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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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もう一人の到達者

 神宮寺邸の庭で刻矢と姫陽、麗那は猫のクロエとノエルの二匹と一緒に遊んでいた。クロエはみずから麗那へ歩み寄る様になり、ノエルと共に麗那の膝へ乗って仲良く遊んでいる。

「結局クロエちゃんは麗那さんの何が気に入らなかったのですかね?」

「クロエの事は俺でも解らない」

 刻矢と姫陽は麗那の膝に居るクロエとノエルを優しく撫でる。二匹は気持ち良さそうに鳴きつつ擦り寄ってくる。

 可愛いじゃないかと刻矢は考える。二匹は同じ親猫の間に生まれた姉妹で、クロエは母の彼方から譲られた相棒だ。最初の人見知りが激しかったのが嘘みたいだ。嫉妬深いし頭も良く切れる。本当に猫なのか疑わしくなる程に。

「姫陽、麗奈。そしてクロエとノエル。お前達はいつでも俺の側に居てくれるか?」

「大学行くまでは星神町から出ませんよ」

「あたしは刻矢と側に居るわ」

 姫陽と麗奈。そしてノエルは刻矢に前向きな返事をする。

 しかし、クロエの鳴き声は消極的だった。刻矢と一緒に居たいがいつまでもとはいかない。クロエは両親を失っているからこそ知っていた。人の一生と猫の一生は違うという事を。

「クロエ、お前泣いているのか?」

 刻矢がクロエを撫でるが、クロエは刻矢を見つめたまま悲しそうに鳴いている。刻矢にはどうしてやる事も出来ない。クロエの言葉が解らないからだ。

 それでも、身を案じている事は刻矢でも理解出来た。今まで七年間苦楽を共にしてきた相棒だから解る。気を使われているのだと。

「そうだクロエ。一緒にこの町を冒険しよう。ここでも新たな発見があるかも知れない」

 刻矢の言葉にクロエが肩へと飛び乗る。クロエは頬に擦り寄ると明るい声で鳴き出す。もう二度と刻矢を心配させないために。刻矢の心が折れてしまわない様に。刻矢の今までを知っているため一緒に居たいと願っていた。

 刻矢はまずクロエと活気のある東区へ行った。様々な人種の人達が居る区画で、中にはショーをやっている者達も居る。刻矢とクロエは旅をしてきたためか賑やかな場所には慣れており、近付いてきた住民にクロエを撫でられたり外国の言葉で世間話したりするのも平気だ。

 刻矢達は辺りが夕日になったため家に帰る事にした。電車に揺らつつ北区に戻り今日の事を姫陽と麗那に報告する。刻矢は今の日々が――時間がずっと続けば良い。そう考えていた。

 駅を降りた刻矢は歩いて帰っていく。いつまでもクロエと一緒に居よう。刻矢はそう思いつつ夕日の世界を進んでいった 。

 すると、空から光輝く何かがこちらにやって来る。刻矢は一瞬隕石か何かだと考えるが即座に否定する。まさか、もうやって来たのかと思うと頭が真っ白になる。

 刻矢はとっさに携帯を取り出しメールを一斉送信していく。内容は『最悪なナイトメアが出た。絶対に戦うな』というシンプルな物だ。空からきた白い光が刻矢を照らしつつ追い掛けてくる。刻矢は全速力で逃げるものの距離は徐々に縮められていく。

「クロエ掴まってろ」

 刻矢はクロエを左手で抱っこすると、走りつつ右手から純白のコードを出現させる。

「間に合え、コード・オン!」

 刻矢は光に包まれ姿を変えていく。相手の光が目と鼻の先まで追い付いてくる。衝突寸前に刻矢は翼を生やしギリギリのところで光を回避する。高速飛行で素早く逃げるが光は何処までも追い掛けてくる。今のところ追い付かれる様子はないが刻矢は焦っていた。

 アフガニスタンの後で起きたもう一つの悪夢を繰り返すわけにはいかない。刻矢は南区まで飛行し敵を出迎える事にした。


 たどり着いたのは柊家所有の飛行場。ここならば戦っても被害が出ない。刻矢はクロエを一度放し光に向かって飛んでいく。予想が外れていなければ相手は厄介な存在だ。

 しかし、今ならイマジナリゼロという切り札がある。あの時と違い勝率はゼロではないと刻矢は考えていた。光を黙視可能な距離まで近付くと正体が見えてくる。

 その姿は全身純白で、頭に輝く輪と背中に七対の翼を生やした少年だ。姿は正に天使その物で神々しさと威圧感を放っている。

 天使が指を向けると光の粒子が集まりビームとして撃ってくる。刻矢が避けるとビームによって地面が切り裂かれる。次に背後を見ると滑走路は赤く溶け深くまで抉られていた。

「どうやら以前より力を増した様だね。さて、再会の挨拶といこうじゃないか柊刻矢」

「アーク――いや、ネオ・アダムス……!」

 セフィロト社社長の降臨に刻矢は驚きを隠せなかった。何故ならば、セフィロト社の本社はアメリカ――日本から時差で十数時間はある。遠く離れた島国に自らやって来るとは刻矢ですら予想が出来なかった。

「何をしに来た」

「君を倒しに来た」

 ネオが拳や蹴りの動きに合わせて光線を放ってくる。刻矢は連続で回避しつつ距離をつめていく。

 すると、ネオは指を鳴らし青のコードを複数出現させる。それは刻矢も見た事がある『Bat』のコードだった。ネオが自身の光のオーラを無数のコードに分け与えると具現化し、剣と盾を装備した鎧姿にコウモリの翼を生やしたナイトメアが誕生する。無数のバット達が刻矢に向かい襲い掛かるが、刻矢は背中から羽根の弾丸と光線を放ち凪ぎ払う。

「なるほど、次はこれかな」

 ネオが二回指を鳴らすと刻矢にとって信じられない物が出現する。『ZERO』と『imaginary number』のコード。あり得ない。あの力をネオが使えるハズがない。刻矢はそう思っていた。

 ネオはコードが変化したベルトを腰に装着しつつ白く輝く鍵を握る。更にベルトのバックル部分を展開し鍵を回してから再び閉めた。ネオの表情は優しい笑みに満ち溢れている。

「ハイパーコード・オン」

 ネオの一言で夕闇の世界は輝き昼間の様に変化した。




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