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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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雪原の道化師

 刻矢がクロエとノエルを優しく撫でると、二匹は喜びながら鳴いて寄ってくる。しかし幾ら待っても姫陽や麗那、悠翔が帰ってこない。刻矢は不信に思い二匹を連れて出る事にした。

 部屋を出ようとすると、クロエとノエルが肩で仲良くスタンバイする。とうとう最後の良心のノエルすら肩に乗る様になったかと、刻矢は諦めて二匹の重みに耐えつつ歩き始める。二匹は応援する様に鳴き刻矢を進めていくが、流石に耐えきれず通路で倒れてしまう。

「せめて片方抱っこにしろ」

 クロエが刻矢の前にやって来る。どうやら定位置をノエルに譲ってあげるらしい。刻矢は再び立ち上がりクロエをぬいぐるみの様に抱っこしつつ歩く。

 甲板に着くと二匹は床に飛び下り仲良く遊び始める。刻矢はじゃれている二匹を見守りながら壁際で座ろうとすると、船体がいきなり激しく揺れる。刻矢はスライディングしながらクロエとノエルをキャッチすると、全速力で甲板から離れていく。

 揺れが収まったが刻矢は不信に思う。ルートで座礁する場所は無かったハズだと。ならばこれは――

「ヒェーッヒェッヒェッヒェッ! 俺様遠路はるばるやって来たぜぇーッ!」

 何者かの愉快な声が上へと近付いてくる。甲板に何かが登ってくると刻矢はそう感じた。まだ五月であるにもかかわらず、漂う冷気と何かが凍り付く音。空間に変化が見当たらないため、刻矢は相手が死人――ジェネシスナイトメアだと判断する。

 相手の力は氷か。悠翔の方が相性は良いものの、彼が船ごと炎上させたら航海に支障をきたすかも知れない。刻矢はそう考え一人で戦う事にした。

 ついに相手が甲板にやって来る。

 外見は長身の道化師。花の様なフリルと緑のパーマ、白い顔のメイクと赤い付け鼻が特徴的だ。

「邪魔しにきたぜぇーッ! カラドリウスゥーッ!」

 やたら声の通っているうえに延ばす芝居がかった口調のせいか、刻矢は相手に対し道化師より歌舞伎役者の方が似合っているのではないかと考える。

 道化師がパントマイムで壁を作るように手を動かすと、目の前に黄色の『Reindeer』というコードが出現する。刻矢も右手を動かし、ダイヤモンドの様に輝く『Caladrius』のコードを呼び出す。

「ハイパーコード・オン!」

「コォーッド・オォーンッ!」

 二人が光のオーラに包まれ、戦闘により特化した姿へと変身していく。

 オーラが消えると刻矢は宝石の様に輝くコードと金のアヌビスの首飾りを装備し、片手に白の銃と剣を構える。

 相手の道化師は赤をベースとした別の道化師の服を着ていた。頭にトナカイの角が生えている事と鼻が輝いている以外はほとんど人間の姿と大差無い。

 道化師が手品の様に金貨を出現させ刻矢に向けて親指で弾く。刻矢は簡単に回避しようとするが、金貨が物理法則を無視したカーブをしつつ刻矢の腹にクリーンヒットする。

「地味に痛いぞこれ」

 一発では大したダメージではないものの、金貨の弾丸にはホーミング性能がある事を刻矢は理解する。道化師が次々と金貨を弾いていく。刻矢は剣で叩き落としつつ銃で反撃するが、アクロバティックな動きで回避されたうえに落とした金貨が一斉に襲い掛かってくる。

「く、流石に一斉は痛い。こいつ攻撃自体は弱いが地味に強いぞ!」

 道化師が手をかざし袖から吹雪を発生させる。甲板が雪で積もり、刻矢は突風で吹き飛ばされそうになる。クロエとノエルを通路に避難させると、刻矢は再び道化師に向かっていくが――

「居ない!?」

 道化師は吹雪と共に居なくなっていた。刻矢は雪に足を取られつつも歩いていくが気配を感じない。

「しまった、逃げられたか」

 刻矢は襲撃を伝えるべく操縦室へと向かった。


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