失われた希望
刻矢もネオと同じくイマジナリゼロを発動させる。ベルトに変化したゼロコードにイマジナリコードの鍵を挿し込む。
刻矢は信じられなかった。誰かと繋がる事で使える力――イマジナリゼロをネオが使えるという事実に対して。迷っていられない。ネオは今倒さなければいけない相手だ。
「ハイパーコード・オン!」
刻矢が光に包まれ一気に変化していく。イマジナリゼロの力で強化された刻矢はネオに先制攻撃を仕掛ける事にした。背中から翼を生やし上昇するとネオ目掛けて両足で蹴りを放つ。ネオとの距離が縮まりついに命中したかに見えた。
「な――」
だが、変化したネオは刻矢の蹴りを片手で受け止めていた。刻矢はクロスにすら止められた事の無かった蹴りが効かない事に激しく動揺する。
「その程度かい柊刻矢」
ネオが年相応の子供らしく笑う。
外見は輪と翼が金色に変化しているだけで特にイマジナリゼロ前と違いは無いが、イマジナリゼロ化した刻矢の勢いをつけた攻撃すら片手で封殺してしまう力をネオは持っていた。ネオはそのまま刻矢を振ると地面に向けて投げ付ける。
刻矢は地面に激しく衝突しコンクリートにめり込んでしまう。それだけでなくイマジナリゼロの状態で初めて動けないレベルのダメージを受けた。あまりにも信じられない事実に刻矢は驚きを隠せない。
ネオが地上に降り刻矢を見下ろす。
「何故……お前がイマジナリゼロを?」
「ちょっと裏技を使ったんだよ。クリストファーは不可能だと言ってたけどさ、僕に掛かればどうという事は無かった」
ネオが語り始める。イマジナリゼロに至る方法はまだあったのかと刻矢は考えるが答えは出ない。何故ネオがイマジナリゼロに耐えつつ、より使いこなしているのかという所も理解が出来なかった。
「この世界の人口って知ってるかい? 約七〇億人だ。僕達セフィロト社は国境や文化、宗教すらも越えてサービスをしている。日用品から食品、兵器――そしてナイトメアコードもね。つまり、僕達は世界中の人達から信用されているって事さ」
ネオの言葉で刻矢はどうやってイマジナリゼロに至ったのかを理解するが、同時にそんな事が実現するなんてあり得ないと考える。ネオのイマジナリゼロが実現可能ならば、誰もアークというナイトメアを倒せない事になってしまう。たとえどんなナイトメアがイマジナリゼロに到ったとしてもだ。
刻矢は戦う相手の強大さに絶望してしまう。最初から勝ち目の無い戦いをしていた事を理解する。ナイトメアコードの流出は誰にも止められない。海に水をかける様な物だと刻矢は考えた。
「理解したかい刻矢。これが真の絶望だ」
刻矢の表情に満足したネオが目の前に槍を出現させる。右手に構えて振り下ろすと刻矢の胴体に突き立てた。
刻矢はあまりの激痛に呻き苦しみ喋る事すら出来ない。槍の力によって痛覚は更に増していき全身を蝕んでいく。
「これがクロスが使う能力の応用だ。身体の中から痛みに支配される感覚はどうだい?」
ネオが槍を抜いて白の光へと霧散させる。同時に刻矢の身体から多くの血が溢れ出す。イマジナリゼロが消え痛覚が激しさを増した刻矢がのたうち回る。
「まあ、とりあえず治しておくよ」
ネオが白い炎で刻矢を焼き尽くす。刻矢は悲鳴をあげながら苦しみ灰となり、再び人間の姿へと戻っていく。
「これは最後通告だ柊刻矢。仲間を巻き込みたくなければ僕達に逆らわない事だ」
無垢な天使が囁く様に語りかける。ほとんど意識を失いかけていた刻矢は、ネオという恐怖に屈服してしまう。恐怖は乾いた叫びとなり、心の中で何度も虚しく反響していった。




