第7話『大団円!言葉の意味さえ変えた青春との決着』
さあ周囲の人々が見守る中…。
武田とイディオット、一対一の最終決戦が始まります。
観客たちも叫んでいます。
「イディオット様!負けるな!」
「光の聖王女様の忠実なる騎士イディオットに勝利を!」
――しかし、劣勢に追いやられるイディオット。
そう、実は武田は結構強かったのです。
…というか、イディオットが弱かったのです。
いちおう武闘派の武田と、知識が取り柄のイディオット。
タイマンでは分が悪いのです。
案の定イディオットは追い詰められました。
「こうなればお前も地獄に道連れだ!死ね!」
怒り狂った武田が剣を振り上げます。
しかしその時…。
それを見ていたアナスタシアが、指からの光線で武田の剣を吹き飛ばしました。
「なっ!?そんな…話が違う!!」
「バカじゃないの?対等に戦う権利なんかあるわけないでしょ、あんたみたいな虫けらに」
大盛り上がりする観客。
アナスタシア様!神皇帝陛下!と大歓声です。
そのスキを見逃さず――。
「くらええええ!」
イディオットは突進。
そして、武田の腹部に、己の剣を深々と突き刺しました。
――ついに決着です。
生命への執念の権化だった武田も、ついに倒れました。
「バ、バカな…俺がお前なんかに負けるなんて…」
「バカは…idiotはお前だよ」
イディオットはそう呟いて、剣を収めます。
――服を盗み、結果的に世界を混乱に陥れた武田。
――そして服を盗まれ、結果的に魔王を目覚めさせたイディオット。
いつの間にか世界を巻き込んでしまったこの二人の戦いは…。
イディットの勝利に終わりました。
勝利を確信したイディオットは、ふうっ、とため息をつきます。
そして。
…残念そうな表情で、倒れた武田に問いかけました。
「なあ、最後に聞きたいんだけど…なんで俺の服を盗んだ?なんで俺の服を燃やした?俺、そんなにお前に嫌われることしたか?」
致命傷を負い、動けない武田は…。
その問いに、吐き捨てるように答えました。
「理由なんてねえよバーカ…元からお前が気に入らなかっただけだよ。弱いくせに頭がいいだけで一丁前な顔しやがって…イディオットなんて呼ぶ奴が、仲間なわけねえだろ。何が友達だ…てめえも死ね、クソッタレ」
「…そうか。少なくとも俺はお前のこと友達だと思っていたのにな…」
背を向けるイディオット。
そこに、往生際の悪い武田が声を掛けます。
「ククク…どうせあの魔王はいつかまた暴れるだろうぜ。退屈しのぎのくだらない理由でよ。その時こそはついにお前も死ぬんだ。…お前なら止められたのに。そうだ、お前が世界を滅ぼすんだ。先に地獄で待ってるぜ…」
悔し紛れの末期の言葉を言い残して、武田はくたばりました。
恥ずかしいほどの生への執念を誇った武田も、ついにその生涯を閉じたのです。
イディオットは寂しげに目を伏せます。
まだ年は若い彼ですが、ふと人生を思い返します。
――イディオットにとって、武田とのコンビはまさに青春でした。
武田との思い出はいろいろありました。
まあ、大半はロクでもないし、自分が迷惑をこうむった記憶しかないのですが――
「武田…じゃあな、あばよ」
「…ククク…さっさとお前もこっちにこいよ…」
「うわっ、まだ生きてた」
――――――――――
眼前に戻るも、浮かない顔のイディオット。
そんな彼を、なんとアナスタシアが抱きしめます。
「よくやったわね。珍しくこの私が褒めてあげるわ」
「いえ、そんな…」
「あなたの名前を決めてあげる。あなたの名前は『イディオット』よ」
「えっ、そんな…!?」
しかしアナスタシアは号令します。
「これからイディオットという単語は意味を変えるわ。愚か者から知識と勇気を持つ忠実なるものという意味へ。旧来の意味で使う者は私が処刑する。いいわね?」
うおおおお!イディオット様!と歓声をあげる観客。
もしかしたら洗脳されているのかもしれません。
これでよかったのかな、まあ武田はこれで良かったのは間違いないけど…と悩むイディオット。
そこに、アナスタシアは笑いながら言います。
「さあ、第一の配下のイディオット。これからあなたの出番が待ってるわ。政治とかそういうのは得意でしょ?」
「え?いえ、やったことないのでなんとも…」
「大丈夫よ、適当にやっていいから。反乱軍が出たら鎮圧すればいいだけだもの。むしろそれが楽しみよ」
「ええ…」
困ったように頭をかくイディット。
そんな彼を見て…アナスタシアがほくそ笑みます。
――実は彼女の封印はとても強固なものでした。
選ばれしものしか解除できないはずの。
しかし、イディオットはそれをあっさり解除しました。
これは、勇者の素質があるものにしかできないはずなのです。
また、封印を解除した者には自らの攻撃魔法が通じないのです。
さらにその者が死ねば自らもまた封印されます。
――これがかつて自分を封印したシュニクス王国の最後の手段だったのです。
勇者がアナスタシアを倒すことにもし失敗しても、己の死をもって災厄を再封印することができる。
そしていつかまた新たな勇者が生まれ、その時も勇者はアナスタシアに立ち向かう。
アナスタシアが死ぬまで、彼女を永遠に不利な戦いに縛り付ける運命の輪廻…と。
つまりイディオットは、アナスタシアの唯一の天敵にして、運命共同体だったのです。
実は武田がイディオットを刺した時、彼はアナスタシア再封印まであと一歩に迫っていたのです。
しかしアナスタシアはイディオットをうまくまるめこみ、自らの配下としました。
あとはそのことに気づかれず、謀反心を抱かれないように優しく生かし続けるだけ。
回復魔法は通じるので傷を癒し病魔を治療し老化を止めて生かし続けるだけです。
…己の寿命が尽きるまで。
それはアナスタシアにとっては決して難しい事ではありません。
「まあ私は好きなようにやるだけだけど」
彼女はそう言い…イディオットを見ます。
優しく笑いながら。
「私より一秒でも長く生きてちょうだいね。もっとも、私の寿命は長いけど。とにかく私と同じだけ生きてもらうわよ」
イディオットは「え?あ、はい!」と嬉しそうに答えつつも…。
なぜ自分にだけアナスタシアが優しいのか、その理由には決して気づかないまま…。
民衆の大喝采の中を二人で城に戻っていきました。
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担当から作家あてのメッセージ:
「先生、お疲れさまでした。ライブ感そのもので突っ走ってきた物語ですが、最後は意外とうまくまとまった気がします。
あ、まだ最後じゃなかったですね。
武田の執念深さと生命力、アナスタシアの強さと極悪ぶり、イディオットの寂しさと鈍感さが良く出ていたと思います。
またエンディングで『世界の言葉の意味ごと変える』というのはおとぎ話でたまに見られますが、それを愛や勇気ではなく独裁と処刑で変えるハッピーエンドというのはきっと唯一無二でしょう。
何はともかくお疲れさまでした。まあ、あと数話ありますが…。
あと、当初の設定にいた味方であるはずの関羽と張飛出てきませんでしたね。まあ正解だと思います」




