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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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見かけ倒しの幹部

 刻矢以外の二人が一度変身を解除すると、世界が砕け散り景色が星神町の物へと戻る。

 どうやら姫陽達はまだ戻っていないらしく、近くの空間が未だに歪んでいる。

「結局麗那に美味しい所を持っていかれた」

「そうだね」

「あたしもう動けないわよ」

 麗那は近くにある家の塀で休んでいた。タキオンのコードは速度に特化している代わりに反動が凄まじいらしく、激しい疲労が汗となって表れている。

 イマジナリゼロに近い強さのコードを生み出した願いは何だと思いつつ、刻矢は戦えなくなった麗那を鉤爪の手のまま優しく撫でる。

「さて、俺は加勢してくるか。錐彦、お前は保険として残ってろ」

「まだ暴れたりないけど、今回は君に従うよ」

 錐彦は麗那の側で周囲を見張る事に決めた様だ。

 刻矢は錐彦の言葉にうなずくと、歪みの中へと無理矢理入っていく。

 刻矢が入った世界は悲惨な光景だった。明らかに自然の物ではない穴が多い荒野が広がり、何らかの要因で破壊された形跡がある。

 ある方向から爆音や銃声が響く。今居る地点からそう遠くない事を理解した刻矢は、七対の翼を生やし音の方向へ向かう事にした。

 爆音の発信源に到着し上空から見た光景は、無数の触手が生えた泥の塔に仲間達が攻撃しているという物だ。泥自体が紫のオーラを纏っており、刻矢は泥をナイトメアと認識する。

 相手はまだこちらに気付いていない。ならばと刻矢は一気に上昇し、上空からの加速を加えた鳥の足による蹴りを泥の塊に叩き込もうとするが――

「そいつを蹴るなトキ!」

 悠翔の叫びでギリギリ泥へ蹴りを命中させる前に回避する。

 泥が触手を振り回しながら刻矢に接近してくる。触手を回避しつつ掌に二丁の銃を出現させ発砲するが、弾が全て泥の中に飲み込まれていく。

「なるほど、物理攻撃が一切効かないのか。蹴らなくて良かった」

 銃が効かないと解った刻矢は、距離を取り翼から無数の光線を放つ。

 しかし、泥に穴を開けただけですぐに再生されてしまう。刻矢はとうとう諦め、仲間達が居る場所へと降り立つ。

「策が尽きた」

「刻矢でもダメだったか」

「兄さん使えませんね」

 姫陽と陸人の言葉に反応した刻矢は、イマジナリコードを出現させる。コードは鍵へと変化し、アヌビスが彫られた首飾りに鍵穴が出現する。

「おい、トキ。今さらイマジナリコードで何をするつもりだ?」

「とりあえず斬ってみる」

 刻矢が鍵を回すと、『Unlock』という機械的な声と共に全身が白く輝きカラドリウスとしての姿を変化させる。

 全身が機械的なフォルム――カラドリウス・イマジナリへと変化した刻矢は、胸部の鍵を一回だけ回す。すると、白く発光する剣が両掌から出現する。

「イマジナリチェンジ」

 刻矢は泥に向かって斬り付ける。フェニックス――悠翔の再生能力を炎ごと無効化した武器なら斬れるハズだと思っていた。

 だが、期待に反して剣が泥の中にはまり引きずり込まれていく。刻矢はさっさと剣を捨て退避する。

「こいつ、イマジナリチェンジが効かないのか。オーバードライブは恐らく効かない。ならば、今まで役立たずだったあれを使ってみるか」

 刻矢は鍵を三回回す。すると、今度はホログラム状の透明な剣が二つ出現する。

「マイナスイマジナリチェンジ」

 刻矢はやる気の無い声で宣言する。

 マイナスイマジナリチェンジ。刻矢がこの技を使いたくなかったのは理由があった。

 一回で相手の能力を斬るイマジナリチェンジ。二回でカラドリウスの時に回復したダメージを攻撃力にするマイナスチェンジ。そして、四回でカラドリウス・イマジナリの必殺技を発動するオーバードライブ。イマジナリコードから変化した鍵は、回す回数でそれぞれ役割が決まっている。

 しかし、三回のマイナスイマジナリチェンジは何かを斬れた試しがない。物質やナイトメアを斬ってもすり抜けてしまうという特性はあるものの、刻矢にとっては今まで何の役にも立たなかった。父の未弦に聞いてもいつか解るとしか言わない未知の力だ。

 万策が尽きた刻矢にはこれしかすがる物が無い。だからこそ、諦めムードで泥を斬ってみた。

 すると、泥が川を渡ったモーゼの言い伝えの如く一気に割れていく。

 刻矢は正直驚いた。使えないと思っていたマイナスイマジナリが効いている事実に対して。

「い、痛い……」

 泥の怪物――ソイルが初めて人間らしい苦痛の言葉を発する。同時に、刻矢が斬った場所にソイルが吸い込まれていく。

「何だこの力は? 今までこの剣で何かを斬れた試しがないのに」

「恐らく、本来ならば斬れない物だけを斬る力です兄さん。兄さんは泥と一緒に空気も斬ったのでしょう。真空になった場所に、あのナイトメアが引きずり込まれたのだと考えられます」

 今までそんな現象が起きなかったのは、固形物ばかり斬っていたからだろうと刻矢は理解する。

「まさか、条件付きの力があるとは」

 刻矢は真空にはまってしまったソイルを何度も斬り付ける。斬った場所から紫の光が粒子となり流されていく。

 泥が完全に無くなると、泥があった場所から掌サイズで人の形をした埴輪に似た何かが現れる。

「ほう、お前が本体か」

「よくも私達をこけにしてくれましたね」

「よし、倒すか」

「俺ですら知らなかったぜ。人間としてのデカさに反して、ナイトメアの身体はずいぶんと小さいじゃないかソイル」

 刻矢達は一斉に本体の土人形を何度も踏み潰す。土人形が悲鳴をあげつつ粉々になると、一気に紫色の光へと霧散していった。

 刻矢達は変身を解除し、元の世界へと戻っていった。


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