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星神機ミソロジア―孤独を抱く瞳に白翼の道標を―  作者: 巴 雪夜
第五章:生きる意味は此処にあった

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第28話 恐れてもいい、けれど迷っては駄目なんだ


「第一戦隊一機・第二戦隊三機・第三戦隊一機、他エクエス機十二機、撃墜及び大破」



 命の灯がまた消えた。アポストルスの破壊行動は日に日に増えていく。


 リーダー機が出てくることはないが、それ以外のアポストルスたちが各国に降り立っては破壊の限りを尽くそうとする。


 リュウグウ国や同盟国以外の国からも支援を受け、オリジンはアポストルスと戦っていた。


 長期戦になるのは予測済みだ。あれから季節は夏の終わりへと移り変わっている。


 アポストルスたちは連日、襲ってくるわけではなかった。数日、数週間おいてといった間隔がある。


 それはフィーニスコアが新たにアポストルス(我が子)を産み落とすには時間がかかるといことだろうと推察されている。


 けれど、それも間隔が早くなっている。複数個所同時に攻められるのは時間の問題だ、それは誰の目から見ても察することができた。


 アルフィルクは司令部で戦士として生涯を全うした彼らに静かに祈りを捧げて、格納庫へと向かう。ポラリスが調律値測定のためにザフィーアの元に残っていたからだ。


 普段はポラリスが報告をしてくれるのだが、定期測定は重要事項だったためにアルフィルクがやることになった。


 報告会で戦士たちの死を、負傷を聞かされるのにアルフィルクは慣れない。


 たまにしか出ないからかもしれないが、これに慣れたくはないなと思った。死に慣れてしまっては自分の心が落ち込んでしまうとアルフィルクは感じたから。


 格納庫に戻り、整備員たちに適当な挨拶をしながらザフィーアの元へと向かって、アルフィルクは目を瞬かせる。ポラリスがザフィーアの足元に座っていたのだ、膝を抱えて。


 いつもならモニター近くの椅子に座ってザフィーアと話をしているというのに。アルフィルクは疑問を抱きながらザフィーアを見上げれば、彼は無言で首を左右に振った。


 ザフィーアにもポラリスの状況が分からないようだ。調律値測定が終わってからずっとこうだと声小さめに彼は教えてくれた。



「どうした」



 声をかけるのが正しい行動なのか、アルフィルクは迷ったけれどポラリスに問いかける。


 膝を抱えて座っていた彼女はゆっくりと瞬きをしてから目を向けた。



「また、誰かが消えていった」


 

 命の灯が失われた。聞かなくても分かるのとポラリスは目を伏せる。報告しに行くたびに聞かされることだから、彼女は問うようには言わなかった。


 アルフィルクも返事を返さずにポラリスの言葉を待つ。少し間をおいてから彼女は「もう分からないの」と呟いた。



「生きる意味ってなんだろう」



 戦いで散っていく命に、彼らの生きる意味はそこにあったのだろうかと。


 命はこんなにも軽いものだったのか。彼らを見送って、心に残るこの晴れない感情が分からない。


 戦いに犠牲はつきものだ。それは戦うために生まれたポラリスが教えられてきたことの一つだった。犠牲無き戦いなど存在しないということは。


 それを理解していたつもりだったポラリスだが、これで良いのか不安を抱く。命の灯を燃やした戦士(彼ら)の意味を考えて。



「毎日、考えているの。彼らに生きる意味はあったのだろうかって」



 ただ、戦いに駆り出されて己の気持ちを我慢させる行為を強いた。


 無理矢理に死を覚悟させてしまったのでは。ポラリスはぎゅっと膝を抱える手に力を籠めた。



「これが怖いってこと?」



 失う事への、強いてしまう事への。ポラリスは震える声で問う。サファイアの煌めく瞳を涙で濡らして。


 アルフィルクは彼女の感情の揺れを、表れを初めて見た。戦うために生まれた存在であっても、恐怖を抱くのだ。

 

(眠れなかった原因はこれか)


 ポラリスが眠れないと言っていた原因はこれだろう。アルフィルクはこんなことを考えていれば、寝ることもできないと彼女の心情を察する。


 今、彼女になんと言葉をかけるのが正解か。アルフィルクには分からないし、正しさなど思いもつかない。


 

「怖いのは、当然だろうが」



 でも、放ってはおけなかった。アルフィルクは「怖いと感じることは当然だ」とポラリスの頭をぽんっと撫でてもう一度、言う。



「アルフィルクも怖い?」


「怖いに決まってんだろうが。でも、俺は教えられたんだよ」

 

  

 ずっとずっと、今でも怖い。でも、戦わねばこの星は死ぬ。それでは命の灯を燃やし尽くした彼らの想いを無駄にしてしまう、それだけは嫌だ。


 叱咤してくれた戦士たちの想いを無駄にはしたくないと、彼らから勇気の意味をアルフィルクは教わった。



「怖くてもいい。でも、迷ったら駄目なんだよ」



 自分の傍にいてくれたポラリスの隣に今度はアルフィルクが立った。膝を抱える彼女と目線を合わせるようにしゃがんで、アルフィルクは背を撫でる。


 ぐちゃぐちゃの感情を吐き出していた時に、ポラリスがやってくれていたように。


 それだけ言ってアルフィルクは黙る。ただ、背を擦っていれば、ポラリスが大きく瞬きをしてから「うん」と頷いた。


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