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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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コードの強さと頭の弱さ

 五十嵐陸人と荒砂錐彦は船の衝撃を感じてすぐベッドの下へ入り防災し、揺れが収まりしばらく経ってから部屋から出た。外は物凄く冷えており、五月の昼間であるにもかかわらず吐く息が白く輝いている。何か重たい物が水の中へ落ちる様な音が聞こえたため海を見ると、船の周りの水が凍り始め地平線まで氷が張っていくという光景を目の当たりにする。

「現実世界で起きているという事は死人のナイトメアか」

「そうみたいだね。今回は海を凍らせるほどの厄介な相手だよ」

 錐彦と陸人が音のした方向へ慎重に進んでいく。すると、今度は硬い何かを叩き付けるような音が聞こえてくる。二人が物陰から確認すると、そこには姫陽と鹿の津のを生やした赤服の何かが居た。長い角のせいで中へ入れないらしく何度も打ち付けている。一見するとただの変質者だ。

「な、なあ錐彦。あれ何だ?」

「さ、さあ? 黄色いオーラを纏っているからナイトメアじゃないかなあ?」

 二人がどうリアクションして良いのか困り果てていると、鹿頭が変身を解いたらしく緑パーマの道化師へと変化していく。そして中に入っていくと代わりに麗那と悠翔、サルヴァトーレが出てくる。今度は打ち付ける音が中から響き渡り、二人は中で変身したせいで出られなくなったと解釈する。

「まぁてぇやぁこぉらぁーッ!」

 恐らく道化師もとい鹿頭の物であろう芝居がかった声が中から響き渡る。二人はバカだろあいつと心の中で思いつつ笑ってていると、再び道化師の姿に戻り脱出してくる。すると、何故か陸人達に気付き近付いてきた。

「俺様は見せ物じゃねぇーッ!」

「こっち見んな!」

 陸人がそういい放つと、目の前の変質者がパントマイムで壁を作る動きをしながら黄色い『Reindeer』のコードを出現させる。

「コォーッド・オォーン!」

 道化師が変身のワードを叫ぶと黄色の光に包まれ、鹿の角を生やしたクリスマスカラーの道化師へと変化する。ボール状の赤い鼻が輝いており、総合的に見て季節外れな歌舞伎者として存在が浮いている。

 二人はクリスマスなナイトメアの姿があまりにも衝撃的なせいで、ナイトメアに変身するという考えさえ忘れてしまった。今まで見た中でも特に笑える存在で、見た目的に害どころか戦闘力すら無さそうだったからだ。

 しかし、道化師はそんな二人甘い考えを打ち砕く様に全速力で襲い掛かってくる。二人はやっと変身する事を思い出すがもう遅かった。道化師がすでにジャンプしながら目の前までやって来たからだ。錐彦と陸人がとっさにしゃがんで回避すると、道化師が頭からスライディングしたうえに腹を思い切り床へと叩き付ける。この世の物とは思えない悲鳴をあげつつ壁に激突しダウンしてしまう。

「よし、倒すか」

「うん、倒そう」

 二人がうなずくとそれぞれ紫の『Scorpion』と迷彩色の『Arms』のコードを出現させる。

「コード・オン!」

 錐彦と陸人が同時に叫び、のびている道化師を異世界へと引きずり込んでいく。

 二人の世界が混ざり合い、地面は砂漠だがジャングルとなっている奇妙な空間が誕生する。錐彦が変身したサソリ尾状の装甲を付けた格闘家が跳びながら回転蹴りを放ち、陸人の火器を中心に装備した迷彩服の兵士がガトリングを浴びせる。

 だが、二人の攻撃を喰らっても道化師は消滅どころか粒子を出す気配すらない。そもそもかすり傷しか見えなかった。道化師がゆっくりと立ち上がると、全身の黄色いオーラが徐々に増大していく。その姿を見て二人はようやく思い出した。目の前の敵があの刻矢と同族だという事を。

 道化師の全身が光に包まれると、文字通りの光速移動で二人を沈めていく。錐彦と陸人は何をされたか解らずそのまま倒れてしまう。

「俺様は光の速さで死というプレゼントを届けるトカナ……ウボァアッ!」

 道化師が急に苦しみだし錐彦達と同じく倒れる。錐彦がふふっと笑いながら指差す。

「僕の武器には毒があるんだよ。かすっただけで動けないだろう?」

「毒だとぉッ!? そんなの卑怯――」

「ナイトメアの力を使った時点で卑怯もくそもあるかよ」

「言われてみれば、確かにそうだぁッ!」

「陸人君。それ僕の台詞だよ」

 錐彦と陸人が互いに笑うが、どちらもとどめを刺す事など出来なかった。目の前の毒を喰らった道化師も同様だ。三人とも倒れて動けないからだ。

 誰か代わりに倒してくれないかなあと錐彦が思っていた時、輝く何かが空間に無理矢理ねじ込まれてくる。光がそのまま入ってくると道化師へ突っ込んでいく。

 光の正体は柊刻矢だった。ちょうど道化師の背中に立っており、突撃の力で致命傷を負ったのか元の道化師の姿に戻り黄色の粒子が流れていく。

「二人とも何で倒れているんだ? そう言えば、鹿の角を生やした道化師見なかったか?」

 どうやら刻矢は自分で倒した事に気付いていないらしく、倒れている二人が刻矢の足元を指差す。すると、本人はおおと言いつつ道化師から飛び下りた。

「あぁ、死んでから久々に楽しかったぁ……」

 道化師は満足そうに呟くと世界から姿を消した。


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