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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
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調子に乗るカラドリウス

 姫陽にようやくリリースしてもらった刻矢は、ボロボロの状態のままクロエを肩に乗せて町を歩いていた。今のままでは姫陽にすら勝てない。短期間でカラドリウスの力を取り戻すにはどうすれば良いか、今の刻矢には全く解らなかった。

 クロスの時とは違い、カラドリウスのコードその物は使える。だが、身体がコードの力に追い付いていない気がする。本当にイマジナリゼロで体力を消耗した事が原因なのかと、刻矢は改めて自身の身体の不調について考え直す事にした。

「ようトキ」

「ユウか」

 向こう側から親友の五代悠翔がやって来る。同じく死体ベースのナイトメア――ジェネシスナイトメアならば何か解るかも知れないと、刻矢は思い切って相談する事にした。

「それって多分身体の不調じゃ無いぞ? むしろその逆じゃないか?」

「詳しく聞かせてくれ」

「トキ、お前は弱くなったから戦えなくなったんじゃない。お前が強くなり過ぎて脳と身体が追い付かなくなったんだ」

 悠翔曰く、脳と身体は密接な関係で繋がっているらしい。刻矢はそれくらいの事は知っていた。

 ただ、刻矢の場合は記憶を取り戻した事により、カラドリウスは真の姿を取り戻し強くなった。

 それだけで済めばまだよかったが、悠翔による一度の死とカラドリウスの真の能力で強化されて復活。

 更にはイマジナリゼロによる強化。短期間で三回も強化してしまった刻矢は確かに強化に耐えうる脳や肉体は手に入れたものの、劇的な変化でナイトメアとしての感覚と人間としての感覚にズレが生まれてしまったらしい。

「どうすれば良い?」

「イマジナリゼロを実戦で使い続けて慣らすしか無いんじゃないか? 痛いから正直止めて欲しいが、たとえば死なない俺をサンドバッグにするとか」

 しかし、悠翔の願いも虚しく刻矢はイマジナリゼロに必要な三つのコードを出現させる。金色に輝く『ZERO』のコードを両側にグリップの付いた楕円形の物質に変化させて腰に装着すると、楕円形はバックルとなりベルトが腰に巻き付く。

 更に『i』を象った透明な鍵と純白に輝く『Caladrius』のコードを融合させ、先端が変化し純白に強く輝く鍵に変わる。

「ハイパーコード・オン!」

 刻矢はバックルの両側にあるグリップを掴み開くと、鍵穴を挿し込み回してから再びグリップを閉じる。光に包まれ、封印してきた力が再び解放されていく。

 刻矢は再びイマジナリゼロの力を手に入れていた。髪と服装は純白となり、全体的に鳥をイメージさせる物に変化する。瞳は月に似た色で、刻矢を見た者に対し何処か恐怖に近い威圧感を与える。

 クロスの時と違う点は、右腕に銀色の腕輪を付けている事だけだ。

「おお、腕輪のお陰もあるのか身体が楽になった」

「おい、いきなり使うのかよ……コード・オン!」

 悠翔も燃え盛る『Phenix』のコードを出現させつつ変身用のワードを叫ぶ。コードに全身を紅蓮の炎に焼き尽くされ、一度灰となってから真紅の鳥人――フェニックスが形作られていく。

「さあ来いト――」

 悠翔が言い終わる前に、刻矢は既に顔面を殴って言葉を無理矢理キャンセルさせた。あまりの衝撃で地面に何度もバウンドし転がっていく。

「なるほど、この町は殴っただけでは壊れないのか。ならば――」

 刻矢は背中に七対の翼を生やし、一瞬で悠翔へと接近する。あまりの速さに悠翔は回避行動すら取れず、刻矢に両足で蹴られ町の最果てにある壁まで吹っ飛んでしまう。

「なるほど、これが今の俺の力か。確かにズレが生まれてもおかしくないな」

 そう言っていると、悠翔を吹き飛ばした方向から真紅の炎が壁となり刻矢へ迫ってくる。

 しかし、悠翔の力すらも蹴りだけで蝋燭の火の様にかき消してしまう。炎の壁と一緒にやって来た悠翔は目の前の現実に固まってしまい、刻矢に何度も蹴られ続け痛みのあまり変身を解除してしまう。

「トキ、少しは手加減しろ……」

「イマジナリゼロ。わりと使え――」

 刻矢は続きの言葉を紡ごうとするが、イマジナリゼロを構成しているコードが元の三つに戻り強制的に変身が解除される。刻矢は全身の力が抜けてしまい、悠翔と同じく地面に倒れてしまう。身体を動かそうとするもびくともしない。

「――ないな。クロスの時より変身時間が短い」

「はしゃぎ回るからだ」

 追い付いてきたクロエが呆れた声で鳴く。二人は柊未弦と泉警視が見付けてくれるまでの間倒れ続けていた。


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