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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
コードの存在理由
32/104

帰ってきた男

「兄さん! お母さん! クロエちゃん! ノエルちゃん! 返事してください!」

「嘘でしょ?」

「おいトキ! 錐彦! 彼方さん!」

 姫陽と麗那、悠翔の三人は柊邸の周辺を探すが返事はない。刻矢達三人と二匹の姿が目の前で完全に消えてしまったという事実に驚きを隠せない。悠翔曰くナイトメアの変身ワードが聞こえなかった事から、本当にナイトメアの仕業か疑わしいらしい。

 麗那は何故悠翔がナイトメアの事を知っているのか最初疑ったが、五代家とセフィロト社が企業として組んでいる事を思い出し考えるのを止めた。遂には警察や生徒も含めた知り合い全員に連絡、星神町という町単位の規模で捜索を始めた。

 しかし、未だに有力な手掛かりが入手出来ていない。刻矢達が行方不明になってから、一時間が経過しようとしていた――


 開発途中の南区に、仮設的に造られた滑走路。そこに自家用と思われる小型の飛行機が一機着陸していた。飛行機の側面には柊というロゴが描かれており、持ち主を降ろすためにドアが開く。

「帰ってきたぞ我が故郷!」

 カウボーイハットがトレードマークのウエスタンな男が、良い歳した大人であるにもかかわらず飛行機のドアから第一声をあげる。彼は顎髭を生やした渋い男で、大人のダンディーさを体現した様な人間だ。一目見ただけでは彼の本職が科学者兼技術者だと見抜く事は出来ないだろう。

「ありがとさんパイロット君!」

 男――柊未弦とパイロットの男が互いの親指でサムズアップする。未弦は旅の荷物一式と工具箱を片手にそれぞれ持つと飛行機を背に去っていった。


 しばらく歩き都市部の中央区に来ると、未弦は何やら町が騒がしい事に気付く。知っている限り中央区は歩行者でいっぱいだが、今日は歩道を渡るわけでもなく住民達が声をあげてうろうろしている。

「お、四月なのに祭りか?」

 未弦は少し考えると急に太陽の様な笑顔でスキップし始める。もちろん目標は賑やかな方向だ。

「住民とコミュニケーションを取るには、近付いて混ざってみるのが仲良くなるコツだな。おーい、俺も混ぜてくれー!」

 未弦が星神町の住人に向かい手を振りながら近付いていく。

 だが、住民達は明らかに未弦を歓迎していなかった。何で今更戻ってきたと言わんばかりに無言の圧力を掛けてくる。それどころか痛い子でも見るかの様な無数の刺す視線が集まってくる。

「ああ、柊博士か……」

 現地住民の男性がハエを追い払うかの様にしっしと手を横に振る。

「何だよ、俺も混ぜてくれよ」

「今忙しいんだ。柊妻子と連れが居なくなったから、町中あげて血眼になって探してるんだよ」

 空気でも読めと言わんばかりに、周囲が未弦に背を向け捜索を再び開始する。未弦は唸りながら考えある答えにたどり着く。

「ええーっ!? 彼方達が消えたーっ!?」

「おせーよ!!」

 全員が振り向き驚きの表情で固まっている未弦に総ツッコミを浴びせる。

「マジか……彼方と会う約束してたのに……」

 未弦が歩道に両手をつきながら激しく落ち込む。流石に可哀想だと思ったのか捜索している女性の一人が優しく声を掛ける。

「あ、あの……家に娘さんと警察がいるらしいので、まずは話を聞いてはいかがでしょうか?」

 女性の言葉に柊未弦という男の情熱の鼓動が高鳴り復活していまう。落ち込む体勢から「ヒャッホウッ!」と叫びつつバック転をし、世界中を旅してきた男の眼差しに再び火が灯る。

「よっしゃあっ! ありがとう、俺は再び戦えるぜ!」

 そう言うと柊未弦は住民達から引かれ気味に見送られながら去っていった。


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