表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
終わる世界と始まる世界
68/104

再来する脅威

 柊兄妹は自分達が所有する人工島から帰った後、用事のある両親や家に帰る麗那と一度別れて星神町の屋敷でくつろいでいた。

 やはり本邸の城よりこの屋敷が落ち着くらしく、二人と二匹はリビングに集合しそれぞれのソファの上で伸びている。

「やはりここが一番ですね」

「そうだな」

 刻矢が姫陽の言葉を素直に肯定する。

 家を空ける日の方が多かった旅人の刻矢と猫のクロエでも、心の中ではここを家だと思っていたらしくリラックスしている。

 ただ、同じく家に居るノエルはクロエと姉妹ではあるものの、元々ここの猫ではなく彼方の屋敷兼仕事場に住んでいる猫だ。彼女がくつろいでいるのは、単純に刻矢達とクロエが大好きだからだ。

「暇だなあ」

「そうですね兄さん」

 刻矢はリモコンを掴みテレビの電源を入れる。臨時ニュースが入り、星神町の西区で通り魔事件が起こったらしい。死者は一五人。

 刻矢はまた西区で死者かと思いつつ番組を変える。そこまで興味を持たなかったのは、西区では母の彼方の機嫌を損ねた場合も含めて裏組織の抗争など珍しくもないからだ。

 刻矢はお気に入りのイギリスバラエティを選択する。日本の勢いだけな世界に通用しそうに無いコントとは違い、スパイスのきいたジョークと世間話で観る者を笑わせる番組だ。

 ただし、刻矢は落語等の古き良き日本の笑いだけは気に入っているためたまに観る事もある。

 しかし、姫陽に横からリモコンを取られ世界の旅番組へと変えられてしまう。刻矢は最初不満な表情になるものの、まあ良いかと姫陽にチャンネル権を譲る事にした。

 二人と二匹は旅番組を観ながら数時間を過ごしていた。面白くなる所で家のチャイムが鳴ったため、刻矢は機嫌を損ねながらも玄関に向かった。

 ドアを引くと、そこには泉警視とその部下が居た。また面倒な奴が来たと思いつつ、刻矢は早く済ませて再びテレビを観るため嫌そうな顔で出迎える。

「ずいぶんと機嫌が悪そうじゃないか刻矢」

「当たり前だ。休みにまさかお前の顔を見るとは思わなかったんだ」

「その言葉、そっくり返してやる」

 刻矢と泉警視が互いに罵り合う。後ろの部下二人が、二人にとっては出会う度の光景だとは理解しつつも何とか止めようと思い慌てている。

 刻矢と泉警視の争いは、とうとう両腕での取っ組み合いにまで発展していた。公務執行妨害や暴行罪等が適用されてもおかしくない光景だが、二人は互いのプライドにかけて引くつもりは無いらしい。

「俺は早く姫陽と旅番組を観たいんだ。だから用だけ済ませて帰れ」

「この自己中が。こっちは西区のスプラッタと防犯カメラの映像で、ジェネシスナイトメアの仕業として来たくも無いお前の所へ来たのに」

「何だと?」

 刻矢は泉警視の言葉で冷静になり取っ組み合いを中断する。ジェネシスナイトメア――つまり相手は自分と同じ死体ベースのナイトメア。異世界を創らず現実世界に被害を及ぼす存在という事になる。

「ジェネシスだと? あり得ない。セフィロト社はここから撤退したハズだ!」

 刻矢は泉警視の言葉が全く信じられず叫ぶ。自分の身体をイマジナリゼロという力で削り、ようやくセフィロト社の幹部クロスを倒したばかりだ。残るは奴等が配った、オリジナルの残党だけでこの町にはもはやうま味など無いハズ。刻矢はそう考えていた。

「残念だが事実だ。相手は豹のナイトメアで、ベースの人間の外見は踊り子。西区で一瞬の殺戮をしたそいつはまだ町の中に居る」

 刻矢は泉警視の言葉にゾッとする。一瞬で人を殺せる存在が町でうろついている。確かに警察では手に負えない存在だ。ナイトメアに機動隊を投入したところで虐殺されるのが目に見えている。

 クロスが防御だとすれば今回の豹女はスピード。ただでさえ戦えるほどの力を取り戻していない状況なのに、本来の力を取り戻したカラドリウスやイマジナリゼロ状態ですら倒せるか解らない。下手にイマジナリゼロを使えば、逆に消耗戦となる可能性が高い相手だ。

「まだ力も戻っていない俺に勝てる相手なのか?」

「恐らく無理だろう。だからこそ、忠告と作戦会議のために来た。お前の仲間達にも、部下が忠告とここへの送り迎えをしている。たとえ出会っても絶対に手を出すな。カラドリウスの特殊能力をもってしても殺されるぞ」

 今回は泉警視の判断が正しい。刻矢は冷静になった頭でそう考える。

 まさか、相手にそんな隠し玉があるとは思ってもいなかった。フェニックスを退け、クロスを倒した事実があるからこそ甘く見ていた。祖父の輪廻が言っていたイマジナリゼロの八回使用でも足りないだろうと本気で考える。

 正直なところ、特殊能力と防御だけしか能が無いクロス相手の方がましだったと刻矢は思っていた。今回の相手は、一人では勝てないと認めざるを得なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ