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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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7 王国暦376年8の月2の週 ククへ

 ククへ。


 本当に、村の生活はとても便利になって、王様には感謝してもしきれないくらいよ。もちろん、そのきっかけになったクク自身にもね。

 私たちにとっては”村の仲間のクク”のままだけれど、勇者ククはやっぱり少しだけ遠い存在になってしまったようにも感じてしまうわね。だって村の生活にも大きな影響を与える存在ってことだもの。クク自身が変わったわけではないけれど……ちょっぴり複雑だわ。

 でも、魔王討伐の旅も、絶対に無事に終えて帰ってきてほしいと皆が願っているわ。


 年内には魔王の討伐に出るのね。世界の情勢を考えると、できるだけ早い方が良いというのはわかるわ。時間が経てば経つほど魔物は増えていくし、そうなれば傷つく人も増えてしまう。季節を一つ跨いでしまうことで増える被害は計り知れないと思うわ。世界の為を考えるならば、やっぱりできるだけ魔王討伐は早い方が良いものね。

 それでも私は、やっぱり心配になるわ。ククは大切な幼馴染よ。魔王討伐の旅には危険が伴うわ。ククは勇者だけれど、それは決して安全に魔王を討伐できることを保証するものではないでしょう? まだ先の話だけれど、クク。どうか無事に帰って来て。


 さて、あまりしんみりした話は私たちには似つかわしくないわよね。ここで最近の私の生活を披露するわ。


 最近は朝起きたら家の手伝いをして、日中はアニスおばさんのところでお店の手伝いと針子の修行をして過ごすのが定番ね。行商が来る頻度が上がったおかげで、おばさんの雑貨屋の商品もだいぶ増えたの。そのせいかお店も以前より賑わっていて、アニスおばさんもとても嬉しそうよ。

 今は客足が途絶えた空き時間を使って刺繍を教わっているところよ。まだ簡単な刺繍しかできないけれど、おばさんからは筋が良いと褒められたわ! ゆくゆくはオリジナルデザインの刺繍も作ってみたいと思っているの。もしかしたら、いつか王都で一流の針子として働くことだって夢じゃないかもしれないわね!


 王都と言えば、先日行商の人が王都で発行されている新聞を持ってきてくれたの。もちろん王都で発行されてから少し時間が経ってしまっていたけれど、これまでは王都の新聞に触れる機会なんてなかったから、王都の情報を知ることができてとても新鮮だったわ。


 やっぱり王都では勇者一行は注目の的みたいね。先日読んだ新聞にも勇者一行の記事が載っていたわ。光のオーラをまとった勇者、大剣を自在に扱う剣士、稀代の天才魔術師、そして、治癒魔術を使うことができる聖女ですって。”光のオーラをまとった勇者”の表現には思わず笑ってしまったけれど、ククは鮮やかな金髪だから、光のオーラをまとっていると言えなくもないかもしれないわね。


 それより驚いたのは、聖女様のこと。聖女様って第二王女様なのね! 王女様自ら魔王討伐パーティーに加わるなんて、すごいわ!

 新聞には、王女様は民の平安を取り戻す為に勇者とともに魔王討伐の旅に出ることを決めたと書いてあったわ。こういう時王族や貴族の方はあまり前に出ないイメージだったから、本当にとても驚いたの。きっととても責任感が強く、王族としての矜持も高い素晴らしい方なのでしょうね。なんだか貴族に対するイメージがだいぶ変わったわ。

 行商の人が今後も王都の新聞を販売してくれると言っていたから、とても楽しみよ。もちろん新聞に載るのは楽しい話題ばかりではないけれど、新聞によって広がる世界もあるものね。


 では、今回はこの辺で。


 追伸。刺繍の練習をしたハンカチを同封したので、もし良かったら使ってね。才能溢れるでき栄えを褒めたたえてくれてもいいわよ!


 リリーより。

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