第6話『世界征服完了!そしてついに因縁の決着へ!』
さて…イディオットは目が醒めます。
(あれ?俺は、死んでなかったのか…ここは?)
あたりを見回しますが…。
どうやらここはアナスタシア城(元ガッデム城)のようです。
なぜか傷も完治しています。
ですが、そこに…。
「目が醒めたようね。ところであなた、あそこで何をやってたの?」
と声が。
――見ると、そこには戦場から帰ってきていたアナスタシアがいました。
不機嫌そうな顔です。
助けてくれたのもアナスタシアのようですが…。
(あ、やっぱり俺終わったわ)
と諦めつつも、イディオットは正直に話します。
『アナスタシアを止めたかった、戦争はしたくなかった』
隠したり嘘をついてもどうせ見抜かれるからです。
…するとアナスタシアは不敵にふふふと笑います。
「別にもう戦争は止めてもいいわよ。私に逆らう国はもうなくなったんだから」
彼女曰く、どうやらガベージももう滅ぼしてしまったとのこと。
それを知った他の国も絶対服従を申し出て…。
ついに世界はアナスタシアのものになったのです。
「早すぎません?」
「あなた最前線で今まで何を観てきたの?当り前じゃない」
「それはまあ…確かに」
そしてアナスタシアが笑い、言います。
「じゃあ、次が最終決戦ね。どうせあのゴキブリ武田、私を止められると思ってまた現れるわ。その時は貴方が闘い、決着を付けなさい。見届けてあげる」
「…た、確かに対抗策を手に入れた武田なら…!アナスタシア様、俺があいつとの決着を付けます!」
「ご苦労。最後まで見届けてあげるわ。言っておくけど、世界が滅茶苦茶になったのは私のせいじゃないわよ。あいつがすべての元凶でしょ?あなたがこの世界の破滅、その大元を止めるのよ」
(…それは、ちょっと違うような…?破滅の大元と言えばむしろ…)
「返事」
「は…はい!」
「よろしい。ふふふ」
――――――――――――――――
担当から作家あてのメッセージ:
「恐ろしいほどのスピード感で世界征服が完了しましたね。
まあ勇者が配下にいる世界で魔王が本気を出せばこういうものなのかもしれません。
何も全人類を滅ぼそうとしているわけではなさそうですし。ある意味リアルです。
その中で、アナスタシアが非常にわがままで独善的、しかしイディオットにだけ妙に優しいのは何らかの意味があるという含みがあります。
これがなんとなくではなく先生の意図であることを願います。
また最終決戦の敵が世界征服した魔王ではなく、服を盗み燃やし、自分を刺した元友人というのもこの物語らしい相手です。
それが武田という人物なのはまあともかく」
――――――――――――――――
――世界征服終了後のパレードが開催されました。
そこでアナスタシアが街を闊歩します。
「アナスタシア様ー!」
「光の聖王女様!」
喝采を浴びる中悠然と歩くアナスタシア。
世界征服してしまえば災厄ももはや英雄です。
そこに…武田が現れました。
「これで終わりだ魔王め!」
と、光の玉を掲げながら。
「これでお前の魔力は失われた!今こそ一族の仇を…!」
という武田ですが…。
アナスタシアは笑い、指から光線を発し…。
武田の持っていた光の玉を砕いてしまいました。
「…えっ?」
呆然としている武田。
それをアナスタシアは嘲笑います。
「バカね、私にそんな弱点あるわけないじゃない。光の玉を掲げろって文字、あれ私が書いたのよ。あんたみたいな虫けらが釣られるのを楽しみにしながらね」
その言葉に愕然とする武田…。
彼はあっと言う間に洗脳された兵士に囲まれ逃げ道を失います。
そして…アナスタシアの背後からイディオットが現れました。
「イディオット、お前死んだんじゃ…!?」
「残念だったな。お前を殺すまでは死なないよ、絶対に!!」
復讐の念に目を染めるイディオット。
武田への怒りは、優しい彼を今までの人生で一番激情に駆っているのでしょう。
「く…くそっ、おい俺達友達だったろ!?剣を向けるのは俺じゃない!その魔王だ!」
武田は苦し紛れに言いますが…・
「わかってないようだな。もう俺にお前の言葉は届かない。お前が俺を刺した時、お前の知っているイディオットは死んだんだ。ここにいるのはアナスタシア様の第一の配下の…!」
「…」
「…配下の…」
「…」
「…えっと…」
「…?」
言葉が止まるイディオット。
そこに、アナスタシアが不思議そうに話しかけます。
「…どうしたの?自分の名前を名乗る場面じゃないの?」
イディオットはその言葉に恥ずかしそうに笑いながら答えました。
「あの…ずっと『イディオット』って呼ばれてて自分の名前忘れちゃいまして…」
予想外のその言葉に、アナスタシアは一瞬止まり…そして、あははは!と笑います。
「なんかカッコいい所でしまらないわねえ。じゃあ、武田を殺したら私があなたに新しい名前を付けてあげるわ。光栄に思いなさい」
「はっ!」
そして武田とイディオットの最終決戦が…ついに始まりました!
――――――――――――――――
担当から作家あてのメッセージ:
「いよいよ最終決戦ですが…。
『イディオットの本名を決めていない、最終回までに決める』という先生の設定を、主人公が本名を忘れるという形で回収するとは思いませんでした。
良くも悪くも感心いたしました。良くも悪くも。
また、弱点が偽り、理由も単に愉悦のためというのもアナスタシアの悪辣さ、恐ろしさを引き出します。
ここは素直に感心しました。
魔王が攻略Wikiを自分で荒らしているようなものですね。
また、先ほども言いましたが最終決戦が因縁の相手というのもやはり小市民感覚のあるイディオットとしてはふさわしいと思います。
武田は最後まで武田、アナスタシアも最後までアナスタシア、イディオットだけがまだ何者でもなく、勝利することで新たな名前を得てやっと何者かになるという期待があります。
一応」




