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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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頭の悪い戦い

 姫陽と麗那、サルヴァトーレの三人はたまたま居た悠翔も巻き込み食堂のテーブルで様々な遊びをやっていた。何をやってもやはり姫陽が圧勝しており、三人は彼女をフクロにしようと手を組んでいる。

「はい、上がりです」

「マジかよおい……」

「またヒナの勝ちか」

「どう勝つのよこれ」

 三人は笑顔の姫陽に対しげっそりとした表情だった。最初は楽しく大富豪のハズだったが、どうしてこうなったと考えている。気分転換にダウトしても敗北し、麻雀では点を根こそぎ奪われる。対戦相手の駆け引きがあまりにも上手すぎたために、三人の精神は磨り減りつつある。姫陽は可愛らしく首をかしげているだけだが。

「確かに、カジノから来るなと言われるのも納得だわ」

「またギャンブルしたのか」

 悠翔がやれやれと首を振る。姫陽と彼方の親子は、柊家の島のカジノにとって災害と同様という事で有名だからだ。あまりの勝率故に一日足らずで、身内や大富豪ですら到達出来るかどうかのプラチナの権利を手に入れてしまったほどに。

「私は悪くありませんよ。勝利さんが勝手にやって来るのです」

「なんつーツキだ。故郷でやったらファミリーに消されるレベルだぞこれ」

 サルヴァトーレが両手を叩くと姫陽が胸を張る。実際は全く褒めてないが本人が満足ならまあ良いかと、サルヴァトーレは無理矢理納得する。

 流石にもう二度とやりたくないと姫陽以外が考えていると食堂の扉が急に開く。外から冷気と共に、鼻が輝くうえに鹿の角が生えた赤服の道化師が――ドアで詰まっていた。どうやら大きな角が邪魔で入れないらしい。

「寒っ! 何よあいつ!」

「ああ、ディエス・イレのレインディアーだ。見ての通りネジの緩んだ変人さ。おお寒っ!」

「あぁーん!? だぁーれが変人だコラァーッ!」

 道化師もといレインディアーが、ドアに挟まりながらも芝居がかった声で叫んでいる。その姿を見て麗那とサルヴァトーレは震えながらも爆笑しており、悠翔に至ってはテーブルを叩きながら笑っている。

 ただ、姫陽は流石に可哀想だと思ったらしくレインディアーに近付く。

「あの、抜いてあげましょうか?」

「お願いしますお嬢ちゃん」

 姫陽がとりあえずレインディアーを押し出すと、抜けた勢いが強かったらしくそのまま海へと落下していく。姫陽が手を伸ばそうとするがもう手遅れで、レインディアーは手を掴めず「あーれー!」という間抜けな声と共に海の中へと沈んでいった。

「とりあえず、浮き輪だけでも投げましょうか」

 姫陽が紐付きの浮き輪を投げると、レインディアーが海の中から手を伸ばし掴まる。口の中から海水と無数の小魚をポンプの様に吐き出しつつ、崩れたメイクのまま笑顔で手を振っている。

「あぁーりがとぉーうっ!」

 姫陽も笑顔で手を振り返す。しかし、引き上げる方法が無いため困り果てる。すると、レインディアーは海を凍らせながら浮かび船に氷柱を作りロッククライミングしていく。

 完全に登りきったレインディアーは、姫陽にハイタッチしてから再び麗那達の居る部屋へと侵入を試みるが角のせいでやはり失敗する。

「入りたいんだったら変身解けば良いじゃない」

 麗那が呆れながら呟くと、レインディアーはその手があったかという表情で変身を解いて侵入する。そして再び変身し今度こそ麗那達に襲い掛かるが外に逃げられ、またしても角が引っ掛かってしまい今度は食堂から出られなくなる。

「バカだろこいつ」

 悠翔が向けて指先にライターサイズの火を灯すと、ずぶ濡れのハズのレインディアーが一気に燃えて悶える。流石に熱かったらしく、身体中から吹雪を出して無理矢理鎮火させる。

「炎が消えただと!?」

「きぃーかねぇーぜぇーッ!」

「いや、確かに苦しんでただろ」

 姫陽以外の三人がレインディアーを白い目で見つめている。こいつ実はものすごく弱いのではないのかと、三人とも同じ事を考えていた。


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