Rb.23 ジュエルアント
四人が武器を構えると、ジュエルアントは危機を察知したのか、魔法陣を出した。
「えぇぇぇぇぇっっっ!!??魔法が使えるの!?」
踊子が驚いていると、魔法陣からは人の頭ほどの大きさの岩が飛び出し、四人に向かって直進する。飛び出した岩は速くはなかったが、重傷を負わせるには十分な速度だった。零と踊子は岩を避けたが、猫は拳で岩を粉砕した。
「思いのほか脆いわね。これくらいなら拳で十分だわ。」
「踊子、挟み撃ちだ!」
「わかった!!」
零は右から、踊子は左から走り、ジュエルアントをはさんで近づく。ジュエルアントは左右に魔法陣を出すと同時に後退し、魔法陣からはついさっき出した岩と同じ大きさの岩が飛び出す。
「こいつ素早いな!」
零と踊子が岩を避けていると、ジュエルアントはジグザグに移動しながら左右に魔法陣を出し、次々と岩を出す。
「速いわね…アントとは思えないわ。」
猫は高く飛び、ジュエルアントを上から近づく。
「格闘技 爪牙!」
猫は右手を上に、左手を下に動かし、両手で挟むような動作をする。すると猫の爪からは牙のような斬撃が現れ、ジュエルアントの首へ向かう。そのまま直進すればジュエルアントの首に当たるが、ジュエルアントはわずかに前へ進み、体の宝石に直撃した。体にはめ込まれた宝石は何一つ傷ついておらず、依然として輝いていた。
「っ!?まさか、わたしの攻撃を察知したというの!?」
「状況の把握ができるほどの知能があるって事か。地味に厄介な……………」
猫は地面に着地すると、ジュエルアントは猫に向けて魔法陣を出し、そこから宝石を出した。宝石は猫に向かって一直線に進む。一見何の変哲もない宝石に見えたが、その宝石はすべてが軽く触れるだけで斬れそうなほどに鋭くとがっていた。
「あぶなっっっ!!いわねぇ!!!」
猫はその場でかがみ、宝石を避ける。
「ジュエルアントって魔法使えるうえに知性もある…ロックアントとは段違いの強さだな…」
「魔法が使えるなんて知らなかったわ…でも、何かおかしいと思わない?」
「何がだ?」
「あのジュエルアント、魔法をたくさん出しているのに動きが鈍っていないわ。ジュエルアントって、あんなに魔力を持っていたかしら?」
「俺は初めて戦うからわからないな…でも、かれこれ十回は魔法を出している。それでも元気なら、あいつはかなりの魔力を持っていると考えた方がいいな。」
「ロックアントとジュエルアントって、体が硬くて…弱点が首しかない…ですよね…?どのようにして、首を攻撃すればいい………のですか?」
「そこなんだよねぇ………自身の体を利用して攻撃を防ぐなんて、頭が良いよねー………」
四人が集まって話していると、ジュエルアントは前に大きな魔法陣を出す。
「っ!何か来るぞ!」
零が叫ぶと、魔法陣からは人よりも大きい岩が飛び出し、四人に向かった。
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???大きすぎるよーーーーー!?」
「まさかこれほどの大きさの岩も出せるとは……!!」
四人は右に避け、零と猫はジュエルアントに近づく。
「創作技 半回転斬り!」
「格闘技 爪牙!」
零は爪を剣に変え、下から救い上げるように剣を振り、斬撃を出した。猫は再び高く飛び、上から牙のような斬撃を出す。しかし二つの斬撃もジュエルアントの首に当たる直前でジュエルアントが前へ進み、体で受け止める。
「気づかれたか…!」
「まだまだ、いくわよ!!」
猫は手が届くほどの距離までジュエルアントに近づき、首を狙って爪で攻撃する。ジュエルアントは猫に向けて魔法陣を出しながら数メートル後退した。零は猫の腕を引っ張って無理やり移動し、魔法陣から飛び出した岩を避けた。
「助かったわ!」
「そこで魔法陣を出すとは思わなかった…カウンターもできるという事か。」
「そうなると厄介さが増してきたわね。」
「槍技 奈落落とし!!てりゃあ!!」
踊子はジュエルアントに近づき、槍を振り下ろしたが、槍はジュエルアントの体に当たり、ガキィィィンと音を鳴らした。槍はジュエルアントの体と衝突した事で振動し、踊子の手に伝わった。
「かっっっっっっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
踊子はあまりの硬さに叫び、槍を落としそうになった。
「踊子っ!」
「硬すぎる…!でも、それほど痛くなかったような……」
「わ、わたしが、八幡さんに耐性を付与した…ですから……」
耐笑が杖をぎゅっと握りしめながら言う。
「そ、そうなの!?ありがとう!」
踊子は耐笑に顔を向けて感謝すると、ジュエルアントは踊子に向けて魔法陣を出した。
「ちょっ!踊子!!前っ!」
「へっ?」
魔法陣からは岩が飛び出したが、猫が岩を粉砕した。
「危なかったわね…数秒遅れていたら頭が吹っ飛んでいたわよ。」
「っすーーーー………………ごめん………………………」
踊子が小さな声で謝る。
「別にいいわよ。それより、ジュエルアントの倒し方を思いついたわ。零くん、風魔法は使えるかしら?」
「奇遇だな、俺も作戦を思いついたところだ。」
零は剣を武器石に変え、ジュエルアントの足元に魔法陣を出した。ジュエルアントは魔法陣に気付いたのかその場から離れようとする。
「魔法陣にも気づくのね。でも、逃がさないわよ!!踊子ちゃん!ジュエルアントを魔法陣から出られないよう攻撃して!」
「えっ!?わ、わかった!」
猫と踊子はジュエルアントが進む方向に先回りし、魔法陣から出られないよう攻撃する。
「創作魔法 風遊気流!」
零は唱えると、魔法陣から真上に強風が吹かれ、ジュエルアントは上に吹き飛ばされた。
「今よっ!!」
零は武器石を剣に変え、空中にいるジュエルアントへ走る。ジュエルアントは空中にいながらも四方八方に魔法陣を出し、近づけまいと言わんばかりに岩を出す。零と踊子は岩を避けつつジュエルアントに近づいていたが、猫は岩を拳で粉砕し、一気に距離を縮める。
「さぁ、くらいなさいっ!!」
「格闘技 爪牙!!」
猫はジュエルアントの首を攻撃し、頭と体を分断した。するとジュエルアントは動かなくなり、地面にドスンと重い音を鳴らして落下した。
「首も、少し硬かったわね。ジュエルアントって、こんなにも厄介だったのね……………」
「魔法が使えるとは思わなかった………だが、何とか勝ててよかった。」
「お、お疲れ様…………です………………」
「うぅー………あたし何もしてない………」
「そ、そういう時もあるわよ。今回は仕方がないわ。」
猫が踊子を慰めている中、零は魔力回復ポーションを飲んでいた。
「………ねぇ零くん。」
「ん?どうかしたのか?」
「巣を掘り出した時から思っていたのだけど、無茶していないかしら?」
「無茶?俺が?」
零が自身に人差し指を指して言うと、猫は軽くうなずく。
「えぇ、あなた、魔法を使った後は必ずそれを飲んでいるわよね。あなたが使う魔法って、それほど危険な物なの?」
「危険……って言う程ではないな。ただ、消費魔力量が激しいだけ。リベルタージュにいた時は、一回の魔法でフラフラになる程魔力量の消費が激しかったんだけど、最近はマシになった。ポーションを飲まなくても、多少は歩けるけど、後で何が起きるかわからないし、飲んでおいた方がいいでしょ?」
「そういう問題じゃないわよ………」
猫はため息をついて零にずいっと近づき、指を指して言う。
「零くん、あのね、私はなるべく魔法を使わないでと言いたいの。あなたの魔法で今回は上手くいったけど、今後上手くいかなかった場合どうするの?もしポーションが切れていたなら、どうするの?」
「そ、それは…………」
「魔法を鍛えるなら魔法を使うべきって常識を皆持っているけど、使うリスクの大きい魔法は極力使わない方がいいわ。いつか、それが原因で死ぬことだってあるんだから。これは、私からの注意とお願いよ。」
「わ、わかった………」
「本当に?」
うろたえて返事する零に、猫は距離を詰めて問う。
「本当だから………!」
「そう…なら、この話は終わりにして、ジュエルアントの素材を運びましょう。」
猫はジュエルアントの死骸へ向かった。
(魔法を使った事で死ぬ………本当にそんな事があるのか………………?いや、十分にあり得るか………)
四人はジュエルアントの殻を剥ぎ取り、冒険者ギルドへ向かった。
四人は冒険者ギルドに着き、ジュエルアントの殻を渡した後、近くの四角いテーブル席に座って休憩した。
「ふへぇぇぇぇ…………つかれましたぁ………………………」
「思わぬ強敵との戦闘だったからな…疲れるのも当然だ。」
「この後どうしようかしら、昼ご飯を食べるにはまだ早いわよね。」
「そうだな……もう情報収集を始めるか?」
「期待はできないけど………しちゃおうかしら?」
「ま、するにしても、もう少し時間が経ってからだな。耐笑と踊子が溶けているし。」
零と猫はもはや原形をとどめているかさえ怪しいほどに溶けている耐笑と踊子に目をやる。
「あぁそうだ、猫に聞きたい事があるんだけどいい?」
「あら、何かしら?」
「猫って武闘家だよな。武闘家って拳と脚のみで戦うのか?」
「基本はそうね。でも人によるわ。私の場合、普段は爪で、たまに拳と脚を使うわ。」
「爪……そういえば戦闘時に使っていたな。」
「ええ、爪は拳と違って斬撃も出せるのよ。大抵の人は拳か脚のみで戦うのだけど、私は基本爪ね。」
「……猫族だからか?」
零の言葉に、猫は少し静かになった後、くすっと笑った。
「なぁにそれ?あなたにとって猫は引っ掻く事ばかりの生き物って言いたいの?」
「いや、そういうわけでは………」
猫の反応に、零は手を振って否定する。
「まぁ、そうねぇ…どうなのかしら……考えた事もなかったわね………」
零はふと猫の綺麗に整えられた爪を見た。
「………なぁに零ちゃん?私の手を見て………気になっちゃった?」
「零ちゃん」の言葉に、零は背筋が凍った
「っ!?」
「あっ…ご、ごめんなさいね?ちゃん付け、嫌だったわよね?」
その様子に猫は察し、すぐに謝った。
「いや、大丈夫だ。でも、できる限り、控えてほしい。」
「えぇ、気を付けるわ。ところで、私も聞きたい事があるのだけど、零くんって、自分で作った魔法でしか使えないの?」
「そう思っていたんだけど、なぜか、アイテムボックスは使える。」
「あらそうなの?じゃあ他は?」
「いや、それだけだ。俺が使えるのはアイテムボックスと創作魔法だけ。なぜなのかはわからないけど………」
「不思議ねぇ…いつか原因が明かされるといいのだけど………」
「すみませ~ん、すこ~しお時間いただいてもいいですか~?」
突然、天使の羽のペンダントを身につけた桃色の垂れた長い兎の耳とロングのおさげ、ハイライトは入っているもののベタ塗りされたかのような赤いグラデーションの瞳、そして柔らかく、優しい表情をした女性が二人で話していたところに割って入った。
「えっ………?急になんだ………?」
「いえいえ~、ちょ~っとお話ししたい事がございまして~、もしこの後予定がないのであれば~お時間をいただきたいな~と~♪」
まるで歌っているかのようにふわふわした声で話す女性に、二人は困惑し、こそこそと話す。
「これ、大丈夫か………?」
「敵意は感じられないけど、なんだか怪しいわね……少しだけなら、大丈夫なじゃないかしら………………」
「大丈夫ですよ~、敵ではありませんので~♪」
「いや、怪しすぎるだろ………」
零がぽつりと言うと、女性は人差し指を顎に当てて言った。
「リベルタージュで、『13』が選ばれた数字に会ったとおっしゃっていまして~、サフラーで彼らに協力してあげてほしいと頼まれたんです~♪」
「『13』………………?っ!?って事は、君は『知恵の数字』のメンバー!?」
零は驚きのあまりテーブルに少しだけ身を乗り出した。
「そのと~り~です~♪」
その反応に、女性は小さく拍手をして言う。
「14は『知恵の数字』の『14』、 十王 四癒奈 と申します~♪よろしくお願いいたします~♪」
四癒奈と名乗る女性はそう言って軽く頭を下げた。
「『知恵の数字』って、何…?」
「世界中を探索している人達、って、言った方がいいかな。敵ではない。むしろ、この人も選ばれた数字の一人だ。」
「あら、選ばれた数字なの?なら、一緒にサフラーの事件を解決してくれないかしら?」
「すみません~、協力するとは言いましたが、最後まで協力するという事ではないんです~…14がする事は、事件解決の鍵をお渡しするだけなんです~」
「事件解決の鍵?」
零ろ猫は首をかしげる。
「はい~♪具体的には、犯人の特徴、暴き方、倒し方です~♪」
「倒し方………?条件が必要なのか?」
「それは~人によりますね~♪あまり気にしなくてもいいかもです~♪」
「なるほど、それで、特徴は?」
「それをお話しする前に、お二人を起こしても大丈夫ですか~?」
「そうね。そうしてくれると助かるわ。」
「できれば、氷魔法を使ってくれると助かる。」
「まっかせてくださ~い!それでは、いきますよ~♪」
四癒奈は氷魔法を唱え、耐笑と踊子を回復させた。
「んー………はっ!!こっここは………?」
「天国、でしょうか…それとも、地獄………!?」
「何を言っているんだ………?」
「うぇっ!?あああ、貴方誰ですか!!??」
「はじめまして~『知恵の数字』の『14』、十王 四癒奈と申します~」
「寝起きで悪いけど、今から四癒奈が重要な話をするから聞いてほしい。」
「えっ!?なんで!?」
「窃盗事件と冤罪事件の解決方法を知っているからよ。」
「うぇぇぇぇ!!??じゃあその人に任せればいいじゃないですかぁ!!」
「すみませんがそういうわけにもいかないんです~。ここは14の出る番ではありませんので~」
「ど、どういう事ですか………?」
「それはさておきですね~、犯人の特徴について、お話ししましょうか~♪」
四癒奈はそう言って席に座った。
次の話は6月20日に投稿予定です。




