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ユーギガノス  作者: やませさん
地下世界アストラル編
19/262

第18話 知られざる真実の歴史

 店内のテーブルは客で埋め尽くされ、大衆酒場として賑わっていた。店員のユリアは客受けが良い。客に酒と料理を出したり、軽くお喋りしたり、楽しませている…。

 時に変な客から尻や肩を触られるが、その度に同じ店員のムサシが注意している姿が確認出来る…。

 ゼブラはカウンター席から店内を広い視野で見張る。動けるのは喧嘩の仲裁、それ以外は手を出してはいけない。


「なぁ、ムジカさん…」


「どうしたの?」


 ゼブラの言葉に、オネェのムジカはカウンターキッチンで調理をしながら、ゼブラに耳を傾ける。


「ユーギガノスって一体何だ?。この剣は、何で俺を選んだんだ?。今まで幾多の人達に渡り歩いて、俺以外にも、ステファームの血筋がいるのに、どうしてだ?」


 ゼブラは言った。何故、自分が選ばれたのか納得出来ない。剣に選ばれて、迷惑している。

 しかし、不思議な事にチェルシーに剣は取れた。けど、これはどうでもいい。

 ムジカは静かに語り始める。


「ユーギガノスは、遥か昔、まだこの世界が1つの大陸世界だった頃、実在した地上組織よ」


「地上組織?」と、わからない様子でゼブラは首を横に傾ける。


「地上全土を支配し、戦いを生業にする軍隊。それで地上組織。歴史上、最初は数人の結束者だけだったけど、同じ志を持つ者達か集まり、ユーギガノスが誕生した。長い対立競争を圧倒的な軍事力で勝利し、地上を物にした。そして、大戦景気の中、戦争が始まったの…」


「戦争?」


 再度、ゼブラは首を横に傾ける。


「破壊神ラモディウス。突如、地上に姿を現し、ユーギガノスに戦争を仕掛けたの、これが終末戦争…。戦いは数百年続き、幾多の兵士が命を落とした。異変は起こった…。ラモディウスの策略により、兵力がダウン。そして、彼女を実戦投入した」


 フライパンを回し、調理しながら話すムジカ。


「彼女?」


「彼女の名前はリサ・ドラグーン。彼女はラモディウスと戦い、激戦の末、残された同士を犠牲に、宝石にして奴を封印し、戦争は終わったわ。宝石は後の地下世界の創始者であり、当時逃亡兵だってステファーム・アストラルに預けられ、彼女は転生の旅に消えた。アナタの剣は、アストラルがリサと巡り会う事を全霊に込め、作られたのよ」


 ムジカは言う。


「それで、俺が選ばれた?」と、ゼブラは剣を鞘ごと、取り出す。


「そう言う事ね。作られた剣には龍老樹(ドラグーン)の琥珀石が使われていて、アストラルの意思と、龍老樹(ドラグーン)の琥珀石から流れる魔力がアナタを選んだんだのでないかしら…」


 ムジカは調理のフライパンの中に、コショウを振りかけ、歴史を語る。アストラルと龍老樹(ドラグーン)の意思が、ゼブラを選んだ…。

 選ばれた理由は、ゼブラがアストラルと、どこか似ている。

 ゼブラは質問を止めた、これ以上は面倒くさいからだ。

 龍老樹(ドラグーン)とは、リサ・ドラグーンがアストラルに授けた種の成長の姿であり、大樹だ。

 樹からはリサの創造(そうぞう)エネルギーと言う名の魔力が流れ、琥珀石は特に強い魔力が固まっている。


「ねぇねぇ?。この仕事が終わってから、一緒に飲まない?」


 店内にて、若い客がユリアをナンパ。ムサシは注意したいが、仕事が忙しく、手が空かない。


「いえ、結構です」と、ユリアは断る。


「いいじゃん、行こうよ。それとも、男いるの?。全然良いよ、何もしないからさ…」


 若い客はベラベラと喋り出す。パン屋とは違う接客業に、戸惑うユリア。


(しつこいな…)と、若い客を睨むゼブラ。

 しかし、若い客は気にしない…。


「君の事、もうちょっと知りたいなぁー」


 若い客はユリアの両肩を掴み、ジィーと見つめてくる。


(ぶっ殺す…)


 さすがのゼブラは殺気を燃やし、席を立つ。

 あの客、明らかにワイセツ目的だ。ゼブラは仲裁を加えようと、若い客がナンパするテーブル席に目を定める。しかし、ムジカがゼブラを止め、代わりに歩み寄る…。


「ちょっとお客さん…」


 若い客に威圧感を漂わせ、パキパキと拳を鳴らすムジカ。若干、オッサンに戻っている。

 店内は静かな緊迫が張りつめ、一辺の皆はムジカの方に視線を移している。


「ひぃっ…」と、若い客は腰を抜かす。


「うちの従業員をたぶらかすのは禁止のハズですよ。それが嫌なら、お引き取りを…」


 笑顔の様子のムジカ。が、かなり恐ろしい…。


「しっ…。失礼しましたっ!!」


 威圧感に負け、若い客は全身を恐怖に震わせ、物凄い逃げ足の速さで酒場から走り去っていった。

 あんなデッカイ爬虫類に睨まれたら、誰だって逃げるであろう…。


パチパチパチパチ…


 静まり返る店内から拍手の音、そして大歓声。


「ヒュー、やるなムジカさんっ!!。かっこいいぜっ!!」と、周囲の客からは称賛の声。


「キャーー。ムジカちゃん怖かったぁーー」


 ムジカは強烈な笑顔。両頬に指を突き立て、一辺に笑みを見せつける。

 アンタの方が恐いっての…。と、客の皆は苦笑いを浮かべ、思うのである。


「あっ…。ありがとうございますっ!!」


 ユリアは頭を下げる。


「大丈夫だったかい?。実はさっきな人はこの町で一番、タチの悪いナンパ野郎なのよ。私が脅かしたから、もう来ないわよ…」


 ムジカはパチっと、1つウィンクを決める。

 カッコイイな…。と、ユリアは憧れを抱く。見せ場を取られたゼブラは複雑な心境でムジカの様子を眺める。


「さて、気を取り直してパァーといって頂戴。今日は私のオゴリよっ!!」


 ムジカは手を叩き、上機嫌で声をあげる。


「ムジカさんっ、アンタは最高だっ!!」


 客は大歓声。指笛か店内に響き渡る。


「ありがとう、ありがとう…」と、ムジカは両腕を力強く掲げる。

 一辺の客達は、(ムジカ、ムジカ!!)と、コールの声をあげる。

 上機嫌のムジカは酒樽の酒を一気飲み、踊る。


「うがぁーーーーーッ!!」


 ムジカは人差し指を掲げ、雄叫びをあげる。

 店内に笑い声が外に吹き抜け、賑やかな雰囲気だ。賑やかな雰囲気に、さらに大勢の客が酒場に押し寄せる。同時に、忙しさが増した。


ーーー次の日。


 時刻は朝の9時。ゼブラとユリア、ムジカの3人は町の表通りを歩いていた。行き先は義勇軍の本部、司令と色々と打ち合わせをするためだ。

 石造りの地面から微かな地底雲(ちていうん)の蒸気が漂い、温暖。

 辺りを賑わせる露店、行き交う袖無し服の市民。

戦争状態とは思えない程、賑やかだ。何故なら、民は選ばれし者に期待している。だから賑やかだ。

 ちなみに、露店に売っている魚は全て湖魚、海魚は売っていない。


「イテテテ…。昨日はハシャギ過ぎたな…」


 頭を押さえるムジカ。姿はウェイター、元のデカイおじさんである。酒を飲み過ぎた為か、頭が痛い。気分は最悪だ。

 彼にとって久しぶりの軍の本部だ。かれこれ、数ヶ月ら顔を見せていない。


「大丈夫ですか?」


 心配するユリア。


「何、慣れた事よ。なんせ、戦いの希望が来たから、つい飲み過ぎた…」


 嬉しく頭を掻くムジカ。彼はオカマ状態と、元の状態により、人格が恐ろしく変化する。


(あれ、あの人…)


 すれ違う女性の額に、ゼブラは不思議に目を移した。女性の額に、小さな青宝石(サファイヤ)がついている。


「何を見てる?」


 ムジカは渋く尋ねる。


「いや、すれ違った女性の額に宝石がついていたから…」


 ゼブラは言う。


「あれは魔界人。魔界から地下世界アストラルに移住した住民だ。最初は色々と問題はあったが、今は共存している。何やら魔界は多種族による争いが激しく、それで逃げてきたらしい…」


 ムジカは説明した。ある理由に、魔界軍から酷い仕打ちをされ、復讐する為に義勇軍に入った魔界人もいるらしい。

 魔界人の特徴は額に宝石がついている。額についている宝石の光に、感情が違ってくる。

 宝石が青く光れば、冷静を表し、宝石が赤く光れば、怒りを表している。宝石が黄色く光れば、疑惑を抱いている事を意味している。


 しばらく歩いていると、門前に行き着いた。

 鉄製の門構え、解放された門には鎧姿の兵士が見張りに立ち、ムジカ達に敬礼。

 解放された門の向こうには義勇軍の本部が建設され、兵士が行き交っている。

 すると、門の向こうからムサシとチェルシーが門を潜り、3人の前に現れる…。


「また覗きに来たかっ!!」


 昨夜の事をまだ根に持っているのか、ムサシはゼブラを鋭く睨み、刀を構える。


「あれは事故だっ!!」と、ゼブラはキッパリと答える。

 

「おねぇーさまぁーーーっ!!」


 チェルシーはキュートな笑みを浮かべ、ユリアの大きな胸にガバッと、抱きつく。

 一方のユリア。抱きつかれて気分が良いのか、優しい笑みを浮かべ、チェルシーの頭を撫でる。


「もっと、もっとチェルシーの頭を撫でて撫でてぇ…」


 チェルシーは身体を左右に揺らし、嬉しい様子。 ユリアは(よしよし)と、チェルシーの頭を撫で、あやしている。


「ムサシ、これから任務か?」


 ムジカは尋ねる。


「はい。昨日のチェルシーの報告に、森林地帯に魔界軍の橋が存在し、司令の命令により、橋を破壊する任務をしに行く所です…」


 と、ムサシは敬礼。

 場所はゼブラとユリアが降りてきた橋。今からチェルシーとムサシの二人で破壊する任務だ。

 大人数より、実力者である二人に任せた方が動きやすいと、司令は判断した。


「そうか、気をつけてな…」


 ムジカは言った。


「はい。行くぞチェルシー…」


 ムサシはチェルシーに鋭い様子を向ける。


「あーい…」


 チェルシーはユリアから離れる。

 そして二人はムジカ達と別れ、魔界軍の橋を破壊する為、森林地帯方面の正門に向かうのである。

 チェルシーはユリアに向かって手を振り、ムサシは未だにゼブラを睨み、離れていく…。


「今日は大事な話だ。今後の戦いに影響する話だから、時間が長くなるから覚悟しておけ…」


 ムジカは渋い様子で二人に伝える。


 3人は門を潜り、義勇軍の基地に足を踏み入れるのである…。

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