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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第二章 岩石の国と何かに限りなく似た物
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Rb.20 打ち上げ

『アパタイト』のライブ後、零、猫、耐笑、踊子は最前列の観客席に座って休憩していた。


「はぁ………つかれた……………………」

「皆心から楽しめていたものね。お疲れ様。」


 猫が優しい声で言う。


「まさか俺達がスペシャルゲストだったとはな………それはそうとして……………」


 零は観客席に溶けたかのように倒れている耐笑と踊子に目をやる。


「二人とも、大丈夫か?」

「あ゛………………あ゛っ゛つ゛い゛………」

「もう…しにそう、です…」

「耐笑と踊子、君達この国に向いていないだろ………」

「耐笑ちゃんと踊子ちゃんは、暑さに弱いのかしら?」

「踊子は暑さに弱いって聞いていたけど、まさか耐笑もだったとはな……猫、で合ってるか?」

「えぇ、合ってるわ。」

(まお)って、なかなか聞かない名前な気がするな…」

「そうかしら?」

「それはいったん置いといて、氷魔法は使える?」

「氷魔法?申し訳ないけれど、私武闘家だから、身体強化魔法に特化しているの。」

「武闘家だったのか。うーん…じゃあどうしたものか………」


 零が困った表情をしていると、少し離れた場所から聞き覚えのある女性の声が届く。


「あっ!!有栖川さーん!!」


 零はその声がする方へ目をやると、そこにはリュックサックを背負った瑠璃が零に駆け寄っていた。


「瑠璃さん、ちょうどいいところに来たな…!踊子が熱にやられているんだ。」

「まぁ、そうだよねとは思っていたよ…………」


 瑠璃は踊子のそばに行き、氷魔法を唱えた。


「氷魔法 キュールネーベル」


 すると耐笑と踊子の真上に魔法陣が現れ、二人に雪が降り注ぐ。


「この子は?」

「耐笑も同じで暑さにやられたと思うが…その魔法があればおそらく大丈夫だと思う。」

「そう、なら、数分待ちましょう。」


 数分後、耐笑と踊子が起き上がった。


「ん~…あれっ?るーちゃん?」

「よーちゃん、どうせライブで倒れるだろうなぁってと思ってここに来たの。案の定だったね。」

「あ、あはは……」

「あなたは大丈夫なの?」


 瑠璃はそう言って耐笑に話しかける。


「あぅ……はっはい…だいじょうぶ…です。」

「それならよかった。それじゃあ、私はやるべきことがあるから帰るね。」


 瑠璃は四人に手を振ってその場を去った。


「…氷魔法を使える人、探さないとな。」

「そうね…」

「すみません、ちょっとお時間いただいてもいいですか?」


 『アパタイト』のライブの主役であるチェンが、四人に話しかけた。


「えっえーーーーーー!!??ちちちちちちちち、チェンさん!!??」

「えっ?ど、どうかしましたか?」

「いえ、もしこの後予定がないのであれば、夕方ご一緒にご飯を食べに行きませんか?」


 チェンの誘いに、四人は目を丸くする。


「えぇっっっと…………俺は問題ないけど…」

「私もよ。」

「わ、わたしも、です…」

「チェンさんからの誘いであれば、たとえ火の中水の中、どこへだっていきます!!!」

「いや、火の中はだめだろ…」

「本当ですかっ!?ありがとうございます!では夕方、ここにお集まりください!」


 チェンはそう言ってその場を去り、辺りは静かになった。


「あ、『アパタイト』と一緒に晩御飯が食べられる日が来るなんて…!!生きててよかったぁ………!」


 踊子は至福の表情を見せる。


「夕方まで、あと数時間はあるな…さて、何しようか。」

「三人はお知り合いかしら?」


 猫が三人に聞く。


「俺と踊子は隣の村で会って、耐笑はライブが始まる前に会ったんだ。そういえば、お互い自己紹介していなかったな。改めて、俺は 有栖川 零 、リベルタージュから来た選ばれた数字(ポインター)で、『アリス』と呼ばれている。ほとんどの武器が使えるが、普段は剣で戦っている。」

「あたしは 八幡 踊子 !槍使いだよっ!よろしくねっっ!!」

「え、えぇ…と…その…… 六車 耐笑 、です…………魔法使い、です……よろしく、お願いします………」


 零は落ち着いた様子で、踊子は元気な様子で、耐笑はおどおどとした様子で話すと、猫は微笑みながら言った。


「なるほどね…私は 狐塚 猫 、猫族の武闘家よ。よろしくお願いするわね。」

「武闘家かぁ………!もしかして、すっごく強い?」

「どうかしら…一人で冒険者活動をしていたから、人並みにはあると思うけれど……」

「剣士、武闘家、槍使い、魔法使い…このパーティーだと、もう一人後方支援できる人が欲しいな…」

「そうかなぁ?あたしはそう思わないけど…それに、零君って魔法使えるじゃん、だから十分じゃない?」

「あら、魔法が使えるの?」

「使えるけど、数回しか使えない。それでは十分じゃないと思うけど…」

「まぁ、この事はあとで考えましょう。と、いう事で、はい、これ。」


 猫は三人に折りたたまれた一枚の紙を渡した。その時零は背筋が凍ったような気配がした。


「なぁにこれ………?」

「猫、俺をちゃん付けで呼ぶのはやめてくれ…なんだかぞわっとする…」

「あらそうなの?残念ねぇ…じゃあ、零君って、呼ぶわね。」


 零は渡された紙を開く。紙には三つの数字が縦に並ぶように書かれていた。


「これ、何の数字だ?」

「それはね、私のスリーサイズ♡」


 その言葉を聞いた途端、零は紙を真下に叩き落した。


「なんでそれを書いて人に渡したんだよ!!!???」


 零の様子に、猫は大笑いした。


「あっはははははははは!!!その様子が見たかったからよ!!」

「わ、わぁ…狐塚さんって、大きい………ですね……」


 零が顔を赤らめ、猫が腹を抱えている中、耐笑は数字をまじまじと見ていた。


「耐笑ちゃん、あまりそれをじっくり眺めるのはよくないと思うよ…?」


 その様子に踊子は少し引いていた。


「ど、どのようにすごしたらこのように大きくなるのでしょうか……わたしなんて………ただの、壁……なのに…………」


 耐笑は目じりに涙を浮かべ、自分の胸に目を向けた。


「か、壁のわたしに、生きる価値なんて…………」

「耐笑ちゃん!?いったん落ち着いて!?」


 踊子は慌てて耐笑を慰めた。


「あーーーー面白いわねー…いい反応だったわ。」

「からかうためにあんな事をしたのかよ……体張りすぎだろ……」

「別にいいじゃない。たまにはこういったハプニングも楽しむものよ?」


 猫は笑顔で言う。


「だからってスリーサイズを教えるなよ!?」


 それに対して零はツッコミを入れた。


「ふぅ……さて、十分楽しめた事だし、約束の時間までちょっとゆっくりしましょうか。」


 猫はそう言って移動した。


「…………」


 零はそっと叩き落した紙を拾う。


(念のため、持って行っておくか。)


 四人は椅子に座って会話を楽しむ、どこかへ遊びに行くなどをして時間を過ごした。




 夕方、四人は約束の場所へ行くと、チェンがすでに約束の場所で待っていた。


選ばれた数字(ポインター)の皆さん!こんばんは。」

「こ、こんばんは…早いですね……」

「そうでしょうか?」

「約束の三十分前にここに着くよう移動したんだけど、すでにいたとは……」

「いえいえ、僕もついさっき来たばかりですよ。それでは行きましょうか。」


 四人はチェンについていき、高級なレストランへと入った。


「チェン!やっと来たか!ほら、お前の好物頼んでおいたぜ。」

「っ!ありがとうございます!」


 店員に案内された先には、豪華な料理がたくさん置かれた円形のテーブルとそれを囲む六脚の椅子、そのうちの一脚に座る蛍の姿があった。蛍の言葉に、チェンはとても喜んでいる。


「ほほ、蛍さんっっ!!」


 蛍を視界に入れた踊子は口を隠すように両手を置き、少し後ずさりした。


「僕は蛍の隣に座ります。選ばれた数字(ポインター)の皆さんはお好きな場所にお座りください。」


 チェンはそう言って蛍の隣の席に座り、四人は時計回りにチェン・蛍・零・猫・耐笑・踊子となるように座った。


「これ、絶対高いよな………」

「そう、ね…」


 芸術のような盛り付けとあたりに漂う香ばしい匂い、そして隠しきれていない高級感、ライブ後の事もあり、四人は空腹だったが、今まで目にしたことのない高級料理の前では身を引いてしまっていた。


「これは打ち上げと言う意味も含め、急な無茶ぶりに突き合わせてしまった謝罪として、代金はすべて僕らが支払います。どうぞお好きに食べてください。」


 チェンは優しく話す。


「い、いいんですか………?」

「えぇ、かまいませんよ。」

「こここ、こんな高級な料理…こ、これは夢、ですか……?明日、わたしはしぬのでしょうか………」

「耐笑、落ち着け、これは夢じゃないし、死なないぞ。」

「わわ、わたしが日光にさらされて燃え尽きる前に、せめて最後の食事だけはいいものにしようという神様のお告げですか…………!?」

「耐笑!?大丈夫か!?」


 零は耐笑の方を掴んで揺さぶると、耐笑ははっとした様子を見せる。

 零は耐笑が正気に戻ったことを確認すると、元に席に戻る。


「さて、選ばれた数字(ポインター)の皆さん、今日はお集まりいただき、そしてライブに参加していただき、ありがとうございます。そして、お疲れさまでした!今夜はたくさん食べて、明日から頑張りましょう!!乾杯!!」


「「かんぱーーーい!!」」


 六人はグラスを持ち、チェンの声に合わせて掲げ、一斉に言った。

 零は目の前にあった肉をナイフとフォークで上手く切り、口に運ぶ。その直後、口の中が幸福で満たされた。


「うっっっまぁぁ!!!」


 零は幸せな顔で顔を上げる。


「そうだろ?ここ、俺様の行きつけなんだぜ!!」

「たしかにすごくおいしいわね…脂がしつこくないし、柔らかい、そして後味が上品で重くないわ………!!」


 零と同じ肉を食べた猫が耳をピコピコと喜びを表しているかのように震わせて言う。


(耳、そんなに動くのか……)

「有栖川さん!お野菜も、お野菜もすっごくしんせんでおいしいですよ!!」


 もしゃもしゃと小柄な少女とは思えないほどの勢いで食べていく耐笑を見て、零は何か言おうとしたが、呆れた顔をして口を閉じ、野菜を口に運ぶ。


「すごくシャキシャキしてる…それに、すごくみずみずしい…!」

「そぉですよね!!」

「耐笑だったか?すげぇ食べっぷりだな!だが、喉を詰まらせるんじゃあねぇぞ?」

「ふぁいっ!!」


 耐笑がハムスターのようにたくさんの料理を口の中に含んで言う。


「あぁぁぁぁぁ…………チチチチェンさんが、と、隣に…………!!」


 踊子は腕を動かさず、チェンをじっと見ている。


「その………踊子さん………?そんなにじっと見られていると、少し恥ずかしいのですが……………」


 チェンの言葉に耳もむけず、踊子はチェンを見続ける。零はすっと立ち、踊子の背後に回って肩をたたく。


「あいたぁっ!?うぇっ!?ななななななに!!??」

「踊子、落ち着け。」

「ありがとうございます零さん……」

「わははははは!!??おもしれぇなぁお前ら!!」


 蛍は零の行動と踊子の反応に大笑いする。その後零達はたらふくになるまで食べ続けた。



「ふぁぁ……しあわせです~………」

「耐笑、すごく食べてたからな…………腹も少し膨らんでいるように見える…………」

「私もよ………小柄な体つきからは想像できないほどの食べっぷりだったわ。」


 耐笑はお腹に右手を置いて今までにないほどの幸福の表情を見せる。


「あとは、デザートだったか。」

「そうですね。まぁ、もうすでに満腹の方もいますが………」

「デザートは別腹なのです!!」


 耐笑はきりっとした表情で言う。


「まだ入るのか!?腹が爆発するぞ!?」

「いいえっ!わたしは大丈夫ですから!!」

「何が……!?」

「わっはははははははは!!!おまえらぁ、食事前も食事中も食事後も面白れぇな!!!」


 蛍が笑いながら赤くなった顔で言う。


「蛍、飲みすぎですよ。」

「あぁ~?べっつにいいじゃあねぇか!!明日なんにも予定ないしよお!!今日くらいのんだっていいだろお?」

「だからと言って、限度と言うものがあるのです。」

「…………チェンさん、聞きたい事があるんだけど。」


 零がチェンを見て言う。


「はい、なんでしょう?」

「今日、なぜ俺達がライブに来ている事を知っていたんだ?あと、なぜ俺達をここに誘ったんだ?」


 零の質問に、チェンは目を見開く。


「あぁ、そのことですか。一つ目の質問についてですが、あれは完全に勘ですね。でも、まさか最前列に、さらに四人いるとは思いませんでした。本当は、選ばれた数字(ポインター)がいないていでライブを続けようと思っていたのです。」

「それ、ファンから信頼をなくす事にならないか?」

「まぁ、そうですね……本当に、選ばれた数字(ポインター)がいてくださってよかったです。」


 チェンは困り眉で笑顔を見せる。


「二つ目の質問の答えですが、実は零さんにお聞きしたい事があって、このような場を設けたのです。」

「聞きたい事?」


 零が首をかしげる。


「はい。僕は…」




「零さんの事を、知りたいのです。」

次の話は6月8日に投稿予定です。

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