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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
コードの存在理由
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明かされる真実

 家族全員――カラドリウスの正体が刻矢だとバレていないが――揃った柊一家と、巻き込まれた形でこの世界に飛ばされたスコーピオンこと荒砂錐彦。彼等に猫のクロエとノエルを加え再会を喜んでいた。

「兄さんは?」

 姫陽が飛ばされたハズの家族。兄の刻矢を必死になって探している。

「刻矢は……そう、手分けして出口を探そうって提案したのよ! ね?」

「そ、そうだよ!」

 事情を知らない彼方だったが、空気は読めるらしくカラドリウスの正体を隠す事にした。姫陽の警戒を解くためナイトメアとしての姿の変身を解除した錐彦に、秘密の同意を求め口裏を合わせる。刻矢がすまないと彼方の耳元で囁くと、彼方は問題無いよと笑顔でサムズアップする。姫陽はそんな三人を疑わしそうにジト目で見つめているが。

「とはいっても、ここを出るにはあのサメから一定時間逃げ続けるか倒すかの二択だぞ? この世界の動力源の半永久ダイナモが、ナイトメアコードを無理矢理取り込まされて暴走してるみたいだし」

「どちらもお前とクリストファー・ハーネックの共同発明だろ。片割れのお前が何とかしろ」

 カラドリウスこと刻矢が未弦に責任を押し付ける。姫陽を危険な目に遭わせた事に対し怒っているからだ。未弦もそれは解っているらしく頭を抱えて悩み始める。

「そうなんだよな。手元にインフィニティコードがあれば使えるなら全コードを止められるんだが。あれは不法投棄もとい紛失したし無い物ねだりはダメだよなあ」

「他にある物は?」

 刻矢が未弦に対し高圧的に尋ねる。初めてナイトメアを倒した人間が聞いて呆れると、刻矢は心の中で呟いた。

 未弦は持参した工具箱とバッグをマングローブの根に置く。すると、クロエとノエルが何だ何だと好奇心からやって来る。未弦がとりあえず使えそうな物を一式取り出すと、刻矢は一つずつ手に取って首をかしげる。

「何だこれは?」

 刻矢がライターに似た掌サイズの物を見せる。

「それは工業用レーザーだ。どんな物も切断し更に溶接まで可能にする。あと、電気製の刃は連射可能だ!」

「こんな危ない工具があってたまるか」

 刻矢は未弦に冷静にツッコミを入れると別の物を掴み差し出す。今度も掌サイズで無数のネジが規則正しい間隔で絞められており、延びた導線にはオフになっているスイッチと脈動する赤い結晶――半永久ダイナモが取り付けられてる。

「レールガンとでも言いたいのか?」

「弾は無いけどな」

 刻矢は無言で超小型レールガンをカバンに戻していく。未弦のバッグの中身を何度も確かめてみるが、常人には理解不能な物ばかりだった。

「仕方ない。サメから逃げ切る方向でいこう」

 刻矢は諦めの口調で方針を伝える。父である未弦が半永久ダイナモやナイトメアコードでは差し引けない程に、旅先で無数のがらくたを作っていたとは思っていなかったからだ。世の中の奴らがこんな奴を天才と称していると考えただけで、実の息子である刻矢は頭が痛くなってきた。

「サメならヒレ切るか止めれば浮力なくなるんじゃね?」

「あの巨体をどうやって止める気だ」

 刻矢が未弦の意見を切り捨てる。あまりにも無謀過ぎたからだ。それに、もたもたしたると――古代魚のメガロドンにあるかは不明だが――サメの能力であるロレンチーニ器官を使って再びやって来るかも知れないとも考えていた。

 普段は冷静な刻矢でも今回ばかりは本当に焦っていた。どうすれば逃げきれるか。どうすれば勝てるかの答えが全く思い付かないからだ。

「じゃあ、そいつの目を潰せば良いじゃない」

 母親の彼方が手を高く挙げて素人的な意見を出す。

「ですがお母さん。サメには確か、電気か何かで正確に獲物を見付ける方法があった様な気がします」

「ロレンチーニ器官だね」

「そうだ。古代魚とはいえ相手はサメだ。持っているかも知れ――」

 刻矢がそこまで言うと、破砕音が少しずつ大きくなってくる。全員が襲撃に対し構える。どうやら時間はあまり残されていないらしい。全員が横へ素早く移動する。しばらくすると音が通り過ぎていく。回避に成功したらしい。

「あと何回回避すれば良いんだ」

 流石の刻矢もうんざりしてきたらしくぼやく。

「起動した時間から計算して七、八回だな」

 未弦が導きだした答えを刻矢に伝えると、遂に刻矢の中で何かが弾けてしまった。追いかけ回され更には策を練る事すら出来ない。刻矢が呟く様に笑い、とうとう悪い意味で吹っ切れてしまう。

「要はあいつを倒せば良いんだろ?」

「それって、いわゆる死亡フラグじゃないかな?」

 刻矢は錐彦の忠告を無視して、『imaginary number』のコードを出現させてしまう。コードは『i』の形をした鍵へと変化し、迷わずアヌビスの首飾りに出現した鍵穴へ挿し込み回す。『Unlock』という電子音と同時に、カラドリウスとしての姿が純白の光に包み込まれ変化していく。

「あーあ、やってしまったよ」

「何が起こっているんです?」

「無謀なギャンブルだね」

 姫陽の言葉に錐彦が大体間違ってはいない発言で返す。

 言い終わっている間に、刻矢の姿は生物的なカラドリウスから無機質なカラドリウス・イマジナリに変化していた。 鍵が刺さったコンバータから延びている無数の線は、本来ならばカラドリウス時のダメージから得たエネルギーを供給するための物だ。

 しかし、今回は刻矢の精神その物を供給しているのか赤黒く変色している。コンバータも同様だ。背中にある六基のスラスターが、刻矢の感情を反映させているのか十基に増えている事も特徴だ。

「水の中でしか生きられない魚が、大空を舞う鳥に勝てない事を教えてやる」

 刻矢はそう言うと、純白の二丁の自動式銃を出現させつつ胸部の鍵を四回回す。すると、十機のスラスターと二丁の銃が激しく輝き始める。

 三度目の破砕音が近付いてくる。同時に、刻矢は二丁のトリガーを強く引きつつスラスターを最大出力で解放する。

 銃から出てきたのは弾丸ではなく、森を抉り取らんばかりの二本の赤黒くて太いビームだった。刻矢はビームの反動をスラスターで受け流しつつ、メガロドンを跡形もなく吹き飛ばすという作戦に出たのだ。

 森は轟音と共に消滅し憎きサメを視界すら遮る閃光で貫いていく。スラスターのジェットとビームが止むと、刻矢はまず前方を確認する。先にはサメや制御装置と思われる残骸が見られる。討伐に成功したらしい。

「お前相変わらず無茶するなあ。そういう所、彼方に似てるぞ」

「ただ、冒険する心は未弦に似てると思うわね」

「お母さんとお父さんに似てる? まさか、カラドリウスさんの正体って――」

 姫陽の発言に柊夫婦はしまったと表情を歪めてしまう。追い討ちとでも言わんばかりに、クロエとノエルがカラドリウスに近付いてくる。当のカラドリウスこと刻矢は少し困った感じだが二匹を優しく撫でる。

「あなたがカラドリウスさんだったのですね、刻矢兄さん」

 流石にもう嘘はつけないと判断したのかカラドリウスが変身を解除する。姫陽の目の前には良く知っている兄――刻矢が立っていた。刻矢は困惑した表情で愛する妹の姫陽の顔を見る事すら出来なかった。


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