空っぽの騎士
黒マントの鎧が刻矢に少しずつ近付いてくる。歩く度に盾や鎧が擦れる音が鳴るためか聞く者や見る者に威圧感を与える。
「レプリカコードのナイトメアで、俺に勝てると思っているのか?」
刻矢が余裕とでも言わんばかりに右手を前に突き出し軽く手招きすると、鎧がマントをはためかせながら素早く接近してくる。右手に両手剣を斜め下に構えつつバックラーを向け獲物に向かい駆ける。
「速いな」
刻矢がそう言うと既に剣を上に構えた鎧が目の前に居た。目の前の敵を粉砕すべく、鎧が重厚なクレイモアを素早く振り下ろす。
「だが、技がなっていない」
「な――」
しかし、鎧が振り下ろした剣が刻矢に届く事は無かった。何故ならば左手で剣を受け止めていたからだ。鎧が幾ら体重を掛けようとも刻矢が動く事は無かった。
「ならば!」
鎧が左手の盾で殴ろうとするが今度も右手で完全に防がれる。それどころか体重を掛けているハズの鎧が徐々に砂の上に痕を残しつつ下がっていく。
「な、何故だ? 何故攻撃が当たらない?」
「鳥の動体視力とパワー、スピードを甘く見るな。ちなみに、陸上で素早く走行するダチョウは大体四,八トンの圧力で蹴りを繰り出せるらしい。ならば、人間サイズで両手両足が鳥の俺が攻撃をしたらどうなるかな?」
「ま、待て――」
鎧が言い終わる前に刻矢はバックラーとクレイモアを殴って粉砕し二つは青い粒子となって霧散していく。その様子に、鎧の男は信じられないと言わんばかりに自身の両手を交互に見てすぐに後ずさるが転倒してしまう。
「さて、何だったか?」
「待て、待ってくれ! 俺にはもう武器がない! だから戦えないんだ! もう人を襲わない! だから許してくれ!!」
「すまない、良く聞こえなかった」
そう言いつつ、刻矢は鎧の頭を粉々に踏み潰す。
「戦いはスポーツじゃない。だから、命乞いをしてハイそうですかと答える馬鹿は居ないさ」
「錐彦助け――」
「ああ、もう壊して良いよ」
「最初からそのつもりだ」
刻矢が後ろを向き左足を引く。全身を半時計回りに動かしつつ右足で鎧の上半身に上段回し蹴りを叩き込み破壊した。同時に、青の『Bat』という文字や鎧と無数のビルが青の粒子となって消えていく。光から吐き出される様に、優男風の少年が砂漠に倒れる。
「ダメだねえレプリカコードのナイトメアは。性能の差がありすぎて話にならないよ」
仲間が倒されたにもかかわらずサソリの男は壊れたオモチャを眺めるかの様に二人を見る。
「まあ、ナイトメアコードの強さは使用者の資質だから、お前の見る目が無かったんだろう」
「それは認めるよ。まあ、前菜は気に入らなかったみたいだし、一気にデザートまでいこうか」
サソリの男が両腕に装備したサソリの尾で互いを研ぐ様に鳴らす。まるで、目の前のメインディッシュが待ちきれずフォークとナイフを持っている子供だ。
「そう焦るな。世界レベルのフルコースでもてなしてやるから」
「そいつは嬉しいねえ。この風紀委員副委員長、荒砂錐彦が満足できる物だと良いなあ!」
刻矢と錐彦という化け物同士の戦いが今始まった――




