ。ユリアは恥ずかしそうに、顔を赤くし、モジモジさせる。


「あら、すごく似合っているじゃないのっ!!」と、ユリアの隣に駆け寄るムジカ。


「どうかしら?」


 ゼブラに目を向けるユリア。


「どうって…」


 ユリアの姿に、目のやり場に困るゼブラ。

 露出したユリアの腋、胸、ヘソ、太ももが視界に入り、答えを、言葉に出来ない。感想をから言えば、ムラムラする。


「よかったわ。うちには化け物二人しかいないから、花が出来たわ…」


 ムジカは喜ぶ。


「待て、アンタの他にもう一匹いるのか?」 と、ムジカの言葉に、ゼブラは恐る恐る尋ねる。


「一匹って失礼ね…」


 三列目の鏡台をガチャと開き、何か出てきた。


「うわっ、何か出てきたっ!!」


 鏡台から出てきた何かにビックリし、ゼブラは後ろの壁際まで跳び下がる。

 出てきた何かもムジカの同種。丸坊主に細い眉、口回りに青髭。顔つき、体格は肥満。ピチピチの黒のボンテージを着用したヤバイ中年のおっさんだ。身長はゼブラと同格、人生に何があったのだろうかと、興味がある。


「あら、クライヴ。いらっしゃい…」


 ムジカはナチュラルに挨拶。

 彼はムジカの同種であり、夜店の同僚。義勇軍の町サイモンを照らす天使と言う名の爬虫類である。

 この穴はどうなっているんだ…。と、ゼブラとユリアは三列目の鏡台の穴を覗いている。

 真っ暗である…。


「この子達は誰?」


 クライヴはゼブラとユリアに近づき、ジィーと、近い顔で眺める。

 香水が、汗の匂いが二人の鼻に漂ってくる。

 正直、臭い…。


「彼らは戦いの希望、そして店の新人よ…」


 と、ムジカは紹介している。

 また、変な者が現れた…。

 すると、ユリアはクライヴに気前良く口を開く。


「私、ユリア・クライ…」


「女子はだまってろぉ!!」


 えっ、何で…。クライヴはユリアの自己紹介の言葉を怒声で中断させる。

 一方のユリアは、ビックリして沈黙。理由、男にしか興味がない。

 クライヴはゼブラの両手を握り、キラキラな笑みを浮かべる。彼は、ホレた。


「何だよ…」


 ゼブラは苦い表情で小さく尋ねる。


「この子、可愛いっ!!。彼氏にしたいっ!!」


 クライヴはゼブラをガシッと太い両腕で抱き締め、頬をスリスリさせる。


「がぁっ…」


 クライヴの汗臭さと香水の香りがゼブラの鼻に突く。全身をメキメキと音を響かせ、締め付けられる。まるで大蛇に巻き付けられてる痛覚だ。


「付き合って下さいっ!!」


 クライヴは何気なく告白。


「無理っ!!」と、ゼブラはハッキリ断る。


「何よ、つれないわねぇーー」


 フリフリフリフリと、腰を振るクライヴ。


「腰を振るなぁーーー!!」


 ゼブラは絶叫。


「ハイハイ、もう少しで仕事よ。準備に入って」と、ムジカは両掌をパンパンと叩き、通達。

 クライヴは「はーい」と、残念な様子でゼブラを解放し、控え室から退室。

 危なかった…。と、胸を撫で下ろすゼブラ。下手すればカマを掘られ、人生の道を脱線する所だ。


「ほら、ユリアちゃんも行くわよ。この仕事は主に接客だから色々あるけど、フォローするわ…。あと、クライヴの事は気にしなくていいわ。彼、悪気があって言ったわけじゃないわ。普段は良い人よ」


 ムジカはユリアの肩を叩き、言った。

 ユリアは「ハイ」と、軽く返事。店を手伝う事になっているようだが、やるとしよう。


「俺は何をすればいい?」


 ゼブラは尋ねる。


「アナタは用心棒。店内でトラブルがあったら、それを止める役よ…」


「わかった」と、ムジカの依頼にゼブラは承知。

 女装でなくて、よかった…。


「それと、ムサシを呼んで来てくれない?。あの子も従業員、隣の部屋で待機しているから、おねがい…」


 ムジカは言った。ゼブラに頼むのは、店の準備で色々と忙しいからだ。ムサシはムジカの店に居候し、修業と店の手伝いをしている。


 ユリアとムジカ、クライヴの3人は控え室を退室。店内に向かい、開店準備の作業をしている。


「ムサシ、ムジカさんが…」


 ゼブラは隣のムサシの部屋に入る。


(・・・・・・)


 部屋の中、二人は目を会わせ、沈黙。

 ムサシのヤラしいボディがゼブラの視界に映る。

 下は白のふんどし、長い前髪で垂れ隠す乳房。ムサシはウェイトレスの衣装を両手に掴み上げ、着替え中である。


「えっ…と、これはだな…」


 赤面し、ゼブラはアタフタと慌てる。

 ムサシは鋭い表情を浮かべ、右手で刀を取る。


「ーーーーーッ!!」


 ムサシは赤面し、怒りの飛脚。

 ゼブラの頭上跳び超え、背後に回り込む。


「ーーーーーッ!!」


 ゼブラは背後に反応。しかし。


「見たな…。私の?」

 

 同時にムサシは背後からゼブラの前足を払い、ドスンと鈍い音を響かせ、うつ伏せに転倒させる。

 後ろから跨がり、取り押さえる。そして、右手の刀をゼブラの横首に突き立てる。


「たっ…助けてぇーーーーーッ!!」


 苦し紛れに、ゼブラはジタバタと声をあげる。


 ーーその後、部屋にムジカとユリアが駆けつけ、事は解決した。ゼブラの状況に、ユリアは嫉妬と軽蔑の様子を浮かべていた。ゼブラは必死に弁解し、何とかユリアの機嫌を直したらしい…。

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