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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
コードの存在理由
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幼馴染みの友情

 刻矢も変身を解除するが表情は驚きに塗り潰されていた。

「何故ナイトメアコードを――か。トキ、お前昔から変わらないなそういう所。まあ、フェニックスのコード自体市販品とは別物なんだけどさ」

「市販品? まさかお前あの企業の――」

「そういう事。いわゆる幹部用のコードって奴」

 刻矢は目の前の男の言葉が信じられなかった。幹部という意味ではなく、まさかこの男が敵に回るとは夢にも思っていなかったからだ。

 刻矢にも親友と呼べる者が存在する。麗那と同じく昔からの付き合い――自身や麗那と同じく星神町育ちの幼馴染みが目の前にいる。

五代(ごだい)――悠翔(ゆうと)!」

「おいおい、フルネームで呼ぶ様な仲じゃないだろ俺達」

 刻矢が男――五代悠翔に向かって叫ぶ。

「お前、錐彦にナイトメアコードを渡したせいで、この町がどうなったか解ってるのか?」

「どうなったか? ああ、地元育ちの奴ら以外が意識不明になったあれか」

 悠翔がまるでどうでも良いとでも言わんばかりに話すが、刻矢は悠翔の言葉に納得出来なかった。出来るハズも無かった。

「麗那を襲っただけじゃなく、姫陽を泣かせたんだぞ。そして、お前は錐彦達に俺を売った」

 普段は冷静な刻矢ですら静かな怒りを見せる。悠翔はそれを感じとり理解したのか悲しそうな表情を見せる。

「ヒナとレイについてはすまなかった。いやちょっと待て、確かに錐彦にコードを渡したのは俺だが、お前を売った事については知らないぞ!?」

 悠翔が初めて動揺を見せると、流石の刻矢も悠翔の言葉に混乱してしまう。

「じゃあ、錐彦達をけしかけたのはお前じゃないのか?」

「ああ。お前が男子寮で戦った事自体、錐彦に聞かされるまで俺も知らなかった。単独行動を取ったのはそういう事だったのか。スネークの奴め、余計な真似を――」

 錐彦が最後の部分だけ苦虫を噛んだ様な表情で呟く。

「何か言ったか?」

「いや、何でもないんだ」

 錐彦がぎこちない笑みを見せるがかえって刻矢を怪しませてしまった。刻矢は未だに不満そうな表情を見せるが、とりあえず悠翔の言葉を仮ではあるものの信じる事にした。

「お前の組織は一枚岩じゃないのか。底が知れるな」

 お返しと言わんばかりに刻矢が冷たい言葉で嫌みを呟く。すると流石に我慢出来なかったのか、悠翔もクールを装ってはいるものの身体が震えている。

「旅人と格好つけているぼっちのくせに。ああ、クロエが居たかすまなかった」

「黙れ世界を知らない病弱。久々に会って元気になったと思ったら、よく舌が回る様になったじゃないか。再び病院送りにしてやろうか?」

 二人は先程まで本気の戦いをしていたハズなのにいつの間にか同レベルの口喧嘩を始めていた。

 だが、口喧嘩も二人にとっては本気の戦いだ。小さい頃から繰り広げられている神聖かつ決して犯してはならない勝負なのだ。

 遂には互いに掴み掛かりナイトメアコード抜きで激しく殴り合いを始める。刻矢が左手でフックをお見舞いすると、悠翔が相手の腹を腕で固定し完璧なブリッジの体勢でジャーマンスープレックスを決める。流石に道路上で頭を強く打ったのは相当痛かったらしく、刻矢は悠翔の腕を振りほどき体勢を立て直す。腹向けて右腕の肘打ちと顔への裏拳を流れる様に叩き込む。更には相手が体勢を崩したのを見計らって、足払いを忘れず行い道路に叩き付けるという外道とも呼べる行為までする。

「どこまで大人げない奴だ」

「勝負は勝てば良いんだよ」

 刻矢は悠翔の言葉を敗北宣言と肯定し両腕で勝利のガッツポーズを決める。気が付くと空は白く日の出を始めていた。

 たまにはクロエに起こされないで気持ちの良い朝を迎えるのも悪くない。刻矢はそう考えつつ勝利の余韻に浸っていた。

 だが、刻矢はすぐ違和感に気付く。朝を邪魔するパトカーのサイレンの音がこちらに近付いてくる。

『そこの二人組、争いを止めなさい!』

 刻矢にとって聞き慣れた声がスピーカーから響き渡り、遂に二人の周囲は赤いライトが輝くパトカーに囲まれる。刻矢と悠翔は両手を挙げ警察に無抵抗の意思を見せる事にした。


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