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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
プロローグ
17/104

セフィロト社

 暗闇の中懐中電灯の灯りを頼りに姫陽と麗那、五十嵐陸人達一行は刻矢に合流すべく進んでいた。 幾ら懐中電灯があるとはいえ敵の襲撃に備え辺りを警戒している。

「それにしても、女の子にレーション渡す奴がいったいどこにいるのよ?」

「まあまあ麗那さん落ち着いてください。私達だって兄さんからご馳走になったのですから。それに、先輩達が作ってくださった食事とレーションを交換したじゃないですか」

 不満な表情の麗那を姫陽がなだめる。どうやら刻矢から貰った食料に納得がいかなかったらしい。

「けどさあのレーション、少量で腹一杯になるとかなかなか優れているじゃないか。刻矢の奴、どうやってあのセフィロト社製のレーションを手に入れたんだ?」

 対するレーションを食わされた陸人は麗那と異なり満足そうな表情を浮かべている。

「え、あれセフィロト社製なの!?」

「パッケージに書いてあるぞ。ほら」

 陸人が取っておいたレーションのゴミを麗那に渡す。良く見ると白い樹の内部に十個の円とそれらを繋ぐ無数の線が描かれたマークが書かれている。麗那は呆れた表情でマークを見つめた。

「日用品から医薬品、兵器まで何でも揃えているセフィロト社……ねえ? アメリカの大企業は凄いわねホント」

「確か、紛争地域への支援もやってたハズです。すごい企業ですね」

「でも、資本主義の塊だから慈善事業じゃないわよきっと」

 麗那が面倒くさそうに返す。麗那の家系――神宮寺家はいわゆる金持ちの家系のため、大企業の噂が嫌でも入ってくる。

 それに、嫌っているのはアメリカの企業という部分だけではない。所属している組織――ナイトメア対策組織自体がセフィロト社運営の組織だからだ。ナイトメアがこの町に出現した時、麗那は支部長である母親を通してセフィロト社の本社に増援を求めた。ナイトメアを倒すには明らかに条件を満たした人員が不足していたからだ。

 だが、地方に回せる部隊はないと却下され、刻矢が帰国し陸人が策を使わなければ更に被害が拡大してしまう状況にまで追い詰められていた。それゆえに麗那はこの町を見捨てたセフィロト社が大嫌いだった。

「早く刻矢と合流しないとね。ひなちゃんのために頑張ってるから、何をしでかすか解らないわ」

「あいつ、そんなにおっかないのか?」

「あたしとひなちゃんが小さい頃、旅行先で誘拐された事があったのよ。刻矢が誘拐犯をC4とRPG使って殺害したけどね」

「し、C4にRPGだと!?」

 五十嵐陸人にとって柊刻矢は格闘技に精通している旅人だと思っていた。

 しかし、従来より比較的安全とはいえ強力な爆薬のC4を扱うという。加えて、遠距離攻撃にRPGを使う。一歩間違えれば、人質ごと爆破しかねない兵器だ。素人が扱う武器ではない。どうやら予想以上に危険な相手を仲間にしたと陸人は冷や汗流しながら心の底から理解する。

「男子寮が壊れなければ良いが……」

「ああ、その点は大丈夫よ。ナイトメアが生み出した空間で戦っても、外には影響がないから。倒されたナイトメアも、ナイトメアだった頃の記憶を失うだけで死なないわよ」

「そ、そうか」

 不安を胸に抱きつつ陸人達は刻矢の援護に向かう事にした。


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