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位相戦線  作者: 神代零


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第三十八話 「人類位相」

 銀色の光が脈動していた。


 白域固定塔の最深部。


 世界境界。


 白と黒の狭間。


 そこに今、

 新しい位相が生まれようとしている。


 第三位相。


 いや。


 もっと別の何かだった。


 ユナが苦しそうに呼吸する。


 銀色の粒子が身体から零れ落ちていた。


 境界核の負荷。


 世界全体を支えるには、

 まだ不安定すぎる。


 その時。


「戻ってきてください!!」


 紗那の声。


 崩壊する塔内部。


 彼女は泣きそうな顔で、

 こちらへ手を伸ばしていた。


「あなたたちは、

 人間なんです!」


 その言葉。


 胸の奥へ強く刺さる。


 人間。


 白でもない。


 黒でもない。


 不完全で。


 弱くて。


 それでも。


 誰かを求める存在。


 銀色の光が大きく揺れた。


 その瞬間。


 世界中から、

 無数の声が流れ込んでくる。


          ◆


『帰りたい』


『助けて』


『まだ生きたい』


『誰か』


『一人にしないで』


          ◆


 人類全体の願い。


 恐怖。


 希望。


 孤独。


 愛情。


 全部。


 全部繋がっている。


 ユナが涙を浮かべる。


「玲司……

 みんな、

 繋がってる」


「ああ」


 白域みたいな強制じゃない。


 黒域みたいな解放でもない。


 人間は最初から、

 誰かと繋がって生きていた。


 第三位相は、

 それを肯定する世界だった。


 その瞬間。


 銀色の光が爆発的に広がる。


 白域固定塔を貫き。


 東京湾を覆い。


 世界中へ到達する。


 ニューヨーク。


 ロンドン。


 上海。


 モスクワ。


 空を銀色が走った。


 白域が停止する。


 黒域も止まる。


 白域中枢が脈動する。


『存在定義汚染』


 黒域中枢も反応する。


『未確認位相拡散』


 銀色の光が、

 二つの超存在へ触れた。


 その瞬間。


 白域中枢の中へ、

 無数の感情が流れ込む。


 恐怖。


 悲しみ。


 孤独。


 愛情。


 白は初めて、

 “個”を知った。


 同時に。


 黒域中枢へも、

 人類の願いが流れ込む。


 生きたい。


 繋がりたい。


 消えたくない。


 黒は初めて、

 “意味”を知った。


 二つの超存在が沈黙する。


 理解できないんだ。


 人間という存在を。


「これが……」


 黒瀬が呆然と呟く。


「人類位相」


 紗那が涙を浮かべる。


 銀色の光が、

 彼女の頬を照らしていた。


 榊一臣はその場へ崩れ落ちる。


「私は……」


 白い粒子へ変わっていく身体。


 その瞳だけが、

 初めて迷っていた。


「間違っていたのか……」


 俺は静かに言う。


「間違いじゃない」


 榊が顔を上げる。


「お前は、

 怖かっただけだ」


 人間が。


 弱さが。


 争いが。


 だから固定しようとした。


 榊は震える。


 涙だった。


 初めて。


 あの男が人間へ戻っていた。


 その時。


 世界全体へ、

 銀色の波が広がった。


 そして。


 白域中枢と黒域中枢が。


 ゆっくりと、

 崩れ始める。

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