第36話 どうか、見守っていてほしい
再び格納庫に戻ってみれば、ザフィーアは整備員たちに励まされていた。
研究員たちはデータの確認作業で忙しそうにしている中、整備員が「大丈夫だよ」や、「安心して」と声をかけているのが聞こえてくる。
何となくというよりも、絶対にこれだろうなといった原因をアルフィルクは察して、ザフィーアの足元へと歩み寄る。
「グラナートなら無事だ」
『本当かっ!』
「嘘を言ってどうするんだよ。ちゃんと確認してきたから安心しろ」
冗談にもならない嘘なんてつかないとアルフィルクが言い返せば、ザフィーアは深く息をついたように「そうか」と言葉を発した。
アルフィルクの言葉に整備員たちが「ほら、言っただろ」とザフィーアに声をかける。
「お前、ちょっとは落ち着けよ。整備員たちに迷惑をかけんな」
『そうだな。アルフィルクが確認してくれたのならば安心だ。大人しく整備を任せよう』
ザフィーアはすんっと大人しくなる。兄弟の無事が余程、嬉しかったのだろう。安心したといったふうに。
「いやー、助かった。ザフィーアが大人しくしてくれなくて、整備が進まんでな」
整備長がははっと大きく笑う。これでグラナートのほうに向かえるわと。
「グラナートのことは任せとけ」
『あぁ、頼む』
整備長がグラナートの元へと向かっていくのを見送っていると、入れ替わるようにポラリスがやってきた。
駆け足でアルフィルクの元までやってきて、「大丈夫」と拳を作って胸元まで上げる。
どうやら、身体検査に問題はなかったようだ。元気というのを伝えたかったのだなと、アルフィルクは気づいて「よかったな」と肩をぽんっと叩く。
「グラナートたちは無事だ」
「よかった、無事で」
ポラリスもほっと息をつく、胸に手を当てて。ザフィーアを見上げて「よかったね」と笑みを見せた。
あとは目覚めるのを待つだけだ。グラナートの解析が進めば、フィーニスコアの居場所だけでなく、何かしらの情報が手に入るかもしれない。
これからなのだとも思うが、今は作戦が成功したことを喜ぼう。アルフィルクは首から下がっている星のペンダントに触れた。
(俺たちを見守ってくれ)
あんたの意思は無駄にはしない。アルフィルクはぎゅっとペンダントを握りしめる。
それからゆっくりと離して、ザフィーアと話すポラリスに目を向けた。
少し前までは感情が読めなかったというのに、今では顔に出るまでにポラリスは明るくなっている。
成長なのか、変化なのか。アルフィルクには分からなかったけれど、泣き顔よりは良いと思った。
「アルフィルク、どうしたの?」
「別に。ザフィーアは整備員に迷惑かけんなって思っただけだ」
『それは、申し訳ないと思っている。が、グラナートを心配するのは当然だろう』
「だからって、迷惑かけていいわけじゃねぇだろ」
アルフィルクが誤魔化すようにそう言えば、ザフィーアは迷惑かけた自覚はあるようで、言い返すことができずにうむと呻る。
話を聞いていた整備員たちの笑う声がして、少しばかり周囲の雰囲気が和らいだ。




