かりそめの鎧
「よおクリス。大体二十年ぶりか?」
「そうだよ未弦。私は――」
言い終わる前に、彼方がショットガンに持ち変えてクリストファーへ向け発砲する。しかし、散弾した弾は全てドラゴンの鱗で跳弾してしまい彼方達に返ってくる。全員が跳ね返った弾を必死に回避する。
「ちっ、対ナイトメア用に改造したショットガンでも効かないか」
「彼方、あなた私達を殺す気!?」
「相変わらず血の気が多いじゃないか西区の魔女」
「あたしはなあ、前からテメェを殺りたくてうずうずしてんだよ!」
彼方が回転しながら蹴りを放つ。命中する瞬間にブーツからノコギリ状の刃が出現し、クリストファーの身体を覆っていたドラゴンの鱗に初めて傷を付ける事に成功する。そこへ続けて英理が剣を振るうと鱗が粉々に砕ける。
「ほう、やるじゃないか」
「手出ししなくていいぞクソアマ!」
「はいはい」
「じゃあ、次は俺の番だな」
未弦がクリストファーに向けて殴り付けると、鱗には何も変化が起こっていない。だが、クリストファーがよろめき氷の上に膝を付く。
「なるほど、拳法の応用か」
「その通りだクリス。お前の体内にダメージその物を浸透させた。幾らナイトメアのお前でも痛いだろ? もう一つ面白い技を見せてやるよ」
未弦が笑顔のまま両手で構えると、膝を付いているクリフトファーの胸部に向け一瞬で二度拳を叩き込む。すると、今度は心臓を押さえながら苦しみ呼吸も激しくなっていく。
「相変わらず、恐ろしいほど……精密かつ繊細な技を使うな。化け物め」
「俺の生み出す物は先人の応用でしかねえよ。だからこそ、この世界で学ぶのは楽しいんだ」
未弦が諭す様に言うと同時に、彼方と英理が弱っているクリフトファーを追撃する。二人の攻撃に鱗が徐々に剥がれ落ち、殆どの皮膚が露出していく。
「刻矢君には見せなかったが、君達相手なら仕方無い。そろそろ本気を出すか」
クリストファーの身体から鱗が皮膚ごと全て剥がれ落ち、中から背中以外が乾いた血で黒ずんだ鎧が出現する。
「ずいぶんとスリムになったじゃな――」
「くたばれインテリ野郎!」
未弦が言い終わる前に、彼方が手榴弾をクリストファーに向けて投げ付ける。中身の火薬を調合したらしく強力な爆発で未弦と英理も巻き込まれ吹き飛ぶが、彼方は二人や床となっている氷に構わずこれでもかとも放り投げる。次は未弦の造ったセキュリティを粉砕する事だけを前提に造ったライフルを取りだし、爆炎の中にいるクリフトファーに発砲とリロードを手際よく繰り返す。
「彼方、お前容赦ないな」
「そんな物あったら死んでるっての」
「じゃあ、没収するわね彼方」
英理が彼方からライフルを奪い取ると、彼方が普段の大人しい状態に戻っていく。
「あれ、勝ったの?」
「死んでないとしても、鎧のまま沈んだからしばらくは浮上出来ないだろう」
三人は勝ちを確信し、刻矢達を援護するために氷の上から去っていった。
同じ頃、氷の下には黒ずんだ鎧が無傷のまま沈んでいた。自分の重さのせいで浮上出来ないらしく、戦いを諦めたのかある場所へと進んでいく。
マリアナ海溝。インフィニティコードが眠っている世界で一番深い海を目指して――




