第四十三話 「世界改変」
銀色の光が世界を覆った。
空。
海。
都市。
崩壊した現実。
全部が、
静かに銀色へ染まっていく。
白域固定塔が崩れていた。
巨大な白い構造体が、
光の粒子となって空へ消えていく。
同時に。
黒域深層も崩壊していた。
黒い海が静かに引いていく。
白も。
黒も。
終わろうとしている。
その中心で。
俺とユナは、
銀色の光の中に立っていた。
身体の感覚が曖昧だ。
境界核。
世界へ接続しすぎている。
人類全体の感情。
願い。
恐怖。
全部が流れ込んでくる。
苦しい。
でも。
もう逃げたいとは思わなかった。
『観測終了』
白域中枢。
『観測終了』
黒域中枢。
二つの超存在が、
少しずつ消えていく。
その時。
世界中の人々の声が聞こえた。
◆
『生きたい』
『帰りたい』
『また会いたい』
『一人にしないで』
◆
人類位相。
第三位相。
それは。
“人間同士の繋がり”そのものだった。
ユナが静かに言う。
「玲司」
「ん?」
「世界、
変わるね」
「ああ」
銀色の光が脈動する。
その瞬間。
世界地図が変化した。
白域汚染区域。
黒域侵食区域。
全部が消えていく。
代わりに。
銀色の線が世界中へ広がっていた。
位相接続網。
人類位相による新世界構造。
紗那が呆然と呟く。
「位相災害が……
停止してる」
黒瀬も空を見る。
「白域反応消失」
「黒域反応もありません!」
永久機構の端末が、
全部エラーを起こしていた。
白も黒も、
既存理論が通用しなくなっている。
つまり。
世界法則そのものが変わった。
榊一臣の姿が、
薄く消えかけていた。
彼は静かに笑う。
「ようやく……
終わる」
白域へ融合していた身体が、
銀色の粒子へ変わっていく。
俺は榊を見る。
「後悔してるか」
榊は少しだけ考えた。
それから。
「……分からない」
正直な答えだった。
「だが、
君たちは正しかった」
その言葉を最後に。
榊一臣は、
静かに消滅した。
白い粒子ではなく。
銀色の光となって。
ユナが涙を浮かべる。
誰も死なない世界を作ろうとした男。
その結末は、
人間へ戻ることだった。
その時。
世界全体が激しく震えた。
「っ!?」
銀色の空へ、
巨大な亀裂が走る。
紗那が叫ぶ。
「まだ終わってません!」
「何だ!?」
「世界境界が崩壊してる!」
沈黙。
白と黒を失ったことで、
旧世界法則そのものが消え始めている。
つまり。
世界が今、
“空白状態”へ入っている。
黒瀬の顔色が変わる。
「まずい……
このままじゃ現実定義が消える」
ユナが静かに俺を見る。
「玲司」
その目だけで分かった。
最後の選択だ。




