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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
コードの存在理由
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複雑な再会

 刻矢達三人と二匹は出口に繋がる何かを見付けるべく移動していた。しかし、幾ら探してもナイトメアが見付からない。一時間以上経っているにもかかわらずだ。

「ホント、ここって広いだけだよねえ。ナイトメアなんて居るのかなあ?」

 錐彦が退屈そうに呟く。そう言うのも無理は無かった。今までナイトメアどころか意思を持った存在に一度も出会っていないからだ。

「無闇に体力使うのも得策じゃないからまた休憩するか」

「解ったわ刻矢」

 三人と二匹は再びマングローブの根で休憩する。刻矢は母彼方から借りた猫用ブラシを使いクロエを優しくブラッシングし毛並みを整える。ブラシにノエルの匂いが付いているからか、クロエはいつも使う物とは違っても嫌がっていなかった。

 次に刻矢はノエルをブラッシングしようとすると自分からやって来る。刻矢のテクニックに身を任せ満足している様だ。

 そして二匹は綺麗になるとお礼をするかの様に鳴きながら寄ってくる。刻矢はクロエとノエルを片手で撫で微笑む。

「両手に花だねえ。猫だけど」

「刻矢も麗那にアタックすれば良いのに」

「やかましい」

 からかいにやって来た二人に刻矢はしっしと手を振って追い払う。

 平和な世界だ。刻矢はそう考えていた。ここに来てから何故か腹が減らない。刻矢は世界の仕組みに気付きつつ、本当にナイトメアの世界なのだろうかと考える。今までのナイトメアの世界は、生身で戦っていた時代には気だるさを感じていた。

 だが、この世界はナイトメアの世界とは真逆の性質を持っている。まるで世界が全てを受け入れ包み込んでいるかの様だ。

 そう思っていると、少し離れた場所から急に連続する破砕音が聞こえてくる事に気付いた。この世界にやはり何かが存在する。刻矢はそう確信する。他のメンバーも気付いたらしく、今も続く音に向かう事にした。


 破砕音がした場所の近くにやって来た刻矢達は、正体を探るべくマングローブの幹から身を乗り出して見てみる。

 すると、無数のマングローブが何かに潰されたかの様に折れなぎ倒されていた。刻矢は光景を見て、自然による物ではないと確信する。重くて巨大な何かが這わない限り、左右それぞれ決まった方向に向かった折れ方はしないと結論付けたからだ。

「こんな巨大な何か、ホントに存在するのか?」

「確かに、風ではないだろうね」

「多分この先に何かが居るわね」

 刻矢達は更に進む事にした。

 恐らく相手は巨大。正直ナイトメアかどうかすら疑わしい存在だ。刻矢ですら、オリジナルやレプリカ。更にはそいつらが生み出す雑魚でも巨大なナイトメアなど一度も見た事が無い。進み続けてだんだん破砕音に追い付いてきた。刻矢と錐彦が互いに頷きナイトメアコードを同時に出現させる。

「コード・オン」

「コード・オン!」

 二人は白と紫の光に包まれ姿を変えていく。

 純白の鳥人カラドリウス。サソリの尾型の装甲を手足と三つ編みに装備し、中国格闘家の服を身に纏ったスコーピオンだ。カラドリウスに変身した刻矢は七対の翼を生やして空を飛び、スコーピオンに変身した錐彦は自慢の脚力でそれぞれ目的地に向かう。

 刻矢が空から近付き破砕音の正体を目視する。全体が柔らかそうな皮膚に覆われた魚で、顔の上顎部分が尖っている原始的な生物――サメだ。その生物は空中を泳いでおり触れた木々を巨体で次々となぎ倒している。

 ただ、サメにしてはあまりにも大きすぎると刻矢は考える。そしてある結論に至る。

「あいつ、まさか絶滅したメガロドンか!?」

 相手をメガロドンと認識した刻矢は相手が向かっている場所を見ようと更に加速する。ついに追い抜くと、そこには今まで行方不明だった男未弦が妹の姫陽を担いで逃げていた。

「親父、姫陽!? 何でここに――」

 刻矢は一瞬考えるがすぐに首を横に振り救う事にした。

「横へ跳べ! サメが速いのは直進だ、早く!」

 刻矢の声に気付いた未弦が姫陽を担ぎながら横に跳ぶ。メガロドンは獲物を一瞬見失い、再び追い掛けようとするが既に二人は居なかった。メガロドンは怒りに身を任せ、真っ直ぐに突き進んでいく。それを見送った刻矢達は、マングローブの陰から出てくる。

「いやあ、助かった助かった!」

「あ、ありがとうございます――って、鳥さん!?」

「そこに今更驚くのか」

 刻矢はカラドリウスの姿のまま呆れてやれやれと首を横に振る。

「もしかして……あなたがカラドリウスさんですか?」

「そうだ」

 見た目は鳥の化け物であるにもかかわらず、姫陽は正体が兄とは知らず勇気を出して声を掛けてみる。威厳があると同時に優しい声。それを聞いた姫陽はカラドリウスを敵とは認識していない様だ。刻矢の方はナイトメアになった経緯故に、姫陽に正体を明かせず心臓の鼓動が高鳴っていた。

「何故私達を――」

「助ける事に理由が要るのか?」

「解りました。じゃあ、私はあなたを信じます」

「――好きにしろ」

 刻矢が父親の未弦にアイコンタクトで訴える。姫陽に正体を明かすなよと。すると、未弦は了解の眼差しを刻矢に返した。

「おーい、刻矢! あ、いた――」

 向こう側から林を砂漠化させながらやって来る錐彦に、刻矢は残像も残らぬ速度でアイアンクローを叩き込む。

「痛いよ。な、何するんだい?」

「姫陽に俺の正体を絶対に言うなよ。カラドリウス・イマジナリで今度こそ潰すぞ」

「りょ、りょーかーい……」

 刻矢の脅し文句に錐彦が震え始める。それを見た姫陽と後から遅れてやって来た彼方は首をかしげていた。


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