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定められた物語<ログストーリー>  作者: 霖雨 晴流
第二章 岩石の国と何かに限りなく似た物
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Rb.15 サフラーの問題

「……ん?何も盗まれてない?」


 零は繰り返し言うと、水夏は頷く。


「詳細は明日話そう。今日はもう遅い。アタイも、かなり眠いからね。気をつけて帰りなよ〜」


 水夏はそう言って手を振り、その場を去った。


「何も……盗まれてない………」

(じゃあ、何がしたいんだ………?)




 翌日の朝、零は宿を出ると、出口に水夏の姿があった。


「あ、水夏。おはよう。」

「おはよう!昨日はよく眠れたか?いやー朝は眠いなぁ!!」


 水夏は元気に言う。


「全然眠そうじゃないんだけど……」

「そう見えるだろう?実は今かなり我慢していてな。今にも倒れそうなんだ。」

「いや帰って寝ろよ!」

「そういうわけにもいかないんだ。昨日の夜にあんなことが起こったんだからな。」


 鉈を片手に水夏は無理をしているような顔で言うと、一人の男性が一枚の紙を持って水夏に近づく。


「坂木さーん、村長からお知らせを伝えにきましたー!」

「なんだ?」

「『直ちに帰って眠りなさい』と。」

「…………えっ?」


 水夏の目が丸くなると、背後から男女か水夏の腕を掴み、零を見て男性は言った。


「アリスさん、俺達は坂木さんを連行してきますので、事件の詳細については兵士がお話しします。」

「あ、あぁ、わかった。」

「それでは!」


 そう言って男女は水夏を連行した。


「…………水夏って、いつもあんな感じなの?」

「まぁ、そう、ですね…………」


 兵士は心配するような声で小さくうなずく。


「改めまして、アリスさんで合ってますよね?」

(アリス、ねぇ…………)

「皆俺の事アリスって呼んでるけど、なぜ零って呼ばないんだ?俺としてはそっちのほうが嬉しいんだが………」

「おそらくですが、『アリス』という名前が噂で広まったからだと思います。」

「噂?」

「はい。とはいっても悪い噂ではありませんよ。リベルタージュに突如現れた選ばれた数字(ポインター)の『0』こと『アリス』が、十年以上前から存在する問題を解決し、毒道の森を解放させた。と…」

(噂はあってもなくてもいいけど、なぜアリスで広まっているんだ…………?)

「その話はいったんここまでにしておきましょうか。」

「そうだな。それで、この国では何も盗まれていない窃盗事件が起きているんだっけ。」

(自分で言っておいてすごく矛盾を感じる…………)

「はい。まだそれだけならよかったんですが、実はもう一つ問題がありまして…………」



「だ・か・ら!!俺じゃねぇって!!!」



 突然、二人から少し離れた場所に男性の荒い叫び声が響く。叫び声に反応した零は声のする方に目を向ける。その先には二人の兵士のような男性と、茶色のフードと黒のインナーを着た身軽な青年が互いに向き合っていた。


「そうは言われてもな…目撃情報によると君の姿と一致しているんだ。」

「知らねぇよ!!っていうか昨日俺は家で寝ていたんだよ!!」

「この事件の犯人は皆そう言うんだ。アリバイがなければどうしようもない。とりあえずついてきてもらおうか。」

「はぁぁ!?なんでだよ!?って、おいっ!!放せ!!!」


 フードをかぶった男性は叫びながら兵士に捕えられ、連行されていった。



「……あれの事か?」

「はい…ここ数か月、三日に二回のペースで窃盗事件が起きてはあのように犯人が特定されて連行されているんです。奇妙な事に、これまで捕まえてきた犯人は皆あのような反応をして犯行を否認するんです。」

(アリバイがないのに犯行を否認…………確かにあの服装は昨日の夜俺が捕えた人の服装と一致している………………ん?おかしくないか?普通、昨日の犯行した時の服装のまま朝を迎えるか?バレたのであれば着替えはするんじゃないか?)

「変な事件だな………」


 零は右手の人差し指を顎に当てて悩むポーズをとり、ぼそっと言った。


「大変申し訳ないのですが、アリスさんにこの事件を解決してほしいなと……………」

(もう訂正するのも面倒になったな…………)


 小さくため息をついて呼び名の訂正も面倒になった零は兵士に目を向ける。


「わかった。できる限りの事はするよ。」

「っ!ありがとうございます!!」

「それじゃ、俺は冒険者ギルドに行ってくる。」

「はいっ!それでは、頑張ってください!!」


 明らかに元気になった兵士は敬礼してその場を離れる。


(………さて、まずは仲間探しからかな。)


 零は足を動かし、冒険者ギルドへ行った。



 冒険者ギルドにて、受付嬢が零を見るとまるで言いたかった事があるかのような様子を見せる。


「アリスさん!お疲れ様です。」

「…………」


 受付嬢の声に、零は少し不機嫌そうな表情をしたが、一瞬にして元の顔に戻し、受付嬢に近づいた。


「ちょうど、アリスさんを探そうとしていたところなんです。」

「俺を?」

「はい。二つ隣の村に選ばれた数字(ポインター)がいるとの情報が入ったので、アリスさんにはそちらに行っていただこうと思いまして。」

「二つ隣?サフラーには村がたくさんあるのか?」

「サフラーは地中に宝石がたくさんあり、資金には困っていないんです。仮に資金が減っていたとしても、掘れば山のように集まりますから。しかし地中に宝石や資金が多いので、それを狙う人も少なくはありません。そこで、サフラーをまとめる人が資金の分割と窃盗犯の減少のために各地に村を点在させることにしたんです。」

「なるほど。それで、サフラーにはいくつあるんだ?」

「ざっと30程ですね。」

「ありすぎだろ!?」

「はい。そして現在選ばれた数字(ポインター)がいる村はここから北に、一つの村を通り越した先の村です。坂木さんと同行していただきますので、準備ができ次第、連絡をお願いします。」

「準備が必要なのは水夏の方じゃないか…………?」

「それは………そう、ですね………………」


 受付嬢は困り眉の笑顔を見せる。


「ここから二つ先の村まで何日かかるんだ?」

「もし今から向かうのであれば……… ニ日後の昼までには着くと思います。」

「結構遠いんだな………じゃ、水夏さんの準備ができたら連絡してくれ。俺はいつでも大丈夫だ。」

「わかりました。それでは、連絡してまいります。しばらくお待ちください。」


 受付嬢はそう言って席を離れた。


(やっと一人目の選ばれた数字(ポインター)だ…………他の選ばれた数字(ポインター)はどこにいるのか…………)



 10時間後、日が沈みかけている時間帯に、受付嬢が零を呼んだ。



「アリスさん、坂木さんの準備が整いましたので、出発の時間を決めようと思います。」

「あぁ、分かった。」

「坂木さんの希望では今となっています。」

「今!?回復したばかりだろ!?」

「私も明日からにした方が良いと説得したのですが、どうしても今がいいみたいです…」

(何か事情があるのか………?)

「まぁ、水夏がその時間を希望するなら、今から向かうとするか…」


 零は冒険者ギルドを出て北に向かい、水夏と合流した。


「あぁ、零くん、こんばんは。」

「こんばんは…って水夏、復帰早くないか………?」

「寝不足なんて6時間寝れば何とかなるさ!」

「6時間で…………?」

「さて、雑談はここまでにして、早く行こう。この時間なら…二日後には着くだろう。」

「二日か、それは次の村で夜を過ごしてか?」

「いや、ぶっ通しで。」

「ぶっ通しで!?」

「いや、普通は寝ずに行くものだろう?」

「さすがに次の村で寝ようよ…俺が死ぬ……」

「………確かに、アタイと共に言ってくれる人は皆、二日目の朝死んだような顔で動いてはいるけど…」

「水夏って、人じゃないのか……?」


 平然と人とは思えない事を話す水夏に、零は引き気味に話す。その言葉に水夏は驚く。


「なっ!?なぜだ!?言っておくけど、スキンケアはしっかりしているぞ!?」

「いやそこじゃないそこじゃない。」


 その後も二人は話し、数分後に村を出た。



 次の村へ向かう道中、水夏は口を開く。


「そういえば零くん、君の適性武器はなんだ?」

「適性武器?なぜ急に?」

「いや、ふと気になっただけだ。リベルタージュで大活躍したのだろう?どのような武器を使って相手を倒したのか気になってな……」

「うーん……とはいっても、俺の適性武器はすべてと言っても過言はないというか………何でも使えるんだ。」

「なんでも?んじゃ、鉈も使えるのか?」


 水夏は髪飾りにつけた武器石(ウェポンブロック)を鉈に変え、零に見せる。


「使えると思う。」


 零は鉈をじっと見て武器石(ウェポンブロック)に魔力を流す。すると武器石(ウェポンブロック)は姿を変え、鉈へと変わった。


「おお……本当に変わるとは……零くんは、鉈を見るのは初めて?」

「辞典で見たことがあるだけで、実際に見るのは初めてだ。」

「そうか。なら、本当に何でも適性があるんだな……」

「そうだね。」

「魔法はどうなんだ?」

「魔法は……」


 零は話そうとするが、言葉が詰まった。


(……これ、言っていいのか?)

「あぁいや、言いたくないなら別に言わなくていい。強制ではないからな。」

「水夏はどうなんだ?」

「アタイは、身体強化魔法しか使えなくてな……火魔法や水魔法を使える人が少し羨ましいんだ。」

「そうなのか…………」


 零は小さく言った。


「話が変わるんだけど、サフラーは村をまとめる人がいるんだっけ?」

「あぁ、ユースイさんの事?」

「ユースイ……さん?」

「ユースイ・エーデルシュタイン、たくさんあるサフラーをまとめる、リベルタージュで言う国王だな。でもユースイさんはとても社交的で、あまり上下関係とか気にしていないんだ。だから皆はユースイさんって呼んでる。」

「ユースイ・エーデルシュタイン……普段はどこにいるんだ?」

「普段?ユースイさんは重要な会議がない限り毎日どこかの村に行っているから、普段どこにいるかと聞かれてもなぁ…」

「行動力が強すぎないか…?」

「しかも、たまに外国にも行っているそうだ。だからユースイさんはこの国のどこかにいるかもしれないし、いないかもしれないとしか言えない。」

「謎に包まれているって、事?」

「いや、そういうわけでは……」


 突然、水夏の口が止まる。


「どうした?」

「そういえば、ユースイさんはどこ出身なのか誰も知らないな……」

「誰も知らない?っていうか、ユースイって人はサフラー出身じゃないのか?」

「本人はサフラー出身ではないといっているが、どこで生まれたのかまでは言っていない。よく考えてみると、いくつか不自然な点はあったな……」

「他にもあるのか?」


 水夏は空を見て指をひとつずつ折る。


「異様に魔力が多い点、なぜか魔物がユースイさんから逃げていく点、宝石に詳しすぎる点、体温が低すぎる点、まれに人じゃないような雰囲気を出す点……」

「ありすぎだろ…いくつかは深く考えすぎな可能性もあるけど、なぜ気づかなかったんだ…………?」

「なぜ…わからないな………でも、悪い人ではないとアタイは信じている。ユースイさんのおかげで、サフラーは平和なんだからな。」

「平和、か?」

「平和ではないか…………」


 水夏はすぐに訂正する。


 零はふと空を見上げると、数えきれないほどの星々を見てぼそっと言う。


「綺麗…………」


 零の言葉に、水夏は共感する。


「そうだろう?サフラーは基本晴れていてな、夜になると満天の星空が見えるんだ。これは、サフラーの特権だとアタイは思う。」

「たしかに、これはサフラーしか見れないかも…………」


 零は足を止め、うっとりとする。水夏はその様子を眺め、零が動き出すのを待っていた。


「…………っは!まずい、星を見ていて時間を忘れていた…!早く行かないと!」


 零は動き出し、水夏はほっこりしたような表情で零についていった。



 村を出て丸一日が過ぎ、二度目の日が昇る一、二時間前、二人は一つ目の村に着き、そこで休憩をはさむことにした。軽食、軽い睡眠をとって数時間後、二人は村を出て次の村を目指した。道中魔物に遭遇しながらも二人は前へ進み、約七時間後、目的地へとたどり着いた。


「やっと着いた……………………」

「お疲れ様、だね。報告してくるから、零くんは宿で休んでいてくれ。」

「あぁ、分かった。」


 零は水夏と離れ、先に宿へ足を運んだ。


(今俺すごく眠いのに、水夏元気そうだったな…………我慢しているのかもしれないけど、それでも報告に行けるほどの体力があるなんておかしくないか…………?)

「……………………早く寝よ。」


 零は宿に着き、ふかふかのベッドで眠りについた。




 その日の夜…




「…んぇ?」


 零は目を覚まし、窓に目をやると、外は完全に黒一色だった。


「っ!?やばい!寝すぎた!!!」

(どうしようか…今起きたばかりだから眠気なんてない、今から冒険者ギルドへ行ったところであまり意味がない気もするし………)


 零は長考の末、結論を出した。


「外に出るか。」


 零は宿を出て外の空気を吸いに行った。


「…ふぅ、さて、何をしようか…星を見続けるか…?」


 零は外に出て歩きながら考えていると、進む先に人がいる事に気付いた。


(………?あんなところに人が…もしかして窃盗犯か……?それにしては、服装が派手すぎるけど…)


 零は足音を消して進み、建物の陰に隠れてこっそりと派手な服装の人を見る。

 その人はほんの少しふわふわで波のように揺れているとても明るい青緑のロングヘアとアイシャドーをした鮮やかな赤紫の目を持つ女性で、青色、水色、白色のドレスのようにきらびやかな衣装とアクセサリーを身につけており、まるで妖精のような、美しい姿だった。


(あの人は、何をしているんだ…………?)


 零は警戒しながらも観察していると、女性は踊りはじめ、同時に足元に魔法陣を出した。魔法陣からは舞踊の演出のような青、水色、白の光を出している。さらに魔法陣からは無色透明で小さな氷を出し、女性の周りを漂っている。魔法陣から出た鋭利で大きな氷は女性を中心に外に向かって飛び出しており、女性を守っているようにも見えた。音は出ていなかったが、その舞踊はたとえ戦争が起きようとも、それを見ればその場にいる全員が見惚れ、戦争が止むほどの美しさを持った素晴らしいものだった。女性が軽くはね、地に足を着けば足元に小さな氷が生み出し、すぐに消える。女性がくるりと一回転すると小さな氷が動きに合わせて女性を中心に回転する。女性が出した氷は、全て演出に使われていた。


 零は呼吸を忘れるほどに舞踊に目を奪われ、気が付けば建物の陰から出ていた。


「……………………」


 舞踊が終わり、魔法陣や氷が消えると、女性は零の存在に気付く。


「っ!!」

(やべっ!!気づかれた!)


 しかし女性は零に近づかず、微笑みながらそっと人差し指を口に当て、「静かにしてね」と言っているかのような表情を見せる。



 その直後、女性はその場に倒れた。

次の話は5月19日に投稿予定です。

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