Rb.22 耐性
「っ!!??」
零は放たれた矢を剣ではじいた。
「あっぶねぇな!!急に襲ってくるなよ!!」
「お前達が墓荒らしと言うのであれば……早く処理すべき………そうだろう?」
七彩は墓から離れ、黄色の矢を放った。それに対し零は剣ではじこうとするも、矢と剣が衝突した瞬間、剣に電気が走り、零の体に感電した。
「いっっ!?」
「零くんっ!!」
電気を浴びた零は剣を落とし、片膝をついた。
(今のは…!?もしかして矢に電気を帯びていた……!?)
七彩は考える時間さえ与えず、零達に黄色の矢を五本放つ。
「皆、あの矢に触れるな!」
「えっ!?そーなの!?」
「わかったわ!」
踊子は状況を理解できていないにもかかわらず、零の指示に従って矢を避ける。四人は左右に分かれて攻撃を避けた直後、七彩は赤色の矢を零に向けて放っていた。
「零くん!あの人が放つ矢、魔力が込められているわ!」
零は赤色の矢を避けると、赤色の矢は零がいた場所に刺さり、大きくも小さくもない炎を出した。
「やっぱりそうか。色と魔法の種類を見るに、黄色は電気、赤色は炎と言ったところか。」
七彩は何も言わず、矢を零に向ける。
「……………………」
しかし七彩は標的を猫に向け、水色の明らかに電気をまとわせた矢を放った。
「えっ!?私!?」
「やばいやっばい、やばいよ!!!絶対、あの矢に当たったら重傷だよ!!」
猫は耐笑を背負いながら矢を避ける。水色の矢は地面に刺さると、雷が落ちる音を鳴らした。
「ふぁぁ!?ななな、なんですかぁ!?すっごい音が鳴りましたよ!!??」
あまりの音の大きさに、耐笑は目を覚ました。
「ふぇっ!?いいい、今どういう状況なのですか!?」
「そうね…墓守に誤解されて襲われているって、とこかしら……」
「ど、どうしてですかぁ!?」
(あの人、急に標的を俺から猫達に変えたな…なぜだ…?)
零はふと後ろを振り向く。するとそこには一つの墓があった。
「っ!」
(なるほど、俺の後ろに墓があったから、当てるわけにもいかないと標的を変えたのか。それなら…)
零は墓から離れ、何もない地面の上に立つ。
「墓守さんよ、ここなら、十分に戦えるんじゃないか?」
零の言葉に、七彩は零に目をやる。七彩は何も言わず、零に水色の矢を放った。
(水色…という事は、雷か。)
零は右に避けたが、矢が零の真横に到達した直後、矢がはじけ、水を放出した。
「えっ!?」
空中で四方八方に飛び出た水は零の目にかかった。
「くっ!目に水がっ!?」
「何その攻撃!?」
七彩は目をこする零に向けて水色の矢を放つ。
「っ!零くんっ!!」
猫は叫び、耐笑を下ろして零を庇う。矢は猫の右肩に直撃し、雷を落とした。
「きゃあっ!!」
「猫っ!?」
零は目を開け、雷を落とされた猫を見る。
「猫ちゃんっ!?だだだだ、だいじょうぶ!?」
踊子は叫んだが、猫は困惑した表情で七彩を見ていた。
「…………あらっ?なんともないわ。どうしてかしら?」
「……………?」
「えっ…?」
猫は右肩を見る。右肩には矢が刺さった跡もなく、地面に落ちていた。
「…もしかして、電気に耐性があるのか?」
「いいえ、そんな事ないはずよ…?私はいたって普通の獣人だもの。」
「あ……えっ…………と………………」
困惑している四人に、耐笑は片手に杖を持ちながら、おずおずとした様子で軽く手を上げる。
「それは…………わたし、の、魔法の力……………です…………」
「「……………えっ?」」
「その……わたし、防御魔法が得意…で、その中でも、耐性を付与する魔法が得意………です……」
「耐性を付与する魔法…?」
零と猫と踊子が首をかしげていると、七彩は零に向けて赤色の矢を放つ。
「っ!?」
零は七彩が矢を放ったことに気付かず、矢に目を向けた時には目の前まで来ていた。零はとっさに避けようとするも、矢は零の首に直撃した。矢は零の首を貫通するどころか、刺さりもせず、地面にポトリと落ちた。
「いっ…たくない………?」
(熱くもない……これが耐性………?)
「そう、でしょう…!それが、わたしが得意な、耐性魔法…です………!!」
耐笑は誇らしげに言う。
「なるほど……すごいな…………!!」
「ふふ……そうでしょうそうでしょう……!!」
零の反応に、耐笑はもっと褒めてといわんばかりの態度をとる。
「これなら、あの墓守と戦える!」
「へぇ…………」
零は三人を守ろうと前に立ち、やる気に満ちた表情をする。それに対し七彩はとてもつまらなさそうな反応を見せる。すると七彩は弓を武器石に変え、墓の前へ移動する。
「……………………」
「…………?攻撃しないのか?」
「不利な状況だというのに戦う必要なんてあるか?」
「それもそうか…」
「お前達が本当に墓荒らしでないというのならさっさとここを出て行ってくれ。虫の居所が悪いんだ。」
七彩はそう言って伸椰の墓をじっと見る。その様子に零は何か言いたげな表情をする。
「……………………なんだ。」
「また、ここに来てもいいか?」
零の言葉に、七彩はわずかに顔を零に向け、すぐに墓へ顔を向けた。
「…………何のつもりだ?」
「七彩、君は明らかに不健康な表情をしている。あまり眠れていないんじゃないか?不眠の原因が墓の管理である事なら、菅理を手伝おうと」
「いらない。」
零の提案に七彩は食い気味に拒否する。
「おれが不眠なのは、もう二度と夢を見ないようにするためだ。おれは眠らないよう、ここで会話をしている。」
「夢………?」
「いいからさっさと帰ってくれ。お前達には関係ない。」
これ以上話をしても意味がないと判断した零は猫達のところへ行く。
「行こう。」
「そうね。行きましょう。」
四人は墓場を通り過ぎ、猫の家へ向かった。距離が遠くなっていく四人の姿を、七彩はじっと見つめていた。
「有栖川 零…………例の『アリス』、か…………ならば、他の女共も…………」
七彩は墓に目を向け、何も言わずじっと見ていた。
四人は猫の家に着き、家に入って寝る支度を整え、横一列に並んで眠りについた。
翌日の朝、零は目を覚ました。
「ん…………朝か……………………」
零は体を起こし、軽く背伸びする。零は寝ぼけたままカーテンを開け、柔らかい日差しを浴び、窓を開ける。新鮮な空気が部屋の中に入ってくるのを確認しながら、零は振り返った。
「皆、起きろ、朝だ。」
零はそう言って猫の布団をめくる。そして零の目に映ったのは、はだけたまま眠る猫だった。
「っっっっっっ!!!???」
零は即座に布団を戻し、背を向け、目を閉じ、胸を掴み、脳内で言葉を繰り返す。
(俺は何も見ていない、俺は何も見ていない、俺は何も見ていない……………………)
冷静を取り戻した零はとても幸せそうな表情をする耐笑の肩を揺らす。
「えへへぇ………………」
「耐笑、起きろ、朝だ。」
「んぇ……………………?」
零は耐笑の肩を揺らしていると、耐笑はゆっくりと目を開いた。
「あぁ~…あいすさぁん………おはようごあいまふ…………ぐぅ……………………」
「寝るな!起きろ!!」
ふにゃふにゃした口調で眠りについた耐笑を、零は強く肩を揺らして無理やり起こす。耐笑は目をこすりながらゆっくり体を起こし、うつらうつらとしながらも起きようと努力する。
零は踊子の前に立ち、肩を揺らした。しかし踊子は起きる気配がなく、零は肩を強く揺らす。しかし踊子が起きる気配はなかった。
(どうしたものか……………………)
「ありすがわさん……どうしましたぁ………………?」
零はいまだにふにゃふにゃした声で話す耐笑に目をやる。
「踊子の起きる気配がないんだ。」
「ふえぇ…………そうなんれふかぁ…………」
耐笑は裸足でぺたぺたと歩きながら踊子の顔の前でかがむ。
「やはたさぁん、あさですよぉ……?」
耐笑は踊子の頬をつつく。それでも起きない踊子に、耐笑は次に両頬を軽くつまみ、横に伸ばした。
「わぁ…のびますねぇ………」
「ふっ…………」
両頬を横に伸ばした踊子の表情に、零は思わず吹き出した。
「ん~?どうかしましたかぁ…………?」
「いや、何でもない。」
「ぜぇんぜんおきませんねぇ……………………こうなったらぁ………………」
耐笑は踊子の布団を掴み、
「そりゃぁ~!」
やる気のない声で思いっきり引っぺがした。
「か~ら~の~……てぇ~い!」
そして引っぺがした布団を踊子の体にぶつけた。
「うぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!??なになになになに!!??事件!?」
体に強い衝撃が走り、踊子はがばっと飛び跳ねて起きた。
「あ、起きた。」
「えへへぇぇ………すごいでしょ~」
「…………耐笑は、いつまでふにゃふにゃなんだ?」
「やはたさんもおきたことですしぃ…つぎはぁ……こづかさんでふねぇ……」
(聞いてねぇ…………ん?次は猫……?)
「っっ!!耐笑!!やめろ!!猫の布団だけは剥がすな!!」
零は急いで耐笑を止めようとしたが、耐笑は猫の布団を掴んでいた。零はもう間に合わないことを察し、すぐに部屋を出た。
「てぇ~い…おぉぉ~…おおきぃ~」
零は耳を手でふさぎ、無心になる。
「んぇぇ!?猫ちゃん服がはだけてる!!早く起きて!!零が部屋を出ちゃったよ!?あと耐笑ちゃん!?何してるの!?」
「せっかくならぁ、やわらかさをかくにんしようとおもいましてぇ…」
「そんなのしなくていいから!!早く起きてぇぇぇぇぇ!!!!」
踊子は全力で猫を起こした。
「はぁ………朝から騒がしいな……………」
リビングでお茶を飲んで一息ついた零は疲れた表情で言う。
「あらそう?でもいいんじゃない?ちょっとしたハプニングを楽しまないと。」
「だからといって猫は無警戒すぎるんだよ!!もしここに悪い奴がいたらどうすんだよ!?」
「大丈夫よ、悪い人かどうかは、私がこの目で見て判断してるから。」
「そういう問題じゃない気が………はぁ、もういいよ。」
零がため息をついていると、猫は人数分の朝食を持って床に置いた。
「はい、朝ごはん、ちょうど人数分の食糧があってよかったわぁ。ごめんなさいね。私一人暮らしだから、四人分の朝ごはんを置くテーブルは置いていないの。」
「大丈夫だよ!ありがとう猫ちゃん!!いただきまぁす!!」
踊子は元気そうに言い、朝食を食べ始めた。
「さて、今日はどうする?ライブが終わったから、冒険者の活動を始めるか?」
「そうねぇ……私は、事件の手掛かりを集めたいわ。」
「情報が全くないからな…………今日も、どこかで事件が起きている可能性も否定できない。」
「ふぁふぉふぉふぉもふぁふぁふぁっふぇおふぃあいふぇふふぇ。」
口に朝ごはんを含んだ耐笑に、三人は目をやる。
「…………耐笑ちゃん、ひとまず口の中に含んだ朝ご飯を食べきってから話しましょ?」
耐笑は猫の言う通りご飯を飲み込んだ後、再度話す。
「魔物とも戦っておきたい、ですね…射手矢さんとの戦闘以外、この四人で戦った経験がないので……」
「やる事いっぱいだぁ…………」
「魔物なら、ここから少し北に進んだところに絶対いるわ。そこで戦うってのはどうかしら?」
「じゃ、午前は魔物の討伐、午後は手掛かり集めとするか。」
「そうね。それがいいわ。」
「朝食が終わったら出発の準備をしよう。それまでは、ゆっくり朝食を楽しむとしよう。」
四人は会話を続けながら朝食を楽しんだ。
四人は猫の家を出た後、北へ進んでいると、地面に小さな穴がある事に気付いた。
「これは…ロックアントの巣だな。」
「あら、こんなところにあったのね。早く掘り出してしまいましょう。」
「そうだな。少し離れて。」
「えっ……ど、どうしてですか…………?」
「今からロックアントの巣を掘り起こす。だから離れて。」
三人は零の言葉に従って零から少し距離をとる。零は穴から少し離れ、穴を中心に半径四メートルの魔法陣を出して唱えた。
「創作魔法 土流天井!!」
すると穴の下にあった土が一気に地上へ移動し、重力に従って土が崩れ、山となった。
「「……………………えっ?」」
「見るの二回目だけど…………すごいね…………」
巣の中にいたロックアントは山の中から数えきれないほど飛び出し、四人を見て威嚇する。
「よし、倒すか!」
「いやいやいやいや零くん!?今何をしたの!?」
「巣を地上に上げtだけだ。それより、ロックアントの数が多い。ここで話していると簡単に囲まれるぞ!」
「い、いやぁ……でもぉ……………………し、仕方がありません…………!!わたしが、わたしが皆さんをお守りします!」
耐笑は困惑しながらもネックレスに下げた武器石を杖に変え、魔法を唱えた。
「防御魔法 硬化!!」
四人の真上に魔法陣が現れ、四人の体が薄く光る。そして魔法陣が消えると同時に光も消えた。
元々は巣だった山の中から20匹以上のロックアントが現れ、四人に近づく。
「やはり多いな。」
「アント系の魔物は一匹いたら近くにその十倍はいると考えた方がいいからね。初心者にはあまり進められない魔物だよ。」
「じゃ、じゃあ、十匹…いたら、百匹いる……って、事ですか!?」
「多分違うと思う…」
「何匹いようと、私達には勝てないわ!!そうよね?」
ハートのピアス型の武器石を鉤爪付きの籠手に変えた猫が力強く言うと、零は魔力回復ポーションを飲みながら答える。
「そうだな。俺達は選ばれた数字の冒険者だ。50匹でもかかってこい!」
「50はさすがに多いかも…」
「さぁ、くらいなさい!!」
猫はロックアントの群れに突っ込み、辺りを一斉に引っ掻く。たったそれだけで、10匹以上のロックアントが倒れた。
「……………まじかぁ。」
「猫、思っていたより強いな…………」
「ふふっ、戦闘経験はかなり積んでいるのよ!!」
「なるほど、なら、俺も負けていられねぇな!!」
零は武器石を鉤爪に変えた。
「っ!?」
その光景に、猫は目を見開いた。
「片手だけか…………まあいい、とりあえず、くらえ!!!」
零は右腕を大きく横に振ると、爪の斬撃が現れ、ロックアントが数匹斬られた。
「この距離だと威力が低いな……なら、近づいて………!!」
「槍技 奈落落とし!」
零はロックアントの群れに向かって走るよりも早く、踊子がロックアントの群れに近づき、槍を上から叩き落した。槍が地面に着くと辺りに衝撃波が生まれ、傍にいたロックアントを上へ浮かした。踊子はそれを狙って槍を横に回し、宙に浮いたロックアントをすべて斬った。
「遅いよ零君っ!」
「踊子が速いんじゃないのか?」
「さぁ?どーだろね?」
二人が話す間にも、山の中からはロックアントが次々と現れる。零は山の真上まで高く飛んだ。
「一回、試しにやってみるか!!」
「創作魔法 風切り!」
零は真上から真下に向かって引っ掻くそぶりを見せ、三つの風の刃を放った。風の刃は一瞬にして山の中に入り、三つの爪の跡を残す。
「…………これじゃ、倒したかどうかわからないな。」
「れ、零くん、何その魔法…初めて聞いたのだけれど…………」
「そりゃそうだ。何せ、即興で作った魔法だからな。」
零の言葉に、猫は言葉を失う。
「…………ロックアントの勢いが止んだ。もう終わったのか?」
「うーん…早くない?前戦った時、もっといなかった?」
「あれは異例だったからかもしれないが、確かに早い、というより、少ない…………?」
零と踊子が疑問に思うと、山の中から大人と同じ大きさのロックアントが現れ、四人を威嚇した。
「なっ!?なんですかあれぇっ!?」
「ロックアントの王か…………?ずいぶん大きいな。」
零はロックアントの体を見ると、様々な宝石が体の至る所にある事に気付いた。
「あれはジュエルアントね。ロックアントの上位互換。かなり硬いわよ。」
「ロックアントに宝石を食べさせれば大きくなるのか?」
「どうかしら…………見た事ないからわからないわね。」
「ま、ロックアントよりちょっと硬い程度なんでしょ?それなら、早く倒しちゃおっ!!」
踊子は元気な声で言い、四人は武器を構えた。
次の話は6月16日に投稿予定です。




