第18話 知られざる真実の歴史
店内のテーブルは客で埋め尽くされ、大衆酒場として賑わっていた。店員のユリアは客受けが良い。客に酒と料理を出したり、軽くお喋りしたり、楽しませている…。
時に変な客から尻や肩を触られるが、その度に同じ店員のムサシが注意している姿が確認出来る…。
ゼブラはカウンター席から店内を広い視野で見張る。動けるのは喧嘩の仲裁、それ以外は手を出してはいけない。
「なぁ、ムジカさん…」
「どうしたの?」
ゼブラの言葉に、オネェのムジカはカウンターキッチンで調理をしながら、ゼブラに耳を傾ける。
「ユーギガノスって一体何だ?。この剣は、何で俺を選んだんだ?。今まで幾多の人達に渡り歩いて、俺以外にも、ステファームの血筋がいるのに、どうしてだ?」
ゼブラは言った。何故、自分が選ばれたのか納得出来ない。剣に選ばれて、迷惑している。
しかし、不思議な事にチェルシーに剣は取れた。けど、これはどうでもいい。
ムジカは静かに語り始める。
「ユーギガノスは、遥か昔、まだこの世界が1つの大陸世界だった頃、実在した地上組織よ」
「地上組織?」と、わからない様子でゼブラは首を横に傾ける。
「地上全土を支配し、戦いを生業にする軍隊。それで地上組織。歴史上、最初は数人の結束者だけだったけど、同じ志を持つ者達か集まり、ユーギガノスが誕生した。長い対立競争を圧倒的な軍事力で勝利し、地上を物にした。そして、大戦景気の中、戦争が始まったの…」
「戦争?」
再度、ゼブラは首を横に傾ける。
「破壊神ラモディウス。突如、地上に姿を現し、ユーギガノスに戦争を仕掛けたの、これが終末戦争…。戦いは数百年続き、幾多の兵士が命を落とした。異変は起こった…。ラモディウスの策略により、兵力がダウン。そして、彼女を実戦投入した」
フライパンを回し、調理しながら話すムジカ。
「彼女?」
「彼女の名前はリサ・ドラグーン。彼女はラモディウスと戦い、激戦の末、残された同士を犠牲に、宝石にして奴を封印し、戦争は終わったわ。宝石は後の地下世界の創始者であり、当時逃亡兵だってステファーム・アストラルに預けられ、彼女は転生の旅に消えた。アナタの剣は、アストラルがリサと巡り会う事を全霊に込め、作られたのよ」
ムジカは言う。
「それで、俺が選ばれた?」と、ゼブラは剣を鞘ごと、取り出す。
「そう言う事ね。作られた剣には龍老樹の琥珀石が使われていて、アストラルの意思と、龍老樹の琥珀石から流れる魔力がアナタを選んだんだのでないかしら…」
ムジカは調理のフライパンの中に、コショウを振りかけ、歴史を語る。アストラルと龍老樹の意思が、ゼブラを選んだ…。
選ばれた理由は、ゼブラがアストラルと、どこか似ている。
ゼブラは質問を止めた、これ以上は面倒くさいからだ。
龍老樹とは、リサ・ドラグーンがアストラルに授けた種の成長の姿であり、大樹だ。
樹からはリサの創造エネルギーと言う名の魔力が流れ、琥珀石は特に強い魔力が固まっている。
「ねぇねぇ?。この仕事が終わってから、一緒に飲まない?」
店内にて、若い客がユリアをナンパ。ムサシは注意したいが、仕事が忙しく、手が空かない。
「いえ、結構です」と、ユリアは断る。
「いいじゃん、行こうよ。それとも、男いるの?。全然良いよ、何もしないからさ…」
若い客はベラベラと喋り出す。パン屋とは違う接客業に、戸惑うユリア。
(しつこいな…)と、若い客を睨むゼブラ。
しかし、若い客は気にしない…。
「君の事、もうちょっと知りたいなぁー」
若い客はユリアの両肩を掴み、ジィーと見つめてくる。
(ぶっ殺す…)
さすがのゼブラは殺気を燃やし、席を立つ。
あの客、明らかにワイセツ目的だ。ゼブラは仲裁を加えようと、若い客がナンパするテーブル席に目を定める。しかし、ムジカがゼブラを止め、代わりに歩み寄る…。
「ちょっとお客さん…」
若い客に威圧感を漂わせ、パキパキと拳を鳴らすムジカ。若干、オッサンに戻っている。
店内は静かな緊迫が張りつめ、一辺の皆はムジカの方に視線を移している。
「ひぃっ…」と、若い客は腰を抜かす。
「うちの従業員をたぶらかすのは禁止のハズですよ。それが嫌なら、お引き取りを…」
笑顔の様子のムジカ。が、かなり恐ろしい…。
「しっ…。失礼しましたっ!!」
威圧感に負け、若い客は全身を恐怖に震わせ、物凄い逃げ足の速さで酒場から走り去っていった。
あんなデッカイ爬虫類に睨まれたら、誰だって逃げるであろう…。
パチパチパチパチ…
静まり返る店内から拍手の音、そして大歓声。
「ヒュー、やるなムジカさんっ!!。かっこいいぜっ!!」と、周囲の客からは称賛の声。
「キャーー。ムジカちゃん怖かったぁーー」
ムジカは強烈な笑顔。両頬に指を突き立て、一辺に笑みを見せつける。
アンタの方が恐いっての…。と、客の皆は苦笑いを浮かべ、思うのである。
「あっ…。ありがとうございますっ!!」
ユリアは頭を下げる。
「大丈夫だったかい?。実はさっきな人はこの町で一番、タチの悪いナンパ野郎なのよ。私が脅かしたから、もう来ないわよ…」
ムジカはパチっと、1つウィンクを決める。
カッコイイな…。と、ユリアは憧れを抱く。見せ場を取られたゼブラは複雑な心境でムジカの様子を眺める。
「さて、気を取り直してパァーといって頂戴。今日は私のオゴリよっ!!」
ムジカは手を叩き、上機嫌で声をあげる。
「ムジカさんっ、アンタは最高だっ!!」
客は大歓声。指笛か店内に響き渡る。
「ありがとう、ありがとう…」と、ムジカは両腕を力強く掲げる。
一辺の客達は、(ムジカ、ムジカ!!)と、コールの声をあげる。
上機嫌のムジカは酒樽の酒を一気飲み、踊る。
「うがぁーーーーーッ!!」
ムジカは人差し指を掲げ、雄叫びをあげる。
店内に笑い声が外に吹き抜け、賑やかな雰囲気だ。賑やかな雰囲気に、さらに大勢の客が酒場に押し寄せる。同時に、忙しさが増した。
ーーー次の日。
時刻は朝の9時。ゼブラとユリア、ムジカの3人は町の表通りを歩いていた。行き先は義勇軍の本部、司令と色々と打ち合わせをするためだ。
石造りの地面から微かな地底雲の蒸気が漂い、温暖。
辺りを賑わせる露店、行き交う袖無し服の市民。
戦争状態とは思えない程、賑やかだ。何故なら、民は選ばれし者に期待している。だから賑やかだ。
ちなみに、露店に売っている魚は全て湖魚、海魚は売っていない。
「イテテテ…。昨日はハシャギ過ぎたな…」
頭を押さえるムジカ。姿はウェイター、元のデカイおじさんである。酒を飲み過ぎた為か、頭が痛い。気分は最悪だ。
彼にとって久しぶりの軍の本部だ。かれこれ、数ヶ月ら顔を見せていない。
「大丈夫ですか?」
心配するユリア。
「何、慣れた事よ。なんせ、戦いの希望が来たから、つい飲み過ぎた…」
嬉しく頭を掻くムジカ。彼はオカマ状態と、元の状態により、人格が恐ろしく変化する。
(あれ、あの人…)
すれ違う女性の額に、ゼブラは不思議に目を移した。女性の額に、小さな青宝石がついている。
「何を見てる?」
ムジカは渋く尋ねる。
「いや、すれ違った女性の額に宝石がついていたから…」
ゼブラは言う。
「あれは魔界人。魔界から地下世界アストラルに移住した住民だ。最初は色々と問題はあったが、今は共存している。何やら魔界は多種族による争いが激しく、それで逃げてきたらしい…」
ムジカは説明した。ある理由に、魔界軍から酷い仕打ちをされ、復讐する為に義勇軍に入った魔界人もいるらしい。
魔界人の特徴は額に宝石がついている。額についている宝石の光に、感情が違ってくる。
宝石が青く光れば、冷静を表し、宝石が赤く光れば、怒りを表している。宝石が黄色く光れば、疑惑を抱いている事を意味している。
しばらく歩いていると、門前に行き着いた。
鉄製の門構え、解放された門には鎧姿の兵士が見張りに立ち、ムジカ達に敬礼。
解放された門の向こうには義勇軍の本部が建設され、兵士が行き交っている。
すると、門の向こうからムサシとチェルシーが門を潜り、3人の前に現れる…。
「また覗きに来たかっ!!」
昨夜の事をまだ根に持っているのか、ムサシはゼブラを鋭く睨み、刀を構える。
「あれは事故だっ!!」と、ゼブラはキッパリと答える。
「おねぇーさまぁーーーっ!!」
チェルシーはキュートな笑みを浮かべ、ユリアの大きな胸にガバッと、抱きつく。
一方のユリア。抱きつかれて気分が良いのか、優しい笑みを浮かべ、チェルシーの頭を撫でる。
「もっと、もっとチェルシーの頭を撫でて撫でてぇ…」
チェルシーは身体を左右に揺らし、嬉しい様子。 ユリアは(よしよし)と、チェルシーの頭を撫で、あやしている。
「ムサシ、これから任務か?」
ムジカは尋ねる。
「はい。昨日のチェルシーの報告に、森林地帯に魔界軍の橋が存在し、司令の命令により、橋を破壊する任務をしに行く所です…」
と、ムサシは敬礼。
場所はゼブラとユリアが降りてきた橋。今からチェルシーとムサシの二人で破壊する任務だ。
大人数より、実力者である二人に任せた方が動きやすいと、司令は判断した。
「そうか、気をつけてな…」
ムジカは言った。
「はい。行くぞチェルシー…」
ムサシはチェルシーに鋭い様子を向ける。
「あーい…」
チェルシーはユリアから離れる。
そして二人はムジカ達と別れ、魔界軍の橋を破壊する為、森林地帯方面の正門に向かうのである。
チェルシーはユリアに向かって手を振り、ムサシは未だにゼブラを睨み、離れていく…。
「今日は大事な話だ。今後の戦いに影響する話だから、時間が長くなるから覚悟しておけ…」
ムジカは渋い様子で二人に伝える。
3人は門を潜り、義勇軍の基地に足を踏み入れるのである…。




