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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第二章 岩石の国と何かに限りなく似た物
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Rb.25 冤罪の踊子

 四人の誰もが予想できない事態に、四人は硬直する。

 兵士は四人に目を付け、踊子に指をさす。


「見つけたぞ!!捕えろ!!!」

「ちょっ!ちょっと待てよ!!」


 威圧的な声でずかずかと踊子に近づく兵士に、零は踊子の前に立って抗議する。


「踊子が犯人って、どこからその情報が流れたんだ!?」

「昨日の晩、冒険者ギルド付近の建物で、八幡 踊子と同じ服装をした人が侵入し、何か盗んでいる様子を俺ともう一人の村民が見た。あれほどきらびやかな衣装、見間違えるはずがない。よって、今から八幡 踊子を連行する。」

「昨日の晩って、具体的にいつ頃かしら?」

「24時ちょうどと言ったところだな。」

「24時………………?それはおかしいだろ。その時、俺達はレストランから出て帰っている途中だった。踊子が事件を起こしているはずがない。」

「そうね。それに、きらびやかな衣装を着ている人なんて、踊子ちゃん以外にもいるじゃない。見間違いよ。」

「しかし、実際に見たという証拠はある。再び事件を起こされては困るからな、仮に犯人じゃなかったとしても、真犯人がはっきりするまでこちらが用意した場所で過ごしてもらう。」


 兵士はそう言って踊子に近づく。それに対し零は兵士の腕を掴み、猫と耐笑は踊子の前に出た。


「………………そう言って、何人もの無実の人を捕えてきたのか?」

「その手を離せ。さもなくば、お前も共犯とみなし、八幡 踊子と同様にれ」

「質問に答えろ!お前は、お前達はそう言って無実の人を何度も捕えたのか!?いい加減おかしいって気づけよ!!ここまで何人捕まえてきた!?それなのにまだ事件が解決しない!!真犯人がはっきりするまで用意した場所で過ごせだと!?ふざけるな!!一方的に話進めんじゃねぇ!!聞く考えを持てよ!!!」


 兵士が言い切る前に零は叫び、辺りは静かになる。


「………………であれば、お前達が八幡 踊子の無罪を主張できると?」

「さっきからそう言ってる。昨日の夜、俺達は『アパタイト』に誘われてレストランに行き、そこでいろいろ話し合った。そしてレストランを出たのは日を超えたか超えていないかわからない程に暗い時間帯。少なうとも、23時は過ぎていたはずだ。レストランから猫の家に着くまで、1時間程かかった、その後は四人で同じ部屋に寝泊まりしていた。もし本当に踊子が犯人だと言うのであれば、踊子は皆で寝た後、家を出て窃盗事件を起こし、再び家に戻ったという事になる。猫の家から冒険者ギルドまで片道だけでに十分以上かかる程に距離はあるのにもかかわらず、踊子は事件を起こしたのか?」

「だが、俺は見た情報を基に判断したまでだ。犯人が八幡 踊子であることは変わりない。」

「そもそも、窃盗事件って、ライブがある日は起きなかったのよね?異例の可能性はあるかもしれないけど、窃盗の可能性だって低いと思うわ。」

「その…………犯人は、何か、持っていた……ですか………………?」

「何も持っていなかった。」

「袋も何も持っていないのに窃盗事件と決めつけるのは無理がありますね~♪不法侵入なら可能性はありますが~♪」

「…………だが、俺は見た。実際にこの目で見たんだ!八幡 踊子が犯行に及んでいる姿を!!」

「お前、さっきから見たってだけの主張ばっかりで、中身が全くねぇんだよ!いい加減認めろ!!踊子は今回の事件に関係していない!!」

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」


 兵士は零が掴んだ腕を回し、零を近くのテーブルにたたきつけて割った。


「零くんっ!!」

「有栖川さんっ!!」

「零君っ!!」

「いっっ………………たぁ………………………!!あのやろう………………………!!!」


 零は背中の痛みに耐えられず、兵士を睨む事しかできなかった。正気でないような目を見せる兵士は踊子に近づく。


「貴方………………それでも兵士なの!?事件とは全く関係のない零くんを怪我させるなんて、貴方それでもサフラーを守る人なの!!??」

「黙れぇぇぇ!!!この俺が見たんだ!!間違いなどないっ!!そこまで犯罪者を庇うのなら、お前達も犯罪者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 兵士が怒り狂ったように叫ぶ。猫と耐笑は武器石(ウェポンブロック)をそれぞれの武器に変え、戦う体制をとった次の瞬間、


「え~い♪」


 空気を全く読まないかわいらしく元気な声が、鈍い音とともに響き、兵士はその場に倒れた。


「「……………………えっ?」」

「いや~危なかったですね~♪♪この人、精神が狂っていましたね~~♪」

「し…四癒奈……ちゃん……………?」

「はいっ♪ど~かしましたか~♪」

「今…殴った…わよね………?」

「はい~♪そ~れはもう猛獣でさえ気絶するほどの威力をどか~んと~♪」

「………………」

(あの人…………想像していたよりも変な人かもしれない………………)


 零は心の中で言った。


「さてさて~♪零さんと兵士さんを治しましょうか~♪」

「回復魔法 パーン・セラピア~♪」


 四癒奈はそう言って回復魔法を使い、零と兵士を回復させた。


「あ……ありがとう………………」

「いえいえ~♪お気になさらず~♪」

「う……うぅ…………ん………………あ……?ここ、は…………」


 四癒奈は零の手を引っ張って起き上がらせると同時に兵士はゆっくりと起き上がる。


「俺………なんで冒険者ギルドにいるんだ………………?」

「はぁっ!?覚えてないの!?貴方ついさっき踊子ちゃんを窃盗事件の犯人だって決めつけて連行しようとしていたじゃない!!」

「連行?俺が………?」

「それに…有栖川さん………を、テーブルにたたきつけ、て…………破壊、した…………………です………」

「えっ!?俺がか!?」

「貴方しかいないじゃない!!」

「これ……四癒奈が強くたたきすぎて記憶が吹っ飛んだんじゃないか………………?」

「いいえ~14は気絶する程度の威力で殴りましたよ~♪記憶が飛ぶほどの威力ではありませんよ~♪」


 零と四癒奈はこそこそと話す。すると冒険者ギルドの出入り口からもう一人の若い兵士が現れた。


「ついさっき、ここで兵士が暴れているとの報告が入った!そいつはどこにいる!?」

「あっ~♪兵士さ~ん、ここですよ~♪」

「お、俺が暴れた………!?ちょっと待て!!俺は何もしていない!!」

「この惨状を見てそれが言えるの!?貴方おかしいわよ!!」

「お前………テーブルも壊したのかよ………!!君達、本当に申し訳ない!!テーブルは我々が弁償し、後日お詫びの品を渡す!」

「び、びっくりしました…………きゅ、きゅうにその人が近づいて………………話をきかず、ずっと、八幡さんが犯人だって………言ってて………………」


 涙目で体をわずかに震わせた耐笑が少し震えた声で言う。


「なるほど………………って、ポ、選ばれた数字(ポインター)の方々じゃないですか!!この度は、本当に申し訳ありませんでした!!!」


 若い兵士は正気を取り戻した兵士の頭を掴み、同時に頭を下げる。


選ばれた数字(ポインター)にこんな事をするなんて………お前、後で何言われるか分かったもんじゃねぇぞ………………」

「待ってくれ…!俺は本当に何も覚えてないんだ………!!」


 二人の兵士はそう言って冒険者ギルドを出た。


「「こ、こわかったぁぁぁぁ………………」」


 耐笑と踊子は互いに抱き合い、腰が抜けたかのようにぺたんと座って言った。


「なんだったんだ………?急に入ってきて踊子を犯人扱いする上に兵士とは思えない振る舞い………正気に戻ったかと思ったら何も覚えてないって言うなんて………………」

「かなり狂っていましたね~♪」

「四癒奈ちゃんも、突然あの人の頭を殴った時は驚いたわ……………」

「まぁまぁ~あの方を放置するとさらに被害が出ていたでしょうし~、最終手段を使ったまでですよ~♪」

「最終手段………」

「それにしても、あの方は少し不思議でしたね~♪」


 四癒奈は兵士が連れていかれた方に視線を向けて言う。


「そ、そうなんですか………………?」

「はい~♪14の経験則なんですが~、狂っている方は基本、何も覚えていない事はないんですよ~♪必ず、どこか記憶しているはずですよ~♪ですが、あの方は最初から最後まで何も覚えていないと言っていました~♪」

(経験則………じゃあ、四癒奈は今までこのような対処の仕方をしてきたのか………??)

「その言葉が嘘だったって事じゃないかな?」

「それもありますけど~ど~も噓のようには聞こえなかったんですよね~♪本当に、何も覚えていないんだと思います~♪まるで、何者かに操られたかのような感じ、ですね~♪」

「何者か………?」

(『アパタイト』の仕業か…………?いや、そんな事はない………か………………)


 四癒奈はふと時計を見て言う。


「そろそろお別れの時間ですね~♪」

「この後、何かあるの?」

「これから、リベルタージュに行って13と話をしようと思っているんです~♪この日に起きた事、皆さんに情報を与えた事など、い・ろ・い・ろ、です~♪」


 四癒奈は人差し指をリズムよく動かして言う。


「皆さんと会えて本当に良かったです~♪それでは、また会いましょうね~♪」


 そう言って四癒奈は兎の耳をパタパタと羽のように動かしながら冒険者ギルドを出た。


(四癒奈の耳………本当にどうなっているんだ………??)


 零は疑問に思っていると、どこからか小さな笑い声が零の耳に届いた。


(………………?)


 零は辺りを見渡す。


「零君?どーかしたの?」

「いや、なんでもない。」

(この声………どこか聞き覚えが………………ま、いいか。)

「さて、この後どうする?情報も集まったし、次は何をすべきか決めないと、だな。」

「そうねぇ………」


 零は両腰に手を添え、猫は顎に手を添えて考える様子を見せる。


「遠距離攻撃できる仲間が欲しいわ。まずはその人を探しましょう。」

「えっ?なんで?」


 猫の提案に、踊子は首をかしげる。


「零くんの魔法を何度か見てきたけど、私としては、あまり零くんに魔法を使わせたくないわ。耐笑ちゃんは支援重視の魔法使いだし…攻撃魔法を使える人、もしくは弓矢使いが欲しいわね。」

「同感だ。」

「そ……うですか…………では、いま、ここで、募集、します、か………………?」

「いや、その必要はない。実は、一人このパーティーに誘いたい人がいるんだ。」


 零の言葉に、猫は察し、目を見開いて零に近づき、両肩をガシッと掴む。


「れ、零くん、まさか…まさかあの人じゃないわよね………………?」


 冷や汗を流す猫に、零はたじろぐ。


「ま、猫…………近いぞ………………いや、でも……………あの人、しかいない。あの人は相当な実力の持ち主だ。仲間に入れて損はないと思う。」

「大丈夫なの!?出会ってすぐに攻撃されると思うわよ!?」

「ええっと………………あの人、とは、どの人、でしょうか………………?」

「行ってる意味が、全っっ然わかんないんだけど………」

「とりあえず、聞くだけ聞いてみるのはどうだ?勧誘してダメだったら、別の人を探そうか。」

「そ、そうね………あの人が私達のパーティーに入ってくれる気がしないのだけど………」

「それは、あの人次第だ。」


 零と猫の会話についていけず、耐笑と踊子は困惑している。


「それじゃ、夜まで待つとするか。」

「「………………………………えっ?夜??」」




 その日の夜、零達は依然来た墓場へ向かった。そこには墓の前でじっと立っている七彩の姿があった。

 雲一つない満天の星空の下で、零達は七彩から数メートル離れた場所で足を止める。七彩は指先一つ動かないまま、低くも高くもない声で言う。


「………………………………何の用だ。」

「勧誘を、しに来た。」


 零の言葉に、七彩はゆっくりと顔を零に向ける。


「勧誘………………?」

「そう、単刀直入に言おう。一緒に、事件の犯人を捕まえないか?」


 零は七彩に一歩近づき、右手を前に出す。それに対して七彩は体を零に向けて目をわずかに開ける。


「犯人の目星は、ついているのか?」

「あぁ、犯人は、おそらく『アパタイト』だ。」


 数秒、辺りが静寂に包まれる。


「…だろうな。」

「そ、その、反応………もしかして……………射手矢、さん…は……犯人が、わかっていた…………………ですか?」

「無論だ。あの二人のうち、銀髪の男…チェン・ジューだったか……あいつが、他人に変装しているところを、おれはこの目で見た……」

「「えっ!!??」」


 七彩の言葉に、四人は一斉に驚きの声を上げる。


「じゃ、じゃあ、本当にあの二人が事件の犯人だったのか……!?」

「そ、そん……な…ぁ………」


 事実であり現実でもある事を知った踊子はふらつく。


「踊子ちゃん、しっかり!」


 猫は踊子を支え、踊子は俯いたまま動かない。


「八幡さん……!大丈夫……です、か………………!?」


 耐笑の質問に、踊子は返さない。ただ、俯いているだけだった。


(それほどショックだったのか……それにしては、四癒奈が事実を伝えた時、ここまでショックになっているようには見えなかったけど………)

「…………………ゆ、」

「「ゆ……?」」

「ゆるさなーーーーーーーーーーーーい!!!!!!」


 踊子は目尻を吊り上げ、両手を握りしめて強く上に突き出す。


「あの二人が事件の犯人だったなんて!!!本っっっ当に許せない!!なんだかイライラしてきたぁ!!!!」

「や、八幡さん………!!??いったん、いったん落ち着いて……ください………!!」

「そうよ踊子ちゃん!!とりあえず落ち着きましょう!?」

「騒がしいなお前達………」


 暴れようとする踊子を必死に抑える猫と耐笑の様子に、七彩は呆れる。


「………で、なぜ、おれを勧誘する?事件の解決なら、お前達で、十分じゃないか?」

「いや、実はこのパーティー、遠距離攻撃ができる人がいないんだ。」

「………………………おれに、その役割をしろと?」

「そのとおりだ。」


 七彩はわずかに嫌な表情を見せる。


「………………………断る、と言ったら?」

「その時は諦めて俺達は帰るよ。もともと、断られる事を前提にここに来てるからな。」


 零の言葉に、猫は「断られる前提だったの………!!??」というような表情を見せる。


「そうか………」


 七彩は目線を墓に向け、数秒後、目線を戻して零に近づく。

 一歩、また一歩と近づくその様子は、まるで威嚇しているようにも見えた。


(攻撃する気配はない………さて、どう返してくるのか…………………)

「有栖川 零………『アリス』と呼ばれている選ばれた数字(ポインター)………だったな………………」

「あぁ、そうだ。ここにいる人は全員選ばれた数字(ポインター)だ。」

「そう、か………」


 七彩は零の前で足を止め、すっと手を差し出す。


「事件を、解決するだけならば………手を貸す。おれも、選ばれた数字(ポインター)だからな…………………」

「っ!そうだったのか………!!なら、一緒に頑張ろうか!!」


 零はにっと笑い、七彩と握手した。


「よろしくな、七彩。」

「よろしく…………」

次の話は6月28日に投稿予定です。

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