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悪役令嬢フランシエスの悪辣推理  作者: 羽羽樹 壱理


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時は過ぎて晩餐会。

 時は過ぎて晩餐会。


 今宵の晩餐会は、先日行われた第二王子《アルベルトの》生誕祭における、その二次会のような催しであった。


 会場中央に、第二王子アルベルトの姿が見える。その近くには、幼馴染であり彼の近衛騎士であるエドガーの姿も。


 そしてアルベルト、エドガーの幼馴染であるクラシスは、今日は常《つね》よりも少しだけ距離を置いた場所に、いた。


 今は、見知ってはいる顔――令嬢リゼットと、令嬢ソフィアだったか? にアルベルトは囲まれていたが、私に関係することではない、何も気にせずの足取りでアルベルトの元へと向かう。


「こんばんは、フランシエス様! 今日はいい夜ね」


 途中、位置の関係でクラシスとすれ違ったが、鼻息を吐《は》くような挨拶で応えた。――お前いま、また噛みそうになっただろ……。


「こんばんは。そう、いい夜ね。では、またのちほど」


「――……あ、あの、フランシエス様?」


「何かしら?」


「私、何かお気に障ることを、してしまいましたでしょうか?」


「……? ……何のこと?」


「私に向けられたフランシエス様のお顔が、少し怖かったものですから」


「まあ。気のせいではなくて?」


「そう、でしょうか……」


「ええ。あなたが何をしたというわけでもありませんもの」


「でしたら、よかったです」


「……ただ」


「……?」


「あなたは、随分とアルベルト様のお側に慣れていらっしゃるのね」


「幼い頃から一緒でしたから」


「そう。――いえ、幼馴染というものは、便利なものだと思っただけですわ」


「便利……ですか?」


「ええ。例えば――アルベルト様に婚約者がいたとしても、婚約者より先に殿下の機嫌を察することができますもの」


「…………」


「フフ。少し、便利な立ち位置でしょう?」


「そ、そんなつもりはありません。ただ、アルベルト様とは昔からこういう付き合いですから……」


「その『昔から』というものが、どうにも気に障るのです。例えば、この私の気が向いて、アルベルト様と婚約関係を結んだとしましょう。その時、あなたは、さしずめ目の上の瘤《こぶ》のようなものね」


「フランシエス様……」


「失礼、少し妄想遊びが過ぎましたわ。あなたには何の非もありませんわ。ですから、そんな顔をなさらないで」


「……はい」


「本当に冗談よ。それでは――」


 胸元から取り出した扇を振って挨拶する。


 そして私が前を向いた、その時。


「フ、フランシエス様!」


「あら、まだ何か?」


「アルベルト様に近づくのは、今夜は……おやめになってくださいませんか?」


「……? 理由が分からないので、お断りしますわ」


「……し、失礼しました。その――あの、フランシエス様」


「何か?」


「わ、私たち……仲良く、なれますよね?」


「ええ当然。それはもう、仲良しになれるでしょうね」


 顔だけ向けていた私は振り返り、いっぱいの微笑みで、それに答えた。



 

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