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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第二章 岩石の国と何かに限りなく似た物
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Rb.19 スペシャルゲスト

 約二時間、その間にステージの前や後ろに様々な楽器を持った人達がそれぞれの位置に着き、準備を始めた。その後、耐笑が目を覚まし、女性がステージの上に立った。


「みなさん!!お待たせしました!!これより、あのサフラー一の歌い手コンビ『アパタイト』によるライブを開催します!!」


 司会と思わしき女性が大声を上げて言う。


「今回は異例のスペシャルゲスト込みでのライブです!!スペシャルゲストが誰なのか、私も知りません!!とても楽しみです!!」

(司会の人も知らないのか…………?)

「それでは、お呼びしましょう!!『アパタイト』のお二人です!!!」


 司会の女性は元気に言い、ステージから降り、入れ替わるように二人の男性がステージに上がった。

 二人とも手足が長く、スタイルも顔立ちもとてもよかった。

 赤と黒を組み合わせた少し派手な衣装、釣り目でいかつい顔つきと両耳につけた炎のピアス、そして黒のショートが特徴な、まさに情熱そのものを表したかのような見た目の男性と、白と黄色を組み合わせた神聖な衣装、穏やかな目と優しい顔つきと首から下げた星のネックレス、そして銀色のロングポニーテールが特徴な聖人のような見た目の男性はステージの中央で観客を見る。


「やぁ、今日もいい天気ですね。このような素敵な日にこうしてライブを開催できたこと、とてもうれしく思います。」


 銀色の髪の男性は優しい声で言う。


「えぇ、と、今はおはよう、でしょうか?それとも、こんにちは?」


 そう言って銀色の髪の男性は首をかしげる。その様子に一部の観客はくすっと笑い、一部の観客は騒いだ。


「そんなの誰も気にしてねぇよ。あいさつできりゃあ関係ねぇ!!って事でお前らぁ!!!元気してたかぁぁぁぁぁ!!!!」


 落ち着いた雰囲気の男性とは反対に、黒髪の男性は荒々しく、そして大きく叫んで場の空気を変える。今までに感じた事のないほどの声の大きさが、観客の肌をビリビリとさせる。


「大体の人はわかってると思うが、俺様は 岩敷(いわしき) (ほたる) だ!!今日は楽しもうぜ!!!!」


 岩敷蛍と名乗った男性は言い切ると、会場はワァァァァァァ!!!と盛り上がった。


「結局、このような展開になるんですね…僕は チェン・ジュー と申します。よろしくお願いしますね。」


 チェン・ジューと名乗った男性はそう言って軽く頭を下げる。その様子に一部の観客がキャァァァァ!と歓喜の悲鳴を上げる。


「さて、一曲目を始める前に、今日は少し話しましょうか。ちょうど、スペシャルゲストも来ているみたいですしね。」

(『来ている』…………?『いる』じゃないのか…………?)


 チェンの言葉に零は首をかしげる。その時、チェンと零の目が合った。


(………………?)

「そうは言ってもよ、いったい何を話すってんだ?話すネタなんて何も用意してねぇだろ?」

「ふふっ、そう言われると思って、用意してきましたよ。は・な・す・ネ・タ。」


 チェンは人差し指を前に出し、一文字言うごとに指を前後に揺らし、最後の一文字を言った直後ウィンクをした。


「僕は蛍とは違うのでね、ちゃんと用意してきました。」

「おい一言余計だろ。」


 蛍のツッコミに会場は少し笑いに包まれる。


「スペシャルゲストは僕ら『アパタイト』について全く知らないのでね。ここで少し知ってもらおうと、あるコーナーを用意しました。」

(『アパタイト』を全く知らないスペシャルゲスト……?なんだか、嫌な予感がする…)

「名付けて、『アパタイトについて知ろう!!』のコーナー!」

「コーナー名安直すぎんだろ!?」


 蛍が再びツッコミ、会場が再び笑いに包まれる。


「このコーナーでは今この場にいるスペシャルゲストに、『アパタイト』について知ってもらう上に、僕らのファンが、僕らについて知ってもっと好きになるために作ったコーナーです。」

「へぇ、それで、具体的にどんな事をするんだ?」

「まずは自己紹介からですね。さっきも言いましたが、僕の名前はチェン・ジュー。『アパタイト』の作詞作曲を担当しています。そうですね…他に言う事があるのであれば………蛍、何を言えばいいですか?」

「いや事前に決めろよ!?なんで俺様に振ってくんだよ!?」

「ふふっ、冗談冗談。好きな食べ物は甘い物全般で、嫌いな食べ物はないかな。そうだ、意外かもしれませんが、実は冒険者ギルドに入っているんです。」


 チェンの言葉に観客が一斉にえええええええ!!??と騒ぐ。


「意外でしょう?何せ、今まで話した事がないですから。戦闘経験もありますよ。さ、次は蛍の番ですよ。」

「俺様?俺様は岩敷(いわしき) |蛍《ほたる。『アパタイト』の演出担当をしてるんだ。過去にライブを見たことがある人ならここでわかるかもしれねぇが、俺様は炎魔法を使えんだ。炎魔法って結構面白いんだぜ!!チェンと同じで冒険者ギルドに魔法使いじゃなく大剣使いとして入ってる。実力はあるぜ!!戦ってみたいってんなら、いつでも付き合ってやるぜ!!」


 蛍は自分に親指を指して言った。


「ふ、二人とも冒険者だったんだ……!!」


 踊子はキラキラとした目で『アパタイト』を見る。


「蛍、そのような事を言っちゃいけませんよ。仮に戦ったとして怪我でもしたらどうするのですか?」

「そん時はそん時だ!!」

「そうですか。じゃあ次は…」

「おい冷たくねぇか!?もっと他に言う事あっただろ!?」

「『アパタイト』の結成理由、これについて話そうかな。」

「無視かよ!?」


 蛍のその言葉さえ無視してチェンは話す。


「これは、六、七年前の話なんだけれど、僕らは冒険者として働いていましてね。蛍が突然新しい事に挑戦してみたいって言いだしたことがきっかけかな。」

「その発言が、まさかこうしてライブするとは思わなかったぜ。」

「おや?これは君が望んでいた事じゃなかったのですか?」

「望む望まない関係ねぇよ。予想もしなかったってだけだ。」

「まぁそうですね。僕もこのように人気が出るとは思いませんでした。歌を歌い始めた当初は、そこまで知名度は上がらなくてね……冒険者も兼任していてとても大変でしたよ。でも今から三,四年前、サフラーで窃盗事件と冤罪の事件が始まりましたよね。その時、僕らの周りの人達は恐怖におびえていました。それを解決しようと曲を作り、二人で歌ってみたらとても評判が良かったのです。その時から、『アパタイト』は有名になったのです。」

(そんな事が………)


 チェンの言葉にほとんどの観客がへぇ~と反応する。


「今となっては、もう歌い手一筋だけれど、気分で冒険者に戻るかもしれませんね?」

「気分って…ま、多分ねぇだろうな。」

「おや、酷いですねぇ。」


 蛍の言葉にチェンは困ったような笑顔をする。


「他に話す事、は…せっかくだし、観客の皆にも聞いてみようかな。」


 チェンはステージから降りて観客に近づいた。それだけで観客は悲鳴を上げる。


「だ・れ・に・し・よ・う・か・な~」


 チェンは一人一人指をさし、一文字ずつ言うたびに右隣へ指をさす。


「よし、決めました。君です。」


 そう言って指をさした先には零がいた。


「…………えっ!?俺!?」

「はい、君です。」

(そう言われても、聞く事なんてないし……っていうかこの人、背が高いな………190cmはあるんじゃないか…………?)


 零は目の前に来たチェンに少し緊張しながらも質問する。


「あぁ、ええ、と…………チェンさんは冒険者の時、どのような武器を使っていたんですか?」

「おっ、ちゃんと僕の話を聞いてくれていたみたいですね。嬉しいです。僕は冒険者の時槍を使っていましたよ。でも、強いかと聞かれたら…………微妙なところ、ですかね。」


 チェンはそういうと、踊子は小さく「あたしと同じだ………!」と言った。


「次は、君にしようかな?」


 チェンは耐笑に近づく。耐笑は目にぐるぐるが入るほど混乱する。


「ふぇぇ!?わ、わたしですかぁ!!??」

「そう、君です。」

「そそそ、そういわれましても、わたし、特に質問する事が…」

「ないならないでかまいませんよ。別に強制ではありませんから。では、隣にいる君に聞こうかな?」

「あたしっ!?」


 踊子は両手を胸に近づけ、耐笑と同じような反応を見せる。


「え、えええええええと、チェンさんと蛍さんは、今後、どうする予定、ですか!?」


 踊子の質問にチェンと蛍は目を丸くする。


「今後ぉ?考えた事ねぇな。変わらず、歌い続けると思うぜ。」

「そうですね。たとえ事件が解決しても、僕らはずっと歌い続けるさ。」


 チェンはステージに上がり、観客に目を向ける。


「さて、気が付けばもうこんな時間ですね。そろそろ、歌うとしましょうか。」

(俺達に聞いただけで終わった……偶然か…………?いや、疑いすぎか。)


「やっとそのコーナーが終わったのか。結局何だったんだ?」

「だから言ったでしょう?『アパタイトについて知ろう!!』のコーナーだって。」

「だからコーナー名安直すぎだろ!?」

「さぁ、一曲目は『金科玉条の思い』、盛り上がっていきましょう!!」


 チェンはそう言うと二人の周りにいる人が楽器を持ち始め、演奏の準備を整えた。

 チェンが言い終わって約十秒後、会場の雰囲気が変わる。



「~~~~~~~~~~~~♪♪」

「っ!?」



 そして始まった演奏、優しい声と荒々しい声とは違った二人のあまりの美声に、零は言葉を失った。


(これが…『アパタイト』の曲…………!!)


 チェンの包み込むようにやさしい声と蛍の後ろから応援されているような元気な声、その二つが混ざり合い、観客の心を燃やす。


(すごい……ビリビリと感じる……!!なんて迫力………………!!こんなにワクワクするとは…………!!)


 観客も合いの手を加えて盛り上がり、『アパタイト』と演奏者と観客の心が一つになる。


「零君見てて!もうすぐ演出が始まるよ!!!」

「演出?」


 零が言った直後、『アパタイト』の周りに六つの炎が真上に噴出される。


「っっ!?」


 その後も観客の合いの手と同じタイミングで炎が噴出し、会場をさらに盛り上がらせた。


「演出って、この事か…………!!」

「すっごいでしょ!!」

「すごい…………!!」


 歌、音、演出、全ての良さに、零は息を忘れるほど魅入っていた。




 一曲目が終わった後、小休憩をはさんで二曲目に入る。二曲目も同じように盛り上がり、三曲目、四曲目、と続いた。




「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!十分盛り上がったかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」


 十五曲目を歌い終わった後、蛍の言葉に、観客は大声で答える。


「今回のライブは今までの数倍盛り上がりましたね。一曲目を歌う前に色々話した結果、距離が近くなったからでしょうか?」


 汗を流したチェンが少し疲れたような声で言う。


「なんにせよ、今日は楽しかったぜ!!」


 蛍は満面の笑みで言う。


「さて、本来はあと五曲歌って終わるところなのですが、皆さんがずっと気になっていたスペシャルゲストを、お呼びいたしましょうか。」

「スペシャルゲスト…………!!」

「そういえば誰なんでしょう…?」

(ゲストのこと忘れてたな………)


 少し疲れて席に座った零は顔を下に向ける。


(さすがに、選ばれた数字(ポインター)じゃないとは思うんだけど……)

「今回のライブのスペシャルゲストは……なんと、選ばれた数字(ポインター)の皆さんです!!」

「「………………えっ??」」


 あまりにも早い伏線回収に、三人は硬直する。


「さぁ、選ばれた数字(ポインター)の皆さん!ステージに上がってください!!」


 チェンが言うと、司会が三人に近づき、「どうぞこちらへ」と言わんばかりの動きを見せる。


「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」


 踊子は驚愕した。三人はステージの上に連れていかれた。


「おや、『アパタイトについて知ろう!!』のコーナーで質問してくださったお三方じゃありませんか!!これは奇跡ですね!!」


 三人を前にチェンは笑顔で言う。


「…………まさか、こうなるとは。」


 零は少しづつ落ち着いてきたが、踊子と耐笑はいまだに固まっている。十秒後、ステージにもう一人女性が上がる。


「ん?もしやお前も選ばれた数字(ポインター)か?」


 蛍の言葉に、零は振り向く。三人の後ろにはこげ茶色のロングストレートの髪、猫の耳と尻尾、ハート形のピアス、こげ茶色の少し細い目を持つ大人びた顔つき、とても軽装で右腰に花のタトゥーを入れたモデルのよう女性がいた。


「え、えぇ、そうよ。」

「まっさかこんなにいるとはな!予想外だぜ!!」

「そうですね。僕は多くて二人と予想していましたが、四人だったとは。」


 零はチェンに目をやる。


「俺も、まさか呼ばれるとは思わなかった……できれば、事前に知らせてほしかっ……」

「ふふっ、サプライズをしようと思いましてね。僕と蛍だけの秘密だったのです。」

「秘密……」

「今日は選ばれた数字(ポインター)の方々と歌おうと思いまして。ここに呼んだのです。」

「…………えっ!?歌うんですか!?」

「はい、歌います。」

「俺初めて聞いたんですけど!?」

「と、いう事は、君が噂の『アリス』さんですか?」

「そ、そうですけど……」

「そうでしたか!でしたら合の手を入れるだけでも構いませんよ。他の選ばれた数字(ポインター)の方々も、歌えない場合は合の手だけでも十分です!せっかくですし、それぞれ自己紹介をしていただけませんか?」

「俺は 有栖川 零 だ。」

「あたしは 八幡 踊子 です!!」

「あぅぅ……えぇと………… 六車 耐笑 …………です………………」

狐塚 猫(こづか まお) よ。」

「なるほど…今日は来てくださってありがとうございます!」


 チェンは頭を軽く下げる。


「歌う前に、握手をさせていただけませんか?」

「あ、握手!?それはライブの後でもいいんじゃ……」

「やります!!握手させてください!!!」


 零は拒否しようとしたが、踊子は積極的にチェンに近づいて両手で握手する。


「ふわぁぁぁぁぁ………こ、これがチェンさんの手……!大きい…………!!」


 踊子は目を輝かせていた。


(まぁ、いいか…………)


 踊子に続いて零、耐笑、猫がチェンと握手をする。


「ありがとうございます!!選ばれた数字(ポインター)と会えるなんて光栄です!!」

「そ、そんな大した物とは思わないだけど…………」

「何を言っているのですか!!リベルタージュの事件を一人で解決した方ですよ!!光栄です!!!」


 チェンの言葉に零の胸にくぎを刺されたような痛みが走る。


「っ!?」


 零は自身の胸に目を向けて手を置いたが、痛みはすぐに消えた。


(…………?)

「どうか、しましたか?」

「いや、何でもありません。」


 チェンはきょとんとした顔で零をのぞき込むが、零は軽く手を横に振った。


「そうですか。では、軽く挨拶も終えた事ですし、振り付けについてある程度教えた後は一緒に歌いましょう!!」

「いえぇぇぇぇぇぇい!!!!」


 チェンの声に合わせて踊子だけでなく、観客までもが大盛り上がりした。

 その後も零達は『アパタイト』とのライブを楽しんだ。

次の話は6月4日に投稿予定です。

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