彼女がほしい男 第2部
「彼女がほしい男」の第2部です^^ 「彼女がほしい男」をご覧になってから、第2部をご覧下さい(´∀`)
時刻は午前9時40分。ちょっと早く来すぎたかもしれないが、待たせるよりはマシかと思い、カラオケボックスの前で清美を待った。今日の服装は、昨日買った白地の長袖シャツ。無地というわけではなく、首元にボタンが3つついていて、手首にはブランドのマーク。背中には、アルファベットで何かが書かれている。ズボンは、以前から持っていたジーパン。自分としては、100点をあげてもいいとは思うが・・・
腕時計を見ると、まだ42分だった。こういう時は、なんだか時間の流れが遅く感じる。そして、やはり緊張してしまう。目の前の駅通りには、様々な人々が行き交っていた。本通りではないものの、意外と人通りは多い。遅刻らしきサラリーマンや、いくつもの若人の集団。
と、こちらへ向かってくる男がいた。カラオケに行く人かな、と思い入口から少し離れた。するとその男は、にこっ、と笑ってきた。僕と同じくらいの年齢だろうか。黒いスーツを着ている。
「今日はデートですか?村春さん」
・・・え?今、なんて・・・
「いやぁ、よかったよかった。無事交際を始めたと聞きましたが、デートになかなか行けてないとも聞いておりましたので。安心しましたよ。・・今日のあなた、とても輝かしいですよ」
「あ・・・どうも。その、なんで僕のことを・・・」
「おっと、失礼。用事を忘れていました。それではごきげんよう。末永くお幸せに」
スーツの男は礼儀正しく一礼すると、人ごみの中へ消えていった。どこかで見たような雰囲気だったけど・・・なんで僕のことをあんなに知っていたのだろうか。僕は知らないのに・・・
なんてことを考えていると、今度は女性がこちらへ向かって歩いてくる。あれは・・・清美だ!僕に気づくと、小走りして来た。かわいい。
「伸二さん・・・ですよね!わ~、やっぱりかっこいいなぁ」
いきなりそんなことを言われたものだから、一気に照れてしまった。清美はニコニコしている。僕はその笑顔でイチコロだった。清美は、青いフリルのついたスカートに、肩が少しはだけているゆったりした服だった。手には小さなバッグを持っている。・・やっぱり若い子は違うなぁ。
「あ、は、はい。こんにちは。はじめまして。えっと・・・」
「はじめまして、ですね!お会いできてとてもうれしいですっ!」
清美のかわいらしい声が耳を癒してくれた。
「すみません、緊張してしまって・・・その、清美さん、とてもかわいいです」
「ありがとうございますっ!大丈夫ですよ、私も緊張してますし・・・。じゃあ、行きましょうか!」
清美は僕の手をとって、カラオケボックスの中へ向かった。・・これが、人の温もりなんだ。これが、恋なんだな・・・僕は幸せな気持ちでいっぱいだった。
✽ ✽ ✽ ✽
案内されたのは、4人がけのソファーのある、中くらいの部屋。部屋に入るなり、清美はバッグを放り投げて曲を探し始めていた。ほんとに歌うのが好きなんだなぁ、と思った。
清美は歌が上手かった。最近のアイドルや、女性の歌ばかりで僕には全くわからなかったが、上手いということはわかる。得点も高い。尊敬してしまう。その反面僕は、演歌だとか、ちょっと時代遅れ気味の歌ばかり。清美もノってくれてはいるが、本当はわかっていないようだった。おまけに得点も低い・・・カッコ悪いところばかり見せて、もう心はボロボロだった。
でも何故か、嫌な気分はしなかった。清美も楽しそうだった。初デートにしては大成功だったと思う。
時間終了10分前の電話が鳴った。僕は席を立って、軽く伸びた。すると、清美が抱きついてきた。いきなりの出来事に少し戸惑うが、僕も彼女の背中に手を回した。
「今日はありがとうございました。とても・・とても楽しかったです」
「僕も楽しかったです。清美さんと出会えて良かったです。これからも・・僕でよければ、よろしくおねがいします」
清美が力を強める。彼女が着ている服の飾りが腹に当たって少し痛かった。僕も同じように力を強める。しばらく抱き合ったあと、清美の方から力をゆるめてきたので、僕も手を離した。飾りの痕がついていないかと、腹部を触った。
「うっ・・・?」
腹部に触れたとたんに、激痛が走った。さっきの飾りの痛みの何倍もあるような鋭い痛み。ゆっくりと自分の腹部を確認する。
そこには、服の飾りなどはなく・・包丁が突き刺さっていた。
なんで?なんでこんなものが、僕に?じわじわと赤く染まっていくシャツ。痛い。これまでに経験したことのない痛みが僕を襲っている。まさかと思って、顔を上げる。そこには、両手を赤く染めた清美が、先ほどの笑顔とは全く違う、恐ろしい笑みをうかべていた。
「清美さん・・・なんで?」
僕は出せる限りの声を出してたずねた。
「なんで、だって?あはは、あの人の言っていたことは本当だったのね・・・!ここまでうまくいくとは、私も思ってなかったなぁ」
「あの・・人?うまく・・いった?」
「あなたは忘れていても、私ははっきり覚えてるの。なんで自分がこんな状況になるかわからない?ふざけんじゃないわよ。あなたは・・私はあなたに、強姦されたのよ」
意識が朦朧とする中、まるっきり覚えのない事を言われた。・・いや待て・・河村!?
「あああっ・・・なんでお前がぁ・・」
思い出した。2年前僕は、夜の公園で歩いていた女性を・・・河村・・清美・・保険証に書いてあった・・・でもなんでだ!?なぜ僕に再び接触できた?
「まだ息はあるわね。じゃあ謎解きといきましょうか。ここでヒントでぇす。私とあなたの出会いはなんだったっけ?」
出会い・・あのアンケートみたいなやつか!?・・・そういうことか!
「全部わかったようね。私がどれだけ辛い気持ちを抑えて、あなたと茶番を演じていたことか・・でも、あなたを始末できるならどんな苦しみも楽に思えたの。そしてやっと・・・たどり着いたわ」
ああ・・あの男が言っていた・・代価っていうのは、僕の罪の記憶だったのか・・ああ、あの時ちゃんと考えてれば・・
満足そうに部屋を出て行く彼女の背を最後に、僕の意識は途絶えた。
✽ ✽ ✽ ✽
{先日、鳴宮駅前のカラオケボックスにて、サラリーマン男性が殺害される事件が発生しました。殺害されたのは----}
ニュースの一面を飾ったのは、サラリーマン男性殺害の事件だった。
「ああ、本当に殺してしまったんですね・・これだから、おもしろいんだよなぁ」
暗い部屋に、男の声が響く。若い男だ。
「犯罪者に罰を、犠牲者に救いを・・これがモットーですからね」
女の声。こちらも若い。
「代価というのは、実に面白いものだな」
部屋にいる3人のうち、最後のひとりが口を開いた。野太い声。中年あたりの男性。
「あなたは・・・もし一つだけ願いが叶うとしたら、何を望みますか?・・ってね」
代価。それは時に安く、時に高いものである。
Present第1話、いかがだったでしょうか。
まだまだ続きますので、どうぞよろしくお願いします(^-^)
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