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拝啓、勇者さま ~勇者と幼馴染の手紙の記録~  作者: 文月 ふな


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5 王国暦376年7の月4の週 ククへ

 ククへ。


 手紙ありがとう。手紙が届く速さに心の底から驚いているわ。以前より行商が村を訪れる頻度が上がっているのも王様の計らいなのかしら。生活がとても便利になって、本当に助かっているわ。


 討伐仲間には魔術師の方と騎士の方がいるのね。魔王の討伐を任されるくらい強い方たちなのね。すごいわ。

 その人たちと仲良くやっているなら良かった。そういうのは戦友と呼ぶのかしら? 共に戦い成長できる相手は得難いものよね。とても強い人たちに囲まれてクク自身も成長しているなら安心だわ。


 ……実はね。ククは勇者なんだと頭では分かっているつもりでも、私の中ではどうしても幼馴染のククのままだから、魔王討伐なんてちょっぴり心配だったりもするのよ。だって小さい頃からククのことを知っているんだもの。「世界を守る」なんてそんな大それたことと、いつも傍にいたククがなかなか結びつかなくて。

でも強い仲間が共にいるのなら、きっと大丈夫ね。ククもその為に訓練や勉強をしているのだものね。


 勇者はただ魔術と剣を鍛えるだけだと思っていたのだけれど、他にも色々な勉強が必要なのね。勇者の勉強なんてさっぱり想像できないわ。王都には様々な学問の最高峰が揃っているでしょうから、それらを学ぶことはとても有意義なことだと思う。私ももし王都に行く機会があったら、まだ見たこともない世界の様々なことを勉強してみたいわ。知識は世界を豊かにしてくれるもの。


 知識と言えば、今こうやってククと手紙でやり取りができるのも、私たちに文字を教えてくれたマルク爺さんのおかげよね。小さい頃は文字なんて学んで何になるんだろうと思っていたけれど、いざこうして手紙を書くようになると、文字の大切さを思い知るわ。もちろん手紙だけじゃなく、文字が書けるおかげで街で仕事に就いている村人もいる訳だから、読み書きの影響力って計り知れないのよね。


 そう考えると、やっぱり私もいつか王都に行ってみたくなるわ。見たことがないくらいのたくさんの人や建物や知識に触れたら、きっと世界はもっと広くなる。ククは実際王都で暮らしてみて、どう? 世界は広がった? ククもまだ王都を知り尽くしているわけではないでしょうけれど、新しい世界を知ることができたら、私にも教えてくれたら嬉しい。もちろん、他の討伐仲間のことも教えてね!


 さて、私も成長の為にまずは村の中でできることを頑張るわ。最近はアニスおばさんの雑貨屋を手伝いながら針子もしているのよ。ちゃんと乙女らしい仕事だってしているんだから! 農作業の手伝いだけしていた子供の頃とは違うのよ!


 今いる環境はお互いに全く違うけれど、少しずつでも成長していけると良いわよね。次に会う時の楽しみも増えるし。


 それではまた、次の手紙で。


 リリーより。

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