表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
81/104

蘇る等身大のヒーロー

「姫陽は?」

「寝ちゃったわ」

 柊未弦と柊彼方がリビングのソファに座っている。彼方は膝で眠っているクロエとノエルを優しく撫でつつ微笑む。

「ねえ未弦。刻矢は誰にやられたの?」

「南区のセキュリティを調べた結果、最後に識別したコードはカラドリウスとアーク。奴だ」

 彼方がアークというコードで思い出す。過去に刻矢がイギリスでセフィロト社の社長と戦い敗北したという事を。使うコードはアークで、全ナイトメアの能力が使える存在だと言っていた。

 彼方は思わず震えてしまう。まさか、イマジナリゼロを習得した刻矢すら倒してしまう化け物だとは思っていなかったからだ。アークを倒すためにイマジナリゼロという力を手に入れたハズが敗北した。ならば誰も勝てない事を意味している。

「クリスの野郎、とんでもない化け物を生み出しやがって……! こうなったら、インフィニティコードを手に入れる以外奴を倒す手が無いぞ」

「未弦、確かあのコードは……!」

「ああ、インフィニティコードは二度と人の手の届かない所に俺が捨ててきた。もし世界に第二第三のクリスが現れたとしても、かつての星神町の悲劇を繰り返さないために」

 未弦は思い出していた。クリスが彼方を世界初のナイトメアに変えてしまったあの悲劇を。星神町が地獄絵図となった光景を今でも忘れていない。かつてコードを生み出したあげく、友を止められなかった過ちを今でも忘れる事が出来るハズもなかった。

 クリスはインフィニティコードの魔力に取り憑かれ変わってしまった。元々あったクリスの野心だけでなく、インフィニティコードその物から発生した自我によって。今でも悔やんでも悔やみきれない。

 だからこそ未弦はインフィニティコードが破壊出来なかった。あの時は、飲み込まれる前に捨てるしか方法が無かったからだ。

 世界平和の架け橋として人と人との心を繋ぐために作ったハズが、自他の人間性を喰らう化け物へと変えてしまうという。製作者の一人である未弦ですら制御不能の兵器へと変貌しまった。もしくはナイトメアコードを生み出す機能自体が、人のエゴを多く知ったインフィニティコードの自己進化なのかは未だに解らない。

「インフィニティコードは何処にあるの?」

「世界一深い海――マリアナ海溝だ」

 未弦はインフィニティコードの隠し場所に自信があった。何故ならば、マリアナ海溝――正確にはその中でも特に深いチャレンジャー海溝だが――は水圧が特に強い場所だからだ。

 更に未弦はインフィニティコードが二度と浮上しない様に様々な細工を施していた。まずはコードその物に、柊家の技術で硬くて重たいという点を両立した物質でコーティングしてある事だ。

 極めつけは、潜水艇では近付けない様に半永久型の妨害装置を設置。これはインフィニティコードを除いた、全てのコードの力を強制的に解除してしまう機能もある。ジェネシスナイトメアが近付いただけで即死するうえにコードの力すら通用しない。中身のインフィニティコードですら外への干渉が不可能だ。

 そこまでして捨てた物を果たしてサルベージしても良いのかと未弦は考える。人の手に余るからこそ未弦は放棄した。

 いっそのこと第二のインフィニティコードを作る事も考えたが、未弦はこの考えを即座に否定する。また初代インフィニティコードと同じ結果になるかも知れないと思ったからだ。

 今の未弦は父親としても科学者としても手詰まりだった。どうすれば打開出来るのか考えても良い案が浮かばない。そこで未弦はある決断をする。

「彼方、俺は刻矢を連れて柊家の島へ行ってくる。インフィニティコードも何とかしてみせる」

「未弦――」

「勝算が無いなら上等だ。それを無理矢理でも作り出すのが俺達科学者なんだよ」

 未弦の瞳に情熱の炎が宿る。そんな彼の姿を彼方は知っていた。最後までナイトメアとなった自分を見捨てず救おうとしてくれた、かつての等身大のヒーローの眼差しだ。

 彼ならばきっと刻矢や世界を救ってくれる。彼方は未弦を妻として、彼に憧れたかつての少女として信じる事にした。

「無理しないでね」

「ああ。刻矢を必ず連れて帰ってくるぞ。だから、この家と姫陽はお前に預ける」

 未弦は妻と自身に誓い再び懐かしの戦場へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ