今後の事
屋敷に戻って来たのが数日前。
その日からサクリアはお店に行き、カフラは用心棒の仕事、恭治はご飯の支度とアッと言う真に普段の生活に戻っていた。
それと対照的なのはエドと、ディルク。
ディルクは、いつもなら見回りに出かけていた時間、部屋に閉じ篭ってエルナさんを見ていて、エドも自分の部屋から出て来なくなった。
そして俺はサクリアのお店の2階で細々と商売をしている。
流石に傷薬は品切れ状態、解毒剤や麻痺の薬のみ売っているんだけど、お客さんは誰も来ない。
こう暇だと、考えてしまう。
屋敷に戻ってスグ、俺とカフラはラミアに話を聞いたんだ。
アクアの事、シャドウがどうなるのか、シャドウが入ったエルナさんの事も。そして、ラミア自身の食事法についても。
ラミアは悪魔、普通の食事方法ではない。同じ悪魔だったアクアは水と言う平和的な物だったのに対し、ラミアの食料は、生き物の負のエネルギーだと言った。
そう前置きをしたラミアは、シャドウについての説明をし、結果、カフラから生まれた負のエネルギーを全て食料として吸収した。
かなり久しぶりの食事だったようで、少し食べ過ぎてしまったらしく、カフラはそのせいでエドの出身町に行った辺りからの記憶が酷く曖昧になってしまい、アクアがシャドウになった事を忘れてしまったようだった。
ラミアの食事は負のエネルギーと言うが、生きた者の時間そのものも一緒に食べているという印象だ。きっと、それは当たっているんだと思う。そうでなければ記憶が曖昧になるなんて考えられない。
それなら、俺のエネルギーも食べて欲しかった。ラミアから聞いた話も、アクアがシャドウになってしまった事も、全部忘れてしまいたかった。だけど、ラミアは俺を食べなかった。
天使は美味しいらしく、食べるのを楽しみにしていたようなんだけど、俺を食料として考える事を許さない人物が1人、2人…4人ほどいた訳だ。
“魔石”から一斉に出てきてラミアを睨むポチ達の迫力といったら…しかもそのうち1人は黒き悪魔。そりゃ、怖いよね…。
俺は、どうしたら良いんだろう。
天使だからって割り切って皆に聖水をお勧めすれば良いの?そんなの嫌だ…だけど皆に何をどう説明したら良いのか、分からない…そもそも皆の友はどう思ったんだろう?どう思っているんだろう。
生前の名前で呼び続けているから、なんとも思っていないのかな?
あぁ…そうだ。アルは樹海に戻って行く時、エドをゾンビンと呼んだじゃないか。エドがいない事を受け入れられる、とも。
そう言う事なのかな?だけど、皆は生前の記憶を僅かに残しているし、間違いなく皆は皆だ。
ラミアはカフラをどう思っているんだろう?エネルギーを食べて記憶を消す位だ、大事に思っているんだろう。
俺はラミアから聞いた話を、皆にするべきなのだろうか?それとも、何も告げずに聖水を飲ませれば良い?それとも、このまま…ノンビリと、何も知らない振りをして暮らしていれば良い?
けど、エルナさんが蘇れば、気配を感じる事の出来るサクリアは気付いてしまうだろう。その時、俺はどうすれば…。
エルナさんが蘇らなければ…なんてね…。
俺は今なんて事を思ってしまったんだろう…エルナさんは仲間だ。蘇りを待ち望まないと怒られるよ。
だったら、エルナさんが蘇って、きっと可笑しい事に気が付くサクリアに任せよう。こんな大事な事を人任せにしか出来ないなんて、俺は本当に駄目な奴だ。
それまでにやっておきたい事をしよう。
エドと、仲直りがしたい
「おや?今日はもう店仕舞い?」
1階に降りると、丁度休憩中だったサクリアが笑顔で話しかけてきてくれた。その笑顔が優しければその分、後ろめたい。
「うん。久しぶりに屋敷に帰ってみようと思って」
仲直り、出来るかどうか分からないけど…このままじゃ駄目なんだ。例え拒絶されたって構わない。ただ、ちゃんと話がしたい。
ううん。今までだって話はして来た。その度に拒絶されてるんだから、きっと今日だって拒絶されるんだろう。
だけど、まだ話す時間を作ってくれているうちは諦められない…諦めたくない。だって、エドは俺に出来た初めての仲間なんだもん。
時々口が悪くなるし、ちょっと手荒いけど、いつも助けてくれた。
そんなエドの願いが「顔も見たくない」とか「俺の前に現れるな」なんだから叶えてあげたいのは山々なんだけど、それじゃあ俺が嫌なんだ。
それでも、エルナさんが蘇るまでの事になるだろう。その後は?どうなる?分からない。
「ふふっ。たまには部屋の掃除もしないと。ね?」
うん…心の整理も、部屋の掃除もしてくるよ。それが出来たらちゃんと今後の事も考えるよ。サクリアに全てを任せるなんてやり方、やっぱり無責任だ。
天使として出来る事。蘇った者として出来る事。そして皆の願いを叶える事。それが出来るのは唯一絶対のアイテム、聖水。
ポチ達でさえ俺に飲めって言うんだから、飲むよ。
あぁ、なんだ…今後の事、俺はもうとっくに決めてたんじゃないか。




