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イマジナリゼロ  作者: 加賀美彗
プロローグ
14/104

悪夢の破壊者

 刻矢が空からゆっくり降り立つと、周囲の景色を眺めていく。上空からの攻撃を受けた砂漠の砂やビル、樹木が無惨にも穴だらけになり風が虚しく吹いている。

 次に刻矢は戦っている相棒の方を向く。すると、巨大なサソリの小隊を一方的に引っ掻き食い千切るクロエがいた。攻撃を受けないよう回避し隙を見計らって飛び掛かるというヒットアンドアウェイの戦法で戦っている。

 しかも巨大化して毛が厚くなった影響かサソリの針はクロエの身体に傷を付ける事すら出来なかった。回避しているのはあくまでごっこ遊びらしい。それほどまでにクロエとサソリの戦力はかけ離れていた。

「まあ、雑魚はクロエに任せれば良いだろう」

「な、何だよあれ!?」

 物陰から緑色の甲冑を着た何者かが出現する。

 兜の頭部分は虫の牙を象っており正面は宝石の様に赤い眼が三つ埋め込まれている。武器は放射状に背負った八本のハルバードだ。

「ああ、クロエか。俺が持つ対ナイトメア用武器の一つだ。ナイトメア対策組織エリートのみが生み出す専用武器と同様の性質――お前らナイトメアを殺す力がある」

「あの猫が? 冗談だろ!?」

 カラドリウスに変身している刻矢が、鳥となっている自身の嘴から嘲笑する。三つ眼の鎧がクロエを侮っていた事と未だに目の前の光景が信じられず混乱している事が滑稽に映ったからだ。

 紫の男と違って面白くないなこいつは。刻矢は心の底からそう思っていた。ならば妹の姫陽から友達を奪った事に罰を与えよう。刻矢はそう考え手と足をボクシングスタイルに構える。

「い、嫌だ! 俺はもっと強くなるんだ! 強くなるんだ!」

 三つ眼鎧の背負った八本のハルバードが宙を舞う。ハルバードには無数の白い糸が巻き付いており、それぞれが意思を持ってるかの様に動いている。

「ほう、そうやって使うのか」

「俺は負けない……負けるハズがない!」

 男が残像を残す速さで、全部のハルバードを刻矢に向けて振り回す。四方八方、前後左右死角無しの攻撃で本来ら避けられるハズが無かった。

「甘いな」

 刻矢は既にハルバードの攻撃範囲に居なかった。鎧が声のする方へ向くと背後には本来なら居るハズの無い存在――柊刻矢が居る。

「バカな……」

「お前の攻撃が遅すぎるんだ」

 刻矢が容赦なく鎧の胸部に腕を突き刺し引き抜く。心臓や血の代わりに出たのは、傷口から吹き出す緑色の粒子と刻矢の右手に握られた『Spider』という文字。

「や、めろ……止めて、くれ」

 胸部に風穴を空けられた鎧が苦しそうに弱々しく呟く。

「お前の悪夢はこれで終わりだ」

 刻矢が相手のナイトメアコードを握り潰すとコードと鎧、周囲の木々が緑の粒子と変化し一気に霧散していく。残されたのは白の鳥人と風紀委員の腕章を付けた砂に倒れている一人の少年だけだった。


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