加速する運命
「お前は一体何者だ?」
刻矢が二丁銃を構えながらフェニックスに発砲する。その銃口から出てきたのは純白の光を圧縮した弾丸だ。フェニックスはローブの時よりも分厚い炎の壁を出すが全て壁を突破し命中する。
「その質問はノーコメントだって言ったろ?」
「勝ったらコードを破壊する前に口を割らせてやるさ」
「お前に出来るものならな。お前は優しすぎる。それが命取りだ」
フェニックスが大剣に炎を纏わせ斬りかかるが、刻矢は右足を前に出しながら弧を描き簡単に回避する。
「遅い!」
刻矢はそう言うとフェニックスの腹に向けて銃を連射する。すると、フェニックスの全体と持っている剣が激しく燃え、一気に灰になっていく。
「核となる人間を排出しない? なるほど、フェニックスとは言ってくれるじゃないか」
刻矢の言葉を肯定するかの様にフェニックスから生まれた灰が渦を巻いて収束し形作っていく。形となった灰が徐々に色づき刻矢の予測通り目の前に倒したハズのフェニックスが蘇る。
「まさか、死なないナイトメアがこの世に存在するとはな」
「その通り。俺こそが不死のナイトメアだ。何度倒しても一度燃え尽きて灰になり、新たな生命体として復活する」
フェニックスが掌から炎を生み出すと刻矢に向かって投げる姿勢をとる。
「炎はもう俺には通用しないさ」
「そいつはどうかな?」
「何?」
フェニックスが炎を投げると一気に道路へ真っ直ぐ燃え広がり赤く熱せられていく。刻矢は翼を生やし空へと回避するが、高熱による気流で激しく吹き飛ばされる。すぐに体制を立て直すと眼下は地獄絵図だった。見る限り家は燃えていないものの、塀は蝋の様に溶け道路には紅蓮の炎がガソリンをまいたかの様に燃えていく。
刻矢は今まで戦場経験やナイトメアとの戦いを見てきたとはいえ、目に写る光景が現実の物とは思えなかった。
圧倒的な力による爆発や粉砕ならまだ解るが、今戦っているフェニックスは本来なら燃えないハズの無機物すらも燃料として燃やす力を持っていた。刻矢は視認した箇所全てをカラドリウスの能力で修復しようとするがそれでも完全には直らなかった。
ここで戦っては危険だ。刻矢はそう判断し距離を取りつつ開発途中の南区へ誘き寄せる作戦に出る。刻矢の意志が伝わったのか、フェニックスも翼を生やし刻矢を追い掛ける。
しかし、逃げようにも飛行速度はフェニックスの方が勝っていた。徐々に距離が縮まると同時にフェニックスが炎による攻撃を仕掛けてくる。
「しまっ――」
カラドリウスとしての翼に炎が命中し勢いが増していく。刻矢はこれ以上の飛行が不可能だと判断し身体へ燃え移る前に無理やり翼を引きちぎる。新たな翼を生やした刻矢は、地上へ一気に下降し羽ばたきながら着地する。
場所は星神町中央区――都市としての様々な機関が集中している所だ。住宅区や学区がある北に住んでいる刻矢にとって目的地の南区は最短ルートでもまだ遠かった。
「もう終わりか?」
言葉と共に炎の悪魔が上空から降りて来る。迎え撃つべく刻矢は左手をスライドさせガラスに似た『imaginary number』というコードを出現させる。
「まだだ、お前を一撃で沈めてやる」
コードは小文字の『i』に似た鍵へと変化し刻矢はアヌビスの首飾りへとかざすと鍵穴が出現する。
『Unlock』
刻矢の全身が純白の光に包まれカラドリウスとしての肉体を再構築していく。光が収まると白い鳥の生物的なフォルムから白い無機質なフォルムへと変化し、胸にあった首飾りは差し込んだ鍵はそのままで黒いエネルギーを貯蔵するコンバータへと変化する。白い軽装の表面にはコンバータから伸びた無数の黒いラインが走っており、背中には六つのスラスターが装備されている。
「カラドリウス・イマジナリ――イマジナリチェンジ」
刻矢が胸の鍵を一回捻ると透明な剣が一本出現する。それを一度右手で掴むと剣を両手で構えフェニックスに向けた。
「ならば受けてみろ」
フェニックスが全てを焼き尽くす業火を全身から発生させる。刻矢は迷わず向かうと炎ごとフェニックスを断ち切った。
「やるじゃないか」
炎ごと斬られたフェニックスが胸を押さえながら呟く。どうやら斬られた事が予想外だったらしく動揺している様だ。
「死と再生を繰り返すのなら、そのどちら側の物でもない力を使えば良い。プラスでもマイナスでもない力でな」
刻矢は更に続ける。
「イマジナリーナンバー――虚数は累乗する事であらゆる数字へと変化する特殊な数字だ。プラスやマイナス、マイナスiにもな。俺のイマジナリコードから変化した鍵は、回す回数によって使うパワーを変化させる事が出来る。そして、俺が使ったイマジナリエッジは、あらゆるナイトメアの特殊能力を斬った瞬間無効にする!」
刻矢はフェニックスを指差し彼の敗北を宣言するが、フェニックスは冷静さを取り戻したらしく両手を叩き始める。
「まさか、そんなコードが存在するとは思わなかった。やっぱり勝てないなあ、お前には昔からさ」
そう言うとフェニックスが変身を解除する。今度はローブを纏っておらず一人の男に変化していた。
フェニックスの変身者は、天宮学園の制服を着てた腕に腕章を付けている男。モデル体型で美男子なのが特徴的だ。その姿を見た刻矢が思わず信じられないといった表情になる。
「久し振りだなトキ」
男が親しみを込めて刻矢をあだ名で呼ぶが刻矢は驚きを隠せなかった。
「本当にお前なのか? 何でお前がナイトメアコードを――答えろユウ!」
刻矢は目の前の事実が信じられずただ目の前の男に叫ぶしかなかった。




