不屈の闘志と真のイマジナリゼロ
柊刻矢は敵を倒し続け時間が経つ度徐々に疲弊していった。クロスの天罰に加えてスコーピオンの毒。更には半永久ダイナモが放つエネルギーを受け続け、イマジナリゼロすらも維持出来なくなる。
今は何とかイマジナリゼロの時に受けたダメージをエネルギーに還元し、カラドリウス・イマジナリの状態で戦っているがそれでも善戦と呼べる物では無かった。スコーピオンを潰そうとする度にクロスの防御力が邪魔をするからだ。そこから更に二種類のナイトメアによる追い打ち。刻矢はついにカラドリウスまで退化してしまう。
「ほらほら、イマジナリゼロでも普通のオリジナルやジェネシス相手でも負けているじゃないか」
ネオの言葉で刻矢は焦っていた。イマジナリゼロどころかイマジナリにすら変身できない。つまり、その先はコードの破壊――柊刻矢の死が待っている。
刻矢はカラドリウスのままスコーピオンとクロスに向かうが、身体はボロボロで満足に動く事すら出来ない。アヌビスの首飾りはすでにダメージのキャパシティを超えておりヒビが入っている。それでも刻矢は相手に立ち向かう。再び姫陽達と会うために。心が二度と敗北しないために。
アークに抗うと決めた刻矢でもついに倒れてしまう。カラドリウスの身体すら維持出来ず、柊刻矢という一人の少年へと戻っていく。力無く這おうとするが、もはや指先すら動かない。
「これが君の限界だ柊刻矢。僕が手を下さなくても君は勝手に死ぬ。そうだろ?」
刻矢はもう立ち上がれない身体が、最期が刻一刻と近付く今ですらネオを睨んでいる。心が折れなければ何度でも戦える。未弦と輪廻さえいれば、セフィロト社の信用は一気に失墜する。たとえ死んだとしても仲間がネオに勝てば良い。今の刻矢は恐怖の中でも希望を持ち続けていた。
「もう良いや、刻矢のコードを砕いてしまえ」
柊刻矢は無数のナイトメアに襲われ肉体に限界が来ていた。身体から純白の粒子が流れていく。ナイトメアとしての死が近付いているらしい。
しかし、刻矢は最期まで笑っていた。希望を捨てずにずっと。すでに願いは叶った。ならば、もう思い残す事は無いと死をまっすぐ見つめ覚悟している。
『お前は本当にそれで良いのか?』
存在が薄れゆく刻矢の身体から男の声が聞こえてくる。刻矢はこの問い掛けてくる声に覚えがあった。
「カラドリウスか?」
『お前は願いを確かに叶えた。だが、その先は見たくないのか? 姫陽や麗那、悠翔だけではない。陸人や錐彦も先へ進もうとしている。お前はここで立ち止まる人間だったのか?』
「嫌に決まってるだろ。俺だってあいつらと一緒に行きたい。だが、もう無理だ。コードすら使えない状況だから」
カラドリウスの言葉は刻矢の望みを的確に突いている。しかし、身体はいう事を聞いてくれない。刻矢は悔しかった。再び負ける事ではなく、こんな場所で姫陽達と会えなくなる事が。孤独のまま死ぬ恐怖はアフガニスタンで経験している。
それでも、今の刻矢には現状を変える力は無い。このままでは、幻かどうかも解らないアークに殺される。刻矢の生命を維持しているカラドリウスのコードを破壊されれば今度こそ死ぬ。
『自分自身を信じろ。俺はお前の翼だ。俺が折れない限り、お前は新たな翼で何度でも飛べる』
何度でも飛べる。カラドリウスの言葉を信じ刻矢は飛ぶイメージを思い浮かべる。コード――カラドリウスは翼。何処までも力強く羽ばたける翼だ。更なる翼を――俺に更なる力を!
刻矢の求める強い意志に反応し、体内にある三つのコードが襲い掛かるナイトメアを全て羽根を纏った突風で吹き飛ばしていく。三つのコードが一つになり身体の中へ戻ると、柊刻矢という存在を再構築していく。傷が時間を巻き戻すかの様に塞がっていき痛みも無くなっていく。
刻矢は立ち上がる。三つのコードを融合させた新たなカラドリウスコードを出現させる。コードは透明で、ダイヤモンドの様に目映い輝きを放っている。
「ハイパーコード・オン」
刻矢の身体から宝石の様な光が溢れてくる。光は全身を包み込み、服は煌めくコートへと変化する。右手には銀色の長剣、左手にも剣と同色の長銃を装備している。
刻矢はクロスを鎖ごと剣で真っ二つにし、飛び掛かってくるスコーピオンを銃で全て撃ち落とす。戦闘経験のある敵のためか完全に見切っており、次々と相手を捌いていく。
更に刻矢は剣と銃を合体させて銃剣に変化させネオを斬り付ける。するとネオはガラスの様に砕けつつ笑顔のまま霧散していった。
「イマジナリゼロを使ってない偽物とはいえついに、ついにネオに勝った!」
刻矢はあまりの嬉しさにガッツポーズを決める。幻とはいえ恐怖の象徴克服した刻矢にとって嬉しい事だった。
「ありがとな相棒」
カラドリウスのお陰で吹っ切れた刻矢は、更なるステージヘ向かうため修行を続行する事にした。




