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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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8 王国暦376年8の月3の週 リリーへ

 リリーへ。


 お転婆娘のリリーが刺繍をできるようになるなんて……感慨深いな。ハンカチありがとう。初心者にしては上できなんじゃないか。褒め称えるほどではないけど、使わせてもらうよ。


 王都で発行されてる新聞が村で読めるようになるなんて……行商ってすごいな。俺たちの村なんて辺境の辺境、王都の情報なんて年に一度入ってくるか来ないかってほどの場所なのに。(さすがに言いすぎか?)

 情報も含めて村への物流が増えるのはありがたいけど、新聞を見られるのはちょっと恥ずかしい。父さんと母さんも読んだんだろ? 直接俺が書いた記事なわけじゃないけど、俺のことが書かれているのを読まれるのはこそばゆいものがある。次会う時どういう顔したら良いか分からねぇ。


 俺は直接その記事は見てないから細部までは分からないけど、俺の仲間たちは多分新聞に書いてあった通りだと思う。

 魔術師と剣士のことは以前の手紙でも少し触れたよな。魔術師のケインと、騎士団所属の剣士アドリー。それから、聖女の能力を持っている王女のパトリシア。

 実は魔術師のケインも貴族だ。俺も貴族には少なからず偏見があったが、ケインに会って、そんな貴族ばかりじゃないと知った。ケインは魔術師としての能力も高いし、性格も穏やかで、まさしく人格者といった奴なんだ。いつも俺の魔術訓練にも付き合ってくれて、頭が上がらないよ。ケインが一緒に魔王討伐に行ってくれるのは本当に心強い。


 ケイン以外にも、騎士団で仲良くなった奴は貴族の三男だそうだ。貴族と言っても三男となると家を継ぐわけでもないから、騎士として身を立てたいということらしい。貴族は遊んでいたり高圧的だったりするイメージがあったんだけど、そんな人ばかりではないと知ることができて良かったよ。


 そうやって俺に良くしてくれる人たちと一緒に訓練をすることができて、俺もだいぶ成長できていると思う。もちろんそれで確実に魔王が倒せるというわけではないけど、村にいた頃には分からなかった『魔』との戦い方も学べた。リリーもきちんと成長しているらしいからな。負けてられない。


 今気づいたんだが、今後も王都の新聞を販売するってことは、これからもあることないこと書かれてるかもしれない俺たちの記事を村の人やリリーや俺の両親も読むかもしれないってことか……? 途轍もなく不安なんだが。新聞の内容は王宮側である程度管理されているはずだけど、俺たちが直接確認しているわけではないんだ。変なことが書いてあっても信じないでくれよ。



 俺にとって村のみんなは心の支えだ。元々みんな家族みたいなものだし。そんなみんなが俺のことを信じてくれているっていうのは、それだけで力になるんだ。

 必ず魔王を倒して村に帰る。それが今の俺の目標だ。俺がいた頃よりもめちゃめちゃ発展した村を見る日を楽しみにしてる。



ククより。

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