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位相戦線  作者: 神代零


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第四十四話 「最後の選択」

 世界が崩れていた。


 銀色の空。


 そこへ走る巨大な亀裂。


 現実そのものが、

 音を立てて剥がれ始めている。


 白が消えた。


 黒も消えた。


 だが。


 世界は長い間、

 二つの位相によって維持されていた。


 だから今。


 支柱を失った現実が、

 空白へ沈み始めている。


「現実定義崩壊……」


 紗那の声が震える。


 塔の外。


 東京湾沿岸の景色が歪んでいた。


 建物の輪郭が揺れる。


 空間が透ける。


 存在そのものが不安定化している。


「このままじゃ、

 世界が保てない」


 黒瀬が低く言う。


「新しい中枢が必要だ」


 沈黙。


 その意味は分かっていた。


 白域中枢。


 黒域中枢。


 それに代わる。


 第三位相の核。


「境界核を、

 世界そのものへ固定する」


 紗那が顔を青ざめる。


「そんなことしたら……!」


 その先を、

 誰も言えなかった。


 ユナが静かに俺を見る。


 泣きそうな顔。


 でも。


 逃げていない。


「玲司」


 小さな声だった。


「わたし、

 怖いよ」


「ああ」


「消えたくない」


 胸が痛む。


 俺だって同じだ。


 まだ生きたい。


 終わりたくない。


 もっと。


 普通に生きてみたかった。


 だけど。


 世界を維持するには、

 誰かが核にならなきゃいけない。


 銀色の空が裂ける。


 遠くで都市の一部が崩壊した。


 時間がない。


 その時。


 紗那が前へ出た。


「私が行きます」


「紗那!?」


 彼女は震えていた。


 でも。


 真っ直ぐ俺を見る。


「観測官として、

 最後まで責任を取ります」


「無理だ」


 黒瀬が即座に否定する。


「第三位相へ完全接続できるのは、

 玲司とユナだけだ」


 紗那が唇を噛む。


 悔しそうだった。


 助けたいのに、

 届かない。


 その感情が痛いほど分かった。


 ユナが小さく笑う。


「ありがとう」


 紗那の目から涙が零れた。


「嫌です……」


 初めてだった。


 彼女がこんな顔をしたのは。


「やっと、

 普通に話せるようになったのに……」


 ユナも泣いていた。


 銀色の粒子が、

 涙と一緒に零れていく。


「紗那」


「……っ」


「玲司を、

 お願い」


 紗那が崩れ落ちそうになる。


 俺はユナを見る。


 彼女は怖がっている。


 それでも。


 逃げない。


 だから。


 俺も逃げられない。


「ユナ」


「うん」


「一緒に行こう」


 彼女が泣きながら笑った。


「うん」


 その瞬間。


 銀色の光が二人を包む。


 境界核。


 第三位相。


 人類位相。


 世界全体が、

 俺たちへ接続され始める。


 無数の声。


 無数の想い。


 全部が流れ込む。


 苦しい。


 でも。


 温かかった。


 黒瀬が静かに言う。


「玲司」


「何だ」


「世界を頼む」


 紗那は泣きながら叫ぶ。


「絶対……

 忘れませんから!!」


 銀色の空が崩れる。


 世界境界が裂ける。


 その中心へ。


 俺とユナは、

 一歩踏み出した。

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