男の決意と迷う少女
刻矢達はサルヴァトーレを見送るべく、柊家が所有している島の船着き場までやって来ていた。
時間があと三分あるため、刻矢達三人とサルヴァトーレでアメリカ行きの船を待っている。
「いやあ、お前達と居て楽しかったぜ。セフィロト社の仕事ってつまらないからさあ」
「なら辞めたら良いじゃないですか」
姫陽がサルヴァトーレを説得する。悪い人ではないのならば、仲間になれば良いと考えたからだ。
しかし、サルヴァトーレは首を横に振りつつ自虐的に乾いた笑いを吐く。
「俺はさ、正直あそこの思惑なんてどうでも良いんだ。ただ、新世界を創るって言ったから、それを見たくて乗っただけで」
どうやら、サルヴァトーレにとって世界がどう転ぼうが変わりさえすれば誰でも良いらしい。
そんな奴が果たしてコードを改変し、争いを減らそうという考えに賛同するのだろうか。刻矢は恐らくサルヴァトーレは賛同しないだろうと考える。
自分達には、サルヴァトーレの興味を引く餌が無い事を知っていたからだ。
次に会う時は敵同士。解ってはいるものの、失うには惜しい存在だ。ナイトメアになっても、新たな人生を謳歌し目標も無く自由に生きている。かつての刻矢とは真逆のタイプで、今までに無かった考え方だったからだ。
「あんた、次は何するの?」
「やる事無いだろうし、次はあんたらと戦うかな」
刻矢達が身構える。一番聞きたくなかった言葉が彼の口から出てきた。ならば、戦うしかないと。彼とは解り合えないという事を理解した。
「ああ、そうそう。俺は運や流れに命を預けてきた男だ。カラドリウスや勝負師の嬢ちゃんはともかく、あんたは仲間も含めて、命をベットする覚悟が無いとこの先死ぬぞ」
「良く解らないけど、心の片隅に置いておくわ」
「そいつはどうも」
麗那はサルヴァトーレの忠告が理解出来なかった。自分の命だけではなく他人の命も賭けろという言葉の意味が。刻矢と姫陽にあって、自分にはその覚悟が無いとでもいうのか。
そう考えていると、アメリカ行きの船がやって来る。とうとう別れの時が訪れたらしい。
「あばよ兄弟。お前達と居て楽しかったぜ」
サルヴァトーレはそう言いつつ、船に乗って手を振る。本当に楽しそうな笑みで、満足した表情の彼を乗せたまま船は出航していく。
「刻矢、ひなちゃん。次会う時はあいつとは敵なんだよね?」
「ああ、そうだ」
「本当は嫌ですが、覚悟は出来ています」
先程とは違い、二人はサルヴァトーレを――スネークを完全に敵と認識している。
何故あれほど仲良くしていた彼を敵だと割り切れるのか。今の麗那には解らなかった。




