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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
コードの存在理由
34/104

再生されし狩人

 姫陽と父未弦は気が付くと家とは別の場所に立っていた。高層ビルの様に立ち並ぶ巨大マングローブの林とその間を流れる川。木漏れ日が心地よく平和な世界だ。

「ここが――」

「そう、フェイクフィールドの世界だ。腹も減らないし殺菌や洗浄も自動で行われる別荘として俺達が学生時代に作ったんだ。まさか、閉じ込めるために使われるとは思ってなかったけどな」

 未弦が最後の部分だけ残念そうに呟く。こんな優しい世界なのになぜ悪用されなければならないのか。姫陽はそう考える。父が人を悲しませるために作るハズがない。刻矢と同じくテレビ電話によるコミュニケーションだったとはいえ、姫陽は未弦を父親として信頼していた。

 だからこそ、父の悔しさに対し心を痛めていた。

「お父さん――」

「心配するな、もう昔の話だから」

 そう言いつつ未弦は明るい笑顔で姫陽の頭を優しく撫でる。

「初期位置に刻矢達が居ないという事は、あいつら移動したらしい。全員で脱出するぞ姫陽!」

「はい!」

 未弦が先導する形で二人はマングローブの林を進む事にした。

 この世界の開発者を知っている未弦は道を知っているらしく迷わず進んでいく。そこまで早口移動せずある程度進むと娘を待ち、休憩を挟んで再び先導するという姫陽の体力を考えたうえでの方法だ。

 当の姫陽は父に対し心の中で申し訳無いと感じていた。


 しばらく進むとマングローブの数が減り川の本流と思われる湖にたどり着く。どうやら、未弦が探していた場所はここらしい。

「確かここに制御装置があったハズだ。そいつを操作するか壊してしまえば脱出出来る」

「お父さん凄いです!」

「一度旅をした場所は覚えてるからな」

 姫陽が拍手をすると未弦がどうだと胸を張る。更に未弦は湖に向かって両手をかざし立体映像で出来たキーボードを出現させる。どうやらこれで外部から制御装置を動かす仕組みらしい。未弦が慣れた手つきで操作していく。

「よし、これで操作は終わった。後はこの世界で待つだけだ」

「これで、兄さん達を助け――」

 姫陽が言い終わる前に湖から何かが水しぶきをあげつつ出現する。

 出てきたのは巨大な赤い結晶に無数のパイプとケーブルを繋ぎ合わせた物だった。結晶その物が鼓動を放っており、中から赤黒く輝く『Megalodon』という文字が浮かび上がる。

「馬鹿な――俺の発明品、半永久ダイナモの中にコードだと!? 未成年にしか使えないあれを無理矢理ダイナモなんかに組み込んだら……!」

 半永久ダイナモと呼ばれた赤い結晶を中心に赤黒い粒子が集まっていく。粒子は形となり徐々に別の色を帯びていく。姫陽は目の前の存在に思わず息を飲んでしまう。

 現れた物は巨大なサメだった。ただし、目の前に居るのは現存するどのサメをも遥かに上回る巨体。本来なら存在してはいけない古代生物――メガロドンが二人の目の前に居る。

「クリスの野郎、狂ってやがる……」

 未弦はメガロドンに背を向け姫陽を背負いながら全力で去っていった。


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