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ディスペル  作者: SIN


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35/122

 朝の10時、ダイエット塾と看板が掛けられた店の中、俺は講師として座っている。

 ガイコツンが樹海に行ってしまってから元気のないエド。エドを心配している恭治も気分が落ち込んでいるように感じる。

 ディルクは恋人のエルナさんとの仲が上手く行っているのだろう、安定している。

 カフラに至っては上がりも下がりもしていないから流石だなと思うしかない。

 俺達“奪う者”には友がいて、その友は契約した“奪う者”から生気を供給される為に契約者が存命ならば飢える事もなく生きる事が出来る。しかし、もし契約者がなんらかの原因で食事をとる事が出来なくなった場合、当然友は飢える。本来ならば自らの意思で魔石からも出られない状況なんだから自分で飢えを凌ぐ事もできずに徐々に衰弱して、果ては消滅。

 地獄だろうね。

 だからこそ俺は町にいる人間の生気を分けて貰う為にこうした店を開いている訳なんだけど、どう考えても可笑しいんだ。

 完全に骸骨となっていたガイコツンの友が存命である事と、そのガイコツンの友が3人である事。そして何十年も昔に倒されている筈のカフラの友が存命である事も。

 生気の供給源が絶たれた状態で、どうやれば飢えずに生きる事が出来る?

 ハァ…ここの所分からない事ばかりで嫌になってくるよ。いや、正確には色々見る余裕が出来た分可笑しな所が目に付くようになった、かな。

 ガイコツンとカフラの友の事もそうだし、もっと分からないのは“黒き悪魔”の事だ。俺達が封じたのは確かだし、商人に売ったのだって確か。だけどあの最強だと言われてきた“黒き悪魔”を封じた魔石からは魔法石を作るだけの魔力が取り出せなかったらしい。

 6人一斉に魔石を使って6等分にしたとは言え、魔法石が作れないまでの弱さになる事がありえるのか。

 もしかすると“黒き悪魔”はガイコツンの持つ魔石に向かって封じられた?

 そう考えると俺達の魔石から魔法石が作り出せなかった事の説明が付く。なら、その“黒き悪魔”は今何処にいるのかって事だけど、ガイコツンが持っている可能性が高い。

 そもそも“黒き魔物”ではなく“黒き悪魔”と呼ばれていた事にだって納得がいかない。確か始めにそう呼んだのはエンゼルンだったか…命名したのは天使族か?あぁ、そうだ“黒き悪魔”は元天使だ。

 天使と反する悪魔が実在していると言う事か?

 本人に問いただす事が出来れば簡単なんだろうけど、生憎ガイコツンは樹海にいる上俺達に“黒き悪魔”を紹介してくれていない。

 こんなにも俺を悩ませるガイコツンと言う存在、早く帰って来て欲しいと願うのは何も全ての答えが知りたいからだけじゃないんだよ?

 「ごきげんよう、お久しぶりですわね」

 ハァ…。

 笑顔で店に入って来たのは1人の天使で、手にはバスケット。その中には小瓶がいくつか見えている。

 「ここに来るって事は、屋敷には誰もいなかったのかな?」

 天使族、とか考えたのが駄目だったのかな。何度聖水を持ってきたって飲まないのに、何故毎回こんな堂々と持ってくるんだろう?それだけ飲んで欲しいって事なんだろうけどね。

 「貴方に訪ねたい事がありますの。ですから屋敷には行ってませんわ」

 笑顔を崩さずに正面に座るエンゼルンは、バスケットの中から小瓶を1つ取り出すと机の上に置き、静かに目を閉じた。

 表情は穏やかだが心中はかなり荒れているんだろう、敵の前で目を閉じるなんてそうそう出来る事じゃない。それとも自分は負ける事がないと言う余裕か…。

 「で、何を聞きたいのかな?」

 聖水を飲まない理由とかではないだろうし、蘇った理由?それに関して言えば俺達も知らない。寧ろ聞きたい事があるのは俺の方だ。

 「“黒き悪魔”の回収、それが目的ですわ。ガイコツンは何処にいるのかしら?」

 え?…今なんて…え?

 「ガイコツンは“黒き悪魔”を持って?」

 持っている確率は高い、そう思ってはいたけど、本当に持ってたんなら…どうして俺達になにも言ってくれなかっ…。

 「友だと卑下されていましたわ…魔石などに封じられるお方ではないと言うのにっ!」

 友だって事は、魔石を持っているだけじゃなくて契約をした?

 目の前で怒りに震えながら鎌を握り締めるエンゼルンは、再び目を閉じると数回深呼吸し無理矢理に穏やかな表情を作って目を開けた。

 「ガイコツンなら…体の回復を優先させる為の旅に出たよ」

 樹海だと言う事を隠す為に旅に出たと嘘を言って違和感を覚える。

 天使は天界から人の魂を見ている。蘇った“奪う者”にも当然魂が宿っているから俺に居場所を聞かなくても直接ガイコツンの所に行く事が出来る筈…だよね?え?そうなの?天界って何処なんだろう、魂を見てるなんて一体何処で知った?本で読んだ…のかな。

 「貴方達のようにあの骸骨も生前の姿を取り戻すと言うの?」

 そうだろうね。

 「生前の姿になったガイコツンを見て君はなにを思うんだろうね」

 元天使だった“黒き悪魔”と知り合いだったガイコツンは、少なからずエンゼルンともなんらかの接点があるような予感がする。そうなるとますますガイコツンの正体が分からなくなる…。

 「あんな不浄な魂に興味ありませんの。あの方さえ救う事が出来れば、私はそれで」

 エンゼルンは確か“黒き悪魔”を天使族の面汚しだと言っていた。手当たりしだいに“奪う者”を倒すから蘇りが出たとも。なら“黒き悪魔”が誕生する以前は蘇りは出なかったのだろうか?

 聞いて、答えてくれれば良いんだけど。

 「不浄な魂ってのは“黒き悪魔”が出る以前はいなかったのかな?」

 あぁ、もっと、もっと聞きたい事が沢山ある。

 「詳しい事は説明できませんの。ただ言える事は…いえ、何でもありませんわ」

 まぁ、そうだろうね。そうでなくとも俺はエンゼルンで言う不浄な魂と言う疎ましい存在だ。そんな敵とも言える人物に天使族の細かい説明があるとは思えない。しかし今のエンゼルンはなにかを言いかけていた。

 ただ言える事、それはなんなのだろう?

 「歯切れが悪いね、プロセスは良いから結果を教えて」

 不浄な魂とはなんなのか、俺達はなんなのか。共通している事と言えば“黒き悪魔”と関わりを持っていたと言う事だ。しかし“黒き悪魔”に倒されたその他大勢の“奪う者”が全員蘇っている訳ではないんだからなんの説明にもならない。なら不浄な魂と“黒き悪魔”と言うのは無関係?

 「…分からない、かしらね」

 分からない?どう言う事だ?

 プロセスは良いと言った手前聞きにくい雰囲気だ。

 “奪う者”が蘇る理由について天使族がなにも知らないと言うのはエンゼルン自身から聞いた事がある。ならここで言う「分からない」と言うのは、もしかして“黒き悪魔”について、か?

 “黒き悪魔”と呼んでおきながら悪魔かどうかが分からない?それでも“黒き悪魔”の姿から元天使と言うのは間違いなさそうだったから堕ちた事に変わりはないだろう。天使が堕ちた場合、悪魔になるんだと思っていたけど…まさか堕ちた、と言う所から曖昧なのだろうか?いや、でもあの姿はどう見ても天使ではなかった。天使に見えないように装っていた?

 天使でも悪魔でもないなにか?人間ではなかったから魔物か?

 うん、俺にもサッパリ分からない。

 「答えを出す為に“黒き悪魔”を回収する。そんな感じなのかな?」

 だとしたら“黒き悪魔”が天使に見付からないように何かシールドのようなものを張っていると考えるのが自然か。

 「そうね。ですから、ガイコツンの居場所を教えて下さらないかしら?」

 話が戻ったと言う事は今日のエンゼルンは本当にそれだけが目的でここまで来たんだろう、聖水は手土産的な感じかな?いらないけどね。

 「さっきも言った通り、ガイコツンは旅に出たよ。それ以上の事は俺にも分からない」

 樹海に行くとしか聞いていないし、もし場所移動していたんなら俺にだって居場所は分からない。樹海に行ってから1度も連絡がないんだから現在どの辺りまで回復が進んだのかって事も。

 俺からなんの情報も聞き出せないと悟ったエンゼルンは、ごきげんよう、と優雅に挨拶し、6人分の聖水を置いて飛んで行った。

 そんな姿を見送りながら、秘密主義の困った子の事を思う。

 早く顔が見たいと心から願わずにはいられない、早く君をキリクと呼びたいから。

挿絵(By みてみん)

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