つまらない事
屋敷に戻り、そのまま自分の部屋にではなくエドの部屋の前に立つ。
深呼吸を1回、2回。
よし、と気合を入れてノックした。
「エド…ちょっと良いかな?」
始めの内は無視されるんだろうと思っていたのに、エドは1回目の呼びかけで反応を返してくれた。
「んだよ」
かなり素っ気無い声、そしてドアは開けてはくれないようだ。ううん。返事をしてくれただけで嬉しいよ。
「少しは外出したらどうかな?気分転換に…そうだ、一緒に依頼箱見に行こうよ」
流石に遠出になりそうな依頼は無理だけど、簡単な内容の依頼なら一緒にやりたいなって…。
「1人で行けよ…俺なんかより頼りになる仲間が4人もいるだろ」
うん、拒否されると思ったよ。
ポチ達がいれば大抵の事は大丈夫だろうし、物凄く頼もしいよ?だけど、だからってエドを頼りにしてないって事にはならないでしょ?
「エドの事だって俺は…」
「本音で喋れよ。蘇りの中で俺が1番弱いって。1番頼りないって!」
叫び声と同時、ドンッ、と壁を叩く音がした。
エドは本気で自分が1番頼りないと思っているようで、中からは勢いのある声とは裏腹に元気のない気配が漂ってきた。
「皆大事だし、皆好き。けど、エドが1番なんだ…1番に出来た仲間なんだよ」
信じてない訳でも、頼りにしてない訳でもなくて、ただ守りたいだけ。それだけなんだ。
可笑しいよね、エドが強い事は知ってるのに、それでも「もしも怪我なんかしたら」って考えちゃうんだから。怪我をしたって、聖水さえ飲まなきゃ大丈夫なのにさ、本当に可笑しいよ。それで嫌われたんだから、本当に…。
「子供扱い…してんじゃねぇよ…」
心配する事は、子供扱いしているって事なの?じゃあ心配しなきゃ良いの?放っておいたら昔みたいに仲良くなれる?距離が開いてくだけじゃないか。
そりゃ、そうなんだ。
俺は天使でエドは…皆は蘇り。
天敵じゃないか。
「ゴメン…気分転換に外出なんてどう?」
それでも、ギリギリまで悪足掻きがしたい。仲良く出来る可能性が少しでもあるなら、そうしたい。
「否定しねーのかよ!」
怒鳴りながらドアを開けたエド。
久しぶりに右目が見える。眼帯を外してる顔、やっと見れた。なんだよ、常に隠してるからもっとなんか…恐ろしい事になってるんじゃないかって思ってたけど、普通じゃないか。目が飛び出すのを見られたくない?誰に?少なくとも俺は見たいよ。
うん、外出しよう。ズット部屋に篭ってたら体にも悪いよね!
「今日は天気が良いね」
エドの腕を掴んで強引に外に連れ出して、見上げると雲1つ無い空が広がっていた。なのに、エドはビックリしたような、呆れているような、そんななんとも言えない表情で俺を見ていた。
どうしたの?と首を傾げると、
「天気は確かに良いけど…ここ中庭じゃんか」
と、当たり前の事を言ってきた。
ここは間違いなく中庭だよ?
「外に出ると書いて外出だから、建物の外に出る事が外出。でしょ?」
それに、今はいつエルナさんが蘇るか分からないから遠出も出来ないし、丁度いい場所だと思う。
「自分の敷地から出る事を外出って言うんだろ?」
え?
「じゃあ中庭は?」
外出じゃないとしたら、なんなの?
「日当たりの良い場所?」
なにそれっ!
「建物の外なんだから外だってば」
上を見て空が見えるんだから間違いなく外!そんな外に出てるんだから外出だよ!
「家の中だっての」
中!?雨が降ったら濡れるよね?濡れるって事は外でしょ!?
「い~や、外だよ」
間違っても家の中じゃないモンね。
「中!」
なにおぅ!?
「外!」
至近距離で睨み合いをしていると、広間にいたらしいカフラが溜息と共に中庭にやってきた。
「主らはさっきからなにを言い合っておるのだ?」
そうだ、カフラに決着をつけてもらおう。
「カフラ丁度良い所に」
どうやらエドも俺と同じ考えだったようで、俺達はカフラに意見を求めて詰め寄った。
「中庭は家の中、だよな?」
「建物の外なんだから外出になるよね?」
ヤレヤレ、と言った風に手を振るカフラは、溜息を吐いてから少し微笑み、それからもう1回溜息。
「そのような事でよく言い合いができるな…それにキリク、主が言っておるのは屋外だ」
え?おくがい?
はっ!屋外!
「ほ~ら、外出ってのは自分の敷地から出る事~」
勝ち誇ったかのように笑うエドは、俺に向かってベーと舌を出してくる。元気そうなその姿は、俺がズット見たいと思っていたエドの姿。なんだけど…クソ~~~悔しい一!




