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星神機ミソロジア―孤独を抱く瞳に白翼の道標を―  作者: 巴 雪夜
第六章:彼らの想いを胸に

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第33話 作戦決行の朝

 早朝四時、作戦決行時間まであと一時間。アルフィルクはパイロットスーツに着替えて格納庫にいた。


 ザフィーアの側では最終チェックが行われているせいか、整備員や研究員たちが慌ただしく行き交う。


 ポラリスも精神リンクの調整で器具が繋がれているので、アルフィルクはザフィーアの足元に腰を下ろしてその光景を眺める。



『アルフィルク、体調は大丈夫だろうか?』


「あぁ、大丈夫だ」



 ザフィーアの声が上から降ってきてアルフィルクは目を向けた。最終チェック中であっても起きている状態なので、彼は会話をすることができる。


 ザフィーアにも緊張というのはあるようだ。何か会話をすることで落ち着けようとしているような、そんな雰囲気を感じた。


 機械生命体とはいえ、人間と同じ感情を持ち合わせているのだから、緊張もするだろう。アルフィルクは納得しながら立ち上がってザフィーアを見上げた。



「お前の調子は良さそうだな」


『あぁ。最終調整が終わればいつでも動ける。が……』


「大丈夫だ」



 言葉を迷わせるザフィーアにアルフィルクは言う、大丈夫だと。不安を抱いている、そう感じたから。


 変わったと、思う。少し前までは現状に嫌悪し、苦しんでいた。けれど、自分は教わったのだ。アルフィルクは言った。



「みんなを信じろ」



 ザフィーアはアルフィルクの心情を察したように頷いた。自分は一人ではないのだと。



『私が不安を抱いていては、戦ってくれた戦士たちに申し訳ないな。スーザリオに叱られてしまう』


「そうだ。あのおっさんはこういう時は叱ってくるからな」



 俺だって叱られたもんだと、アルフィルクは少し前の事を思い出した。


 後悔なんてするなと言われた時の事を。そうだ、スーザリオならば、きっと「不安は誰だって抱くものだ」と言ってくれるだろう。



「やってやろうじゃねぇか」


『あぁ、やってやろう。私は必ず、グラナートたちを救ってみせる』



 彼らを闇底から救い出そう、ザフィーアの言葉にアルフィルクは拳を握ってみせた。


 突き出さされる拳にザフィーアは首を傾げる。そんな彼にアルフィルクは「こういう時は拳を重ねるんだよ」と教えてやった。



「喜びの時も、決意を示す時も、気合を入れる時も。拳を重ねて誓い合うんだ」


『なるほど。そういった文化というのが人間(ひと)には存在するのだな』



 納得したようにザフィーアは膝をついて屈みながらそっと拳を付けた。


 決意を分かち合う。例え、姿形が違えども、その想いは一つだと、アルフィルクはそう実感した。



「いいな、ワタシもやりたい」



 拳を下ろして振り返れば、ぷくっと頬を膨らませたポラリスが立っていた。いいな、いいなと近寄ってくる。


 どうやら、調律の最終チェックは終わったようだ。少し離れたところにいるタツノリが両手で大きな丸を作ってる。


 それは問題がなかったという意味。ポラリスもザフィーアも万全の状態ということだ。


 ほっと安堵した。アルフィルクは小さく息をついてから、「お前もやればいいだろ」と拳を突き出してみせた。


 ポラリスは小さな手を握り、アルフィルクの拳に重ねる。



「大丈夫。ワタシとザフィーア、みんながついているから」



 はっきりと紡がれる言葉にアルフィルクは頷く。ザフィーアも拳をそっと重ねる。人間よりも大きな拳を優しく。



『これより、作戦を開始します。各部隊配置に――』



 出撃のサイレンが鳴る。艦内に響くオペレーターの指示に格納庫にいたエクエス機のパイロットたちが駆けていく。


 アルフィルクは首にかけた星のペンダントに触れる。スーザリオがくれたお守りを見つめてから、ぎゅっと握りしめた。



「いくぞ」



 アルフィルクは前を向く、ポラリスはその隣を歩いた。


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