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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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6 王国暦376年8の月1の週 リリーへ

 リリーへ。


 行商や郵便配達員の巡回が増えているのはおそらく王の計らいだと思う。勇者の出生地ってことで、王家としてはできるだけ便宜を図ってくれる方針らしいから。俺の影響で村の生活が便利になっているのなら、俺も嬉しい。


 文字の読み書きに関しては、俺も王都に来てからつくづく有り難さを痛感してるよ。村にいた時は文字自体使うことが少なかったからなくても困らないと思っていたけど、王都ではあらゆる面で文字が不可欠なんだ。勇者の勉強には座学もたくさんあるし、剣術や魔術の訓練でも書類が必要なことも多い。小さい頃は厳しいマルク爺さんが鬱陶しいと思ったりもしたけど、今は本当に感謝してる。


 実は、王都に来てから、俺が文字の読み書きができるという事に驚かれることも少なくなかったんだ。辺境の村出身だと、やっぱり文字の読み書きなんてできない事の方が多いからな。当初は、勇者教育の前にまずは文字の習得から始めることを予定していたらしい。座学担当の教師が俺が文字の読み書きができると知って、めちゃめちゃ喜んでたよ。そのおかげで勇者教育期間はだいぶ短縮されたって聞いてる。その分剣や魔術の訓練に時間を当てられるから、俺としても助かってるよ。


 実技訓練に多くの時間が割けるようになったから、魔王討伐への出発も早まるそうだ。本来は来年以降の出発が予定されていたらしいんだが、今のところ想定以上に順調に訓練が進んでいるみたいで、おそらく年内には王都を発つことになるだろうって聞かされてる。

 この先の予定はまだ完全に決定したわけではないけど、各地で魔物の発生も増えているから、やっぱりできるだけ早く討伐に出発して欲しいというのが皆の本音だと思う。もちろん俺自身もそう思う。俺がこうやって呑気に王都で勇者訓練を受けている間だって、どこかで誰かが魔物の脅威にさらされているかもしれない。俺が世界を救ってやる、なんて自負しているわけではないけど、俺が頑張ることで助けることができるなら、できるだけ多くの人を助けてあげたいと思うんだ。


 俺は、王都に来て世界はとてつもなく広がったと感じてる。

 今一緒に訓練を受けている仲間たちや王城で交流がある人たち、王都に住むまだ出会ったこともない人たち。この世界には本当にたくさんの人がいて、世界はこんなにも広いんだと思い知らされる。そして、その人たちの暮らしを守れるかもしれない力が俺にはある。一緒に戦ってくれる心強い仲間もいる。不安ももちろんあるけど、精一杯頑張ろうと思えるくらいには、俺の世界は広がった。


 リリーもいつか王都に来てみることには賛成だ。魔王討伐が終わったら俺も村に帰るし、なんなら王都観光にも付き合ってやるよ。リリー一人だと完全に『お上りさん』状態になるだろうからな。その頃までには、きっとリリーもだいぶ乙女らしくなっている筈だしな。

 俺も、まずは今できることから成長していこうと思う。リリーだって頑張ってるんだから、俺も頑張るよ。一人でも多くの人を守れるように。


 今日は決意も新たに、じゃあまた次の手紙で。


 ククより。

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